第65話・【回避の天魔】は危機回避能力も高かった
「グレン様。残り二人の天魔がここに到着するまでまだ幾ばかの時間がありますね?」
「そうだな。それまでゆっくり昼寝でもするか。いや。待てよ。何故わざわざ待ってるんだ?」
「え?それはグレン様が自ら行くのを面倒がったからじゃないですか?」
「ああ。言われてみればそうだな。うん。確かにこっちから行くのは面倒だな。それに逃げられても面倒だしな。うん、やっぱり待機で」
「分かりました。グレン様」
「すみません。神様。あのうとても言いにくいのですが、【回避の天魔】はもう既に逃げていました」
「え?マジで?」
「はい。マジです。どうやら【星光の天魔】の体に自分に危険が迫った時にすぐさま伝える術をかけていたそうです」
「なるほどね。確かに【回避の天魔】だもんな。危険回避能力は高いわな」
「私がもっと早く気が付ければ良かったのですか。申し訳ございません」
「いや。まあしょうがない、しっかし【回避の天魔】か、一度逃げられたら捕まえられるのは無理だな。まあこっちに手を出すなんて真似はしないだろうし。放置でいいかな?」
回避を冠する天魔だしな。いくら俺が世界最強の天魔とはいえおそらく世界で最も回避の上手い存在に逃げられたって訳だ、それは捕まえるのは無理って話だな。
真希とかだったら話は別かもしれないけどね。でもわざわざ真希の力を借りる程でもないか。うん。
「放置でよろしいのですか?」
「ああ。だって【回避の天魔】ってだけで戦闘能力そのものは高くない、むしろ低いくらいだ。脅威レベルは低い。それにこちら側から無理して追いかけても面倒なだけだ。別に俺たちに危害を加えないのであれば放置でいいだろ」
「なるほどね。確かにその通りですね。では神様の仰せの通りに」
「うん。それでいいよ。じゃあ一応残った【輝魂の天魔】だけでも洗脳するか」
「そうですね神様」
「じゃあ。その間俺は寝るわ。面倒だし、俺が寝てる間に済ませといてもいてくれ」
「分かりました。神様」
「イトとカレーヌ、協力してやってくれよ」
「もちろんですよグレン様」「当たり前じゃないですか、第五王子様」
俺は二人の頼もしい言葉を聞いてから。ソファーの上に寝転がり。そのまま眠りについた。
―――――――――――――――――――――
下腹部に何か違和感を覚えて目が覚める。
目を開けるとカレーヌがいそいそと俺のズボンをあげていた。
敢えてもう一度言おう、あげていた。
つまりそういうことだ。
心なしかスッキリとした気持ではあった。
「あ。第五王子様、申し訳ございません。大変ご立派でしたのでつい」
「口か?手か?」
「えっと胸です」
なるほどね。うん。全然覚えてないな。でもいいなこれ、凄く楽だ。
いつもだったら、確実にギンギンなのだが、今はかなり落ち着いている。気分そこそこ爽やかだ。
いや、今まで結構煩わされてきたし。今後ともこの寝てる間にってのでいいかもな。まあ妊娠とかなったら滅茶苦茶に面倒だから、それはなしだが。
「そうか。じゃあ今後ともよろしく頼む。いや、何だ、その時の記憶は寝てたし全くないが。ある意味凄く楽だ。今まで一人で処理してたあの苦労はなんだったのやら。あ、でも本番だけは絶対するなよ」
「はい。分かりました。第五王子様。それとありがとうございます。これから誠心誠意込めてご奉仕させていただきます」
満面の笑みを浮かべて俺に敬礼をするカレーヌ。
まあ、お礼を言うなら俺の方なんだけどな。
面倒だしいっか。
「え~。許すんですか。じゃあ私にもさせてくださいよ。グレン様」
イトが参戦してきたよ。
まあ、でも許すか、ここで断るのもおかしいし、別にイトだろうがカレーヌだろうが。俺は寝てて夢の中だ変わらない。
「うん。別にイトでも構わないぞ。俺を起こさないように気を付けるのだったらな」
「本当ですか。ありがとうございます」
イトも満面の笑みで返事をする。
どんだけしたかったんだよ。
「ただ。本番は絶対やめろよ」
「分かってますよ」
「じゃあ。神様。私もいいですか?」
今度はセリカまで。
まあ、予想はしてたけど。
「ハア。別にいいぞ。ただ俺を起こすなよ」
「はい。ありがとうございます。神様」
満面の笑みを浮かべて返事するセリカ。
うん。セリカもどれだけしたかったんだよ。
まあいいけど。断る方が面倒だし。
俺にとってはメリットしかないからな。
「あ。それでセリカ、【輝魂の天魔】の洗脳は終わったか」
「はい。ばっちり終わらせました。帰ってきてすぐにイトとカレーヌとカゲウスの力を借りて拘束。そこから多少痛めつけたらすぐに心が折れて、そのまま洗脳で終わりです。さっきよりも楽に洗脳は出来ました」
「おう。そうかそうか。それは良かった。じゃあ後はもう手加減なしで、聖教国の上層部として居座ってる聖職者共を全員洗脳して。ついでに力を持ってる公爵家の方も協力させるか洗脳すればこの国の支配は完成かな?」
「そうですね。神様。では私は今からカレーヌと共に全員洗脳してきますね」
「なるほど。カレーヌの探知能力を使うのか。そっちの方が早くて楽だな。よし。気を付けて行って来いよ」
「分かってます。神様」「もし何かあっても全員ぶちのめしますよ。第五王子様」
「おお。そうかそうか、まあ確かに天魔だし滅多なことないと思うがな。まあでも一応。もし何かあったら呼べよ」
「「ありがとうございます。神様(第五王子様)」
そう言って二人は転移した。
さて、これで聖教国を支配に送るのは時間の問題だな。
「グレン様。コーヒーです」
イトがさりげなく俺のすぐ近くにある机の上にコーヒーを置く。
「ありがとうイト。相変わらず気が利くな」
俺は礼を言ってからコーヒーを飲み干す。
「うん。やっぱり寝起きのコーヒーは美味いね。特にこの匂いが良い。ああ、癒される良い匂いだ」
「フフフ。ありがとうございます。あ、もう一杯注ぎますね」
俺がもう一杯飲みたがったのをすぐに悟り、コーヒーを注いでくれる。
「ありがとうイト。本当に俺のことをよく分かってるね」
「それは。ずっと一緒にいましたからね」
「ハハハ。そうだな。ずっと一緒にいるな。本当にずっとな」
「でも、最近は賑やかになりましたね。ナナちゃんが増えて。カレーヌが眷属になって、セリカも眷属になって」
「そうだな。確かに増えたな。あ、つかお前らいつの間に三人仲良くなってんだ?」
「それはもちろん。さっきグレン様が寝てた間ですよ。グレン様のカッコいい所を言い合ってたらあっという間に意気投合しちゃいました」
「ハハハ。そうかそうか。それは少し照れるな」
「はい。思う存分に照れてください」
「まあ、でも三人の仲が良くなったのは良いことだ。仲良くなかったら色々と面倒だからな」
「そうですね」
「じゃあ。俺は本でも読むわ」
空間魔法から適当に読みかけの本を取り出してソファーの上に座って読み始める。
「じゃあ。私も久しぶりに本を読みましょうかね」
イトも空間魔法から本を取り出して読み始める。
二人で同じソファーに座って互いに背中合わせにして本を読む。
昔。何度かしたことのある懐かしい光景。
「たまにはこうして背中合わせての読書も悪くはないな」
「そうですね」
そうして俺は、いや俺達は楽しく読書をするのだった。
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この話を書いてた時の時間は深夜の1時です。
つまり深夜テンションです。
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