第72話・両手に花と結婚をするって話

「おい。二人とも何をやってるんだ?」

 今現在俺の目の前でカレーヌとイトが戦おうとしてる。

 そんで周りに騎士達に貴族に大臣が泡吹いて気絶しており、父上に至っては壁に激突して気絶してる。

 しかも普通に重傷を負ってるし。床には父上が吐いたであろう血がべったりついてるし。


 うん?父上一応強い筈なんだけど。準英雄クラスの実力者なんだけど。なんかこう、え?


 マジでうん?


 何でこうなってんだよ?


「え?グレン様?何でここに?」


「何でここにって、お前らが思いっきり殺気を出してからだよ。それはもうビックリしたよ。本読んでたらいきなり殺気を感じたからな。行くの面倒だったけどしょうがないから来たら。何この状況?マジで何?」


 本気で理解に苦しむ。


 何でイトとカレーヌが剣を互いに構えてんだよ。仲良くいってた筈だろ。


「えっと、正妻争いです」


 イトから出て来たあまりにも想像の斜め上を行き過ぎた言葉に「は?」と出る。


「マジで何を言ってる?え?は?どういうこと」


「えっと。あのう第五王子様、私と結婚しませんか」


 カレーヌからも想像の斜め上を行き過ぎた言葉が出て「は?」と出る。


「おい。待て、タンマ。どういうことだ?」


「いや。あのう、えっと。私【察知の天魔】になったんですよ」


「うん。さっき真希が来たからな。それは知ってるよ」


「それで、お父様から報酬に第五王子様と結婚する権利を貰えました」


「は?ちょっとマジで何を言ってるのか分からないのだが」


「そうですよ。グレン様。やっぱり正妻は私ですよね」


 いや、なんかイトまで理解に苦しむ発言してくるのだが。え?マジで何がどうなってんの。

 そんで父上は何で俺とカレーヌを結婚させようとしてるんだ。


 いや、待て。多分父上の事だから結婚で俺とカレーヌを縛り付けれればいいとか思ってるのか?


 いやでも面倒そうだし逆効果だぞ。面倒事がないのならばいいけどマジで逆効果だぞ。阿保なの?どうした父上。


「取り敢えず。二人共一旦剣を収めようか」


「「はい」」

 返事だけは良すぎる程に良い。


「取り敢えず。事情を聞くために父上だけは治療するか。治癒魔法・完全治癒」


 気絶してる父上の体の傷も含めて全部治す。

 そうしたら父上の髪もなんか治った。


 多分、ストレスたまって髪の毛抜けてて、それが治ったんだろうな。

 我が父上ながら。何というかうん。お疲れ様です。


「あれ。儂は一体」


「父上。大丈夫ですか?取り敢えず事情を説明してくれませんか?」


「え?何故ここにグレンがって、事情って、あ、あ~~~~~。なるほど理解したのじゃ」

 腐っても優秀な国王、周囲を見渡して今の状況を理解する。


「まず。グレン。お前はカレーヌ殿と結婚しろ。可能ならイト殿と結婚しても構わない。面倒事はこっちで全部終わらせてやるから。安心するのじゃ」


「それ、俺に何のメリットがあるのですか?」


「グレンにメリットはさしてないのじゃ。でもデメリットもないのじゃ」


「さしてって引っかかる言い方をしますね」


「うむ。それはもちろんグレンではなくイト殿とカレーヌ殿にはメリットがあるということじゃ。そうじゃろ」


「確かに私はグレン様と結婚出来れば最高に嬉しいです」


「私も最高に嬉しいです」


 イトもカレーヌも柄にもなく頬を染めている。


 うん。なるほどね確かにメリットがあるな。

 ぶっちゃけ俺のグウタラ生活にカレーヌはともかくイトは必要不可欠なんだよな。

 イトがいない生活など考えられない。そんなイトが結婚を望み、そして腐ってもこの国の最高権力者であり俺の父親がその結婚を認めている。


 逃げ道がないな。


 ここでイトの機嫌を損ねるのは不味いしな。


「分かった。じゃあイトを正妻でカレーヌを第二夫人でいいか?」


「はいもちろんです。グレン様」


「私としてもイトの方が長く一緒にいますし。問題はないです。最高に嬉しいです。ありがとうございます」


 凄く嬉しそうな二人。

 何なら互いに抱き合って喜んでる。

 まあ二人とも仲はいいからな。


 でも、あれだな天魔二人を妻にするって、俺が史上初だろ。

 我ながらめちゃくちゃだな。


 でも、なんか俺の直感が増えるって言ってるのだが。いや絶対面倒だろ。嫌だよ、増やしたくないよ。


 うん。まあそん時はそん時だ。面倒事は後で考えよう。


「では。ヤマダ王国・国王・ダラン・アスモート・ヤマダの名に置いて三人の結婚を認めよう。さて。これで三人はもう夫婦じゃ。後の面倒な処理は儂がやっておくから、後は若い者同士で楽しんでくれ」


「「お父様。ありがとうございます」」


 お前らお父様呼びを当たり前のようにすな。


「じゃあ。グレン様部屋に戻りましょうか」

「第五王子様。いいえ、旦那様部屋で楽しい事しましょうか」

 イトが右手にカレーヌが左手にくっつく。


 両手に花とはまさにこのことだな。


 まあ、俺も男だし悪い気はしない。


「じゃあ、部屋に戻るか」


「ちょっと待った。おい。お前、俺と決闘をしろ。お前みたいなグウタラ怠惰な屑人間がカレーヌと結婚など許せるか」

 小鹿みたいに足を震わせながら、所々傷跡の見られる鎧を来た20代前半ぐらいの若い男が立ち上がって俺に剣を向ける。


「旦那様。今、旦那様に無礼を働いた屑がいたので殺しましょう」

「そうですね。私も賛成です。まずは手足を切り落としましょうか」


 二人とも殺意が高すぎるよ。


「おい。待て。どういうことだ?つか。こいつ誰?」


「俺はこの騎士団の副騎士団長・イグリット・セリートだ。騎士団長。そんな奴に騙されないでください。絶対俺の方がそいつよりも強いですし。貴方を幸せに出来ます」


 あ。分かった。

 こいつカレーヌに惚れてるのか。まあ確かに見た目は凄く良いからな。

 納得は出来るな。


 でも流石に目に余る発言かな。


「消滅しろ」


 俺はたった一言そう唱えた。


 その瞬間に副騎士団長の剣も鎧も全てが消滅する。


「次はお前の存在を消滅させるぞ」

 こいつが確実に気絶して何なら死にかけるレベルの殺気と魔力を当ててやる。


 案の定というべきか。

 そのまま発狂して、叫びながら泡を吹いて気絶する。


 多分俺は俺の思ってる以上に独占欲が強いのかもな。カレーヌが奪われることがないと分かっててもその可能性を少しでも考えたら、心の底から腹が立ったからな。


「流石旦那様。今の殺気凄かったです。ああ、もう本当に最高でした」

 何処か恍惚とした笑みを浮かべて体をくねくねさせるカレーヌ。

 これは多分イッてるね。

 まあ。面倒だし無視でいいか。


「相変わらずグレン様はお優しいですね」


「お優しい?どうしてだイト?」


「だって、やろうと思えば殺せたでしょ。もしくは一生動けなく出来たりとか」


「いや。そんな面倒なことはしないよ」


「フフフ。そうですか。さてじゃあ部屋に行きましょうか」


「ああ。そうだな」


 そうして俺は両手に花を抱えた状態で部屋に戻った。


―――――――――――――――――――――

 やっと結婚回まで行った。

 頑張った。

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