第73話・恥ずかしがってたって話
部屋に戻る。
何といえない気まずさが漂っている。
まあ、理由なんてのは明確過ぎる程に明確だ。
だって俺はイトとカレーヌと結婚をしたわけなのだから。
うん。いやマジで何でこうなった?
本当になんでこうなった?俺は別にただ普通に本を読んでただけなのに俺の知らないところで話は勝手にトントン拍子に進んでいって気が付いたら父上の手によって結婚させられてた。
いや。マジで何でこうなった。不思議過ぎてビックリだよ。
まあもちろんそれを承諾した俺も俺なのだが。いやでもあの状況で結婚しませんって宣言するのは今後の俺のグウタラ生活に支障が出るしな。一番良い選択ではあったと思う。
多分だけど。
ハア。凄く面倒極まりないな。
「あのうグレン様。それでどうしますか?」
何処かモジモジとしてイト。
「そうですね。どうしましょうか。旦那様」
すっかり第五王子様から旦那様呼びになったカレーヌ。
そこは一応何万という本を読んできた俺。
何処かの鈍感主人公とは違ってこの状況の説明はつく。
ようは結婚した初日、初夜というわけだ。
でも。なあ。今日ってのはなんかこう面倒だな。
いやじゃあ、何時ならいいんだって話になるけど、何時でも面倒に思うんだよな。
俺の悪い所だな。
「う~ん。そうだな。取り敢えず無しで」
俺は自分でも弱腰だなと思いつつもそう言って逃げる。
「え~~~、でも今日しましょうよ。だって今日はナナがいないのですから」
「そうですよ。ナナちゃんがいない日なんて滅多にないですし」
「あ~。確かに言われてみればそうだな。・・・でもここで俺が流されたら不味いだろ」
「別に不味くないですよ。グレン様もそういうお年頃ですから。それに何かあっても最悪お父様が何とかしてくれますから」
「あ、何もう国王のことをお父様と呼ぶのは固定何だね」
「それはそうですよ。だってお父様なのですから。それとも義理父の方がいいですか?」
「いや。どっちもさして変わらないよ。ハア。面倒だな」
「別にそんな面倒じゃないですよ。ただ呼び方が変わっただけです」
「まあ、確かに言われてみればそうだな。まあ、うん呼び方はどうでもいい」
「そうですね。さて、じゃあ今からやりましょうか」
「そうですよ旦那様」
二人ともが俺に近寄ってくる。
俺の了承も得てないのに当たり前のように近づいてくる。
しかも二人とも少しずつ服を脱ぎながら。
一応健全な男である俺はどうしても。否が応でも反応してしまう。
「あら。グレン様のグレン様はやる気いっぱいですね」
「なあ、イト、前も言った気がするが、そのパワーワードやめてくれないか?普通に恥ずかしいのだが」
「じゃあ。旦那様の旦那様はやる気いっぱいですね」
「おい。カレーヌ、それ意味は変わってないからな」
「それでどうするのですか?グレン様?」
「そうですよ。もしやるのでしたら精子を消滅させてからすれば問題はないですよ」
「いや。でも。でも、面倒に感じるんだよな」
どうしても俺の中にある【怠惰】がその行為を面倒と断定して、なんかこうやる気をなくさせてしまう。
「でも。グレン様。食欲・睡眠欲・性欲の三大欲求のうち、二つの食欲・睡眠欲はかなりあるじゃないですか?」
確かに、俺は寝るの大好きだし。美味しいものも食べるのも大好きだな。
そう考えると、食欲・睡眠欲があって思いっきりそれに沿った行動をしてるのに性欲方面は面倒に感じるのはおかしな話だな。
「確かにそうですよ。旦那様。だってもし本当に【怠惰】の力が働いて性欲が面倒と感じてるなら。食事も睡眠も面倒になってますよ」
「言われてみればそうだな」
「あ。もしかして。グレン様、恥ずかしがってますか?」
その瞬間俺の中にあった何かがストンと音を立てて落ちた気がした。
「あ~。そうかもしれない。うん。そうだな。確かに俺は恥ずかしがってるのかもな」
自分ではその時気が付いてなかったが顔が赤くなってたらしい。
「じゃあ。恥ずかしがらずにレッツラゴーしましょうか」
「そうですね。さあ、やりましょう」
そうして俺とすぐ触れ合うところまで来る二人。
だけど、そこはまだ童貞の俺、怖気づいく、というよりも恥ずかしがって咄嗟に誤魔化す。
「そ、それよりも先に夕飯を食べない?お腹減ってきたしさ」
しどろもどろになりながら、そう言う自分にいつもの面倒くさがりの自分はどこにいったと軽い苛立ちを覚える。
でもこの状況仕方がないといっていいと思う。
つまり俺は悪くない。
なんかこう。諸々考えるのも面倒になってきたな。
ああ。もういいや。全部流れに任せてしまえ。
「そうですね。じゃあ夕飯にしましょうか。グレン様」
「それに初夜ですもんね。やっぱり夜に取っておきましょう、ね。旦那様」
「ああ。そうしてくれ。じゃあせっかくだし俺も作るのを手伝うよ」
「え?いいんですか?」
「ああ。まあ。何だせっかくの結婚初日だ。俺が作るよ。まあ俺が作るのが一番美味しいしね」
「じゃあ。私も手伝いますね」
「旦那様やイト程、料理は得意じゃないですけど、手伝います」
「よし。じゃあ三人で作るか」
そうして三人で仲良く料理を始めた。
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次回お楽しみに。
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