第69話・騎士団員達は驚愕する
その日ヤマダ王国に衝撃が走った。
理由は至極単純にして明解。
新しい天魔が現れたのだ。
天魔それはこの世界において最強の証である称号。
天魔それはたった一人で国と同等の力を持ってると同じ意味の存在。
天魔それは一人で国を落とせる常識の通用しない圧倒的な力を持った存在。
天魔それはこの世界に100といない化け物共。
天魔それは一人でもいれば国として十分威張れる存在。
天魔それは国が大国として定義されるにあたって必要な条件の一つ。
そんな天魔が現れたのだ。
それもヤマダ王国の現在騎士団長から。
天魔というのは基本的に国に仕えるということは滅多にない。
何故なら天魔は誰かの下に付く必要がないからだ。
それだけの力を持っているのだから、もし仮についたとしても天魔が忠誠を誓うことはほとんどない。
それは利益の為だったりして、その国が最もその天魔にとって良い条件で雇っているという形に過ぎないのだから。
もしもその天魔が他の国からより良い条件を提示したらば速攻で裏切るようなそんな状態。
国によっては国王よりも天魔の方が権力を持ち実質的な国の支配に天魔がついてるいる国さえある。それが普通。
それを普通に出来るだけの力が天魔にある。
そんな状態の中、自国の騎士団長が天魔に覚醒したのだ。
それも代々この国に仕え、この国の為に数々の功績を上げている忠誠心の高い現在騎士団長が。
ヤマダ王国の大臣達はこの情報に湧きに湧いた。
だがしかし国王だけは嫌な予感を募らせた。
これ?グレンのせいじゃね?また。儂の息子がやらかしたんじゃね?という嫌な予感を。
そしてそれは見事に的中してしまい、更なる狂乱と混乱を生んでしまう。
―――――――――――――――――――――
時は騎士団長・カレーヌが用事を済ませたと言い、遅れつつもいつもの様に自分の騎士団員達の訓練を行っていた時に起こった。
いきなり目の前に双子の女の子が現れた。
それも一切の気配も出さずに突然訓練場に現れたのだ。
まるでいきなりその空間に現れたかのように。
「「「「包囲の陣を張れ」」」」
訓練中の騎士団員達はいきなり現れた双子の女の子に警戒しつつ、皆が同じように声をあげて剣を構えて包囲の陣を張った。
普通の騎士団ならばここで包囲の陣を張るなどという行動は出来ずに、慌てたり、いきなりあらわれた可愛らしい女の子を心配したりするだろう。
しかしそこは訓練された騎士団であり、今自分たちのいる場所が王城の訓練場という普通の者は入れない場所であり。誰もその気配に察知で出来なかったということを考えて。最大限の警戒を持ちすぐさま包囲した。
「「おお。よく訓練されているね。流石カレーヌちゃんの部下だね」」
双子はとても可愛らしい声をあげた。
誰がどう聞いても可愛らしい幼子の声を、だけど、訓練された騎士団員達はその声からそのより警戒を強めた。
理由は簡単。
今現在屈強な騎士団員達によって剣を向けられて囲われているのに一切の行動を起こさず、さもそれがいつもと変わらないように声をあげたからだ。
まるで自分たちなど路傍の石と変わらないように。存在すらしてないかのように。
「お前らは何者だ」
一人の騎士団員が恐怖のあまり声を荒げる。
「「僕は世界で二番目に強い存在だよ」」
双子は可愛らしい笑みを浮かべて互いに手を絡ませながら妖艶にそう言った。
その姿は幼い女の子の筈なのに何百年と生きる魔女のようであった。
「世界で二番目?もしかして、天魔連盟創設者・真希さんですか?」
ずっと静観をしていたカレーヌがそう質問をした。
自分達の尊敬する騎士団長のその言葉に騎士団員達は更に警戒を強めると同時に疑った。
何故なら天魔連盟創設者というのは誰もその姿を知らない存在、だけどあの帝国よりも力を持った存在。
やろうと思えばこの国全てを更地に出来るような存在。
それが天魔連盟創設者。それがこの可愛らしい双子の女の子とは到底思えなかったのだ。
そして何よりそんな力を感じなかったからだ。
「「大正解だよ。流石グレン君の眷属だね?うん。良い洞察力だ。大切にしなよ」」
双子の浮かべた笑みは先ほどとは打って変わり、慈愛に満ちた母のような笑み。そして声色であった。
「騎士団長、これは一体どういうことでしょうか?」
騎士団員達にとってあまりの常識外の状況に一人の騎士が思わずそう質問をする。
カレーヌは何と答えようか一瞬詰まったその隙に双子があっけらかんと言い放つ。
「「まあ、何?二つ名を授けに来たんだよ。天魔となった彼女にね」」
その瞬間場を静寂が支配した。
それもそのはず。その言葉はカレーヌが騎士団長のカレーヌが天魔という最強の存在に至ったという意味だったのだから。
「え?え~~~~~~。騎士団長て、天魔に至ったのですが?」
驚き慌てふためき騎士団員達。
そんな中一人の騎士団員が「いや、でもこの双子の言葉が本当かどうかは分かりませんよ。そもそもこんな子供二人が天魔連盟創設者ってあり得なくないっすか?」という言葉で場はまた静まり返り、そして騎士団長は天魔じゃないという流れに傾き始める。
・・・・・・・・・・・・
「「ハア。話を円滑に進めるために分からせてあげるか」」
ザワザワザワザワ
その瞬間、一瞬騎士団員達全員が死んだ。
それは圧倒的な恐怖。
絶望的で悪魔的で最強で最悪で最凶という言葉が相応しい程の圧倒的な力。
自分がどれだけ集まろうが、どれだけ強くなろうが絶対に勝てないそう思わせるような存在力。
たった二人ながらもほんの一瞬でこの国を更地に出来ると思える程の強大な力。
自分が今まで会ってきたどの存在よりもぶち抜けて圧倒的に強い。
正に最強と言い切れる化け物。
そんな存在の力をもろに浴びたのだ。
本当にその瞬間心臓が止まり。騎士団員達全員が自分が死んだと錯覚させられた。
否、実際に心臓が止まって息も出来ずに思考も放棄してたのだから、死んでいたと同じであろう。
そして騎士団員達全員が理解させられた。
この双子の少女が本当に天魔連盟創設者であり自分の騎士団長が天魔に至ったということに。
「先ほどは失礼な態度を取ってしまい申し訳ございませんでした」
一人の騎士団員がそう言って双子に頭を下げる。
それを見て他の騎士団員達も慌てて頭を下げる。
「「そういうのはいいよ。グレン君じゃないけど。面倒だからね。さてじゃあ早速カレーヌちゃんに二つ名を授けるよ」」
「はい。お願いします」
「「じゃあ。そうだな。カレーヌちゃんの二つ名は【察知の天魔】かな?【探知の天魔】とは違い。探知能力こそ多少弱い物の洞察力や観察力にかけては【探知の天魔】よりも圧倒的に優れている。だからカレーヌちゃんは【察知の天魔】だ。これからは【察知の天魔】と名乗るといいよ」」
「ありがとうございます」
「「うんうん。じゃあグレン君によろしくね」」
「もちろんですよ」
「うん。その言葉を聞けて安心した。じゃあね。転移」
そして双子は何処かに転移した。
「「「騎士団長、いいえ【察知の天魔】様、おめでとうございます」」」
騎士団員達が一斉で頭を下げる。
「ありがとう。さて、じゃあ訓練を再開するぞ」
「え?再開するんですか?今から国王陛下に報告をしなくていいんですか?」
騎士団員達は全員ポカンとした表情を浮かべる。
「いや別にそんなことしなくてもいいよ」
「え?でも騎士団長が天魔になったことを報告すれば、この国の軍部の全権を得られますよね?」
軍部の全権。それはこの国の保有している軍事力の全てを操れるという意味。
つまり国王の次に権力を持っているといっても過言ではない存在。否、武力という面で見れば国王を簡単に超えるような、そんな圧倒的な権力。
そしてそれは兵士達にとっては夢のようなものであり最高の称号。
それなのに元々出世欲が強く。様々な功績を打ち立てて来た騎士団長の姿を長年見て来た部下たちからすれば何故手に届く範囲にそれがあるのに目指さないのか不思議でしょうがなかった。
「いや。そんなことをしたら面倒じゃん。私の仕事が増えるじゃん」
騎士団長のその言葉を聞き騎士団員達は「え?」や「は?」などの疑問の言葉を口々に漏らす。
それもそのはず今まで騎士団長は面倒など言わずこの国の為に危険な任務をこなし。
時には自分たちの為に自ら危険な役割を負ったりし、今までほとんどの死者も重傷者も出さずに立派にこの騎士団を統制しきた最高に頼れる人だったのだから。
なのに。面倒と。そうまるであの怠惰でグウタラ王子であるグレンのようなことを言ったのだから。
そして何人かの騎士団員達は思い出す。
さっきまるであのグレンを主として崇めるような発言をしていたことを。
でもすぐさまにその疑問を打ち消す。
だってそれは余りにもあり得ないものだったから。
「お前ら呆けてる暇なんてないぞ。訓練再開だ」
その瞬間さっきの力よりかは圧倒的に弱いがそれでも自分たちでは逆立ちしても勝てない圧倒的な力を肌に感じる。
「「「はい」」」
そうして訓練は再開された。
だけどカレーヌは気が付いていなかった一人の騎士団員が先走り自分の両親である、とある侯爵家にカレーヌが天魔に覚醒したことを念話魔法にて伝えていたことに。
そしてその侯爵家が今現在王城にいて、その情報をすぐさま国王に伝えたことを。
それによって今現在ヤマダ王国内が大混乱し、緊急会議が開かれていることを。
ただ、そんなものカレーヌは一切気が付かずにいつもの様に自分に騎士団員達に訓練をしていた。
―――――――――――――――――――――
すぐ隣でイトが第一王子の訓練をしている。
天魔連盟創設者・真希が来たことには気が付いたけどさして気にせずに無視していた。
因みに第一王子の方は気が付いていただけどよそ見しないとイトに怒られてた。
いつも誤字報告をして下さる皆様ありがとうございます。本当にありがとうございます。
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