第62話・【星光の天魔】の心をへし折ろう

「さてと。転移完了。来ましたよ聖教国に」

 俺達が転移した場所はセリカから座標を貰った場所。


 聖教国のお偉いさんが密会をする時に使用されていた。いかにもって感じの無駄に豪華な応接室だった。


「お越し下さり。ありがとうございます。神様」

 ドアが開きセリカが俺に頭を下げる。


「よう。セリカ。堅苦しい挨拶は面倒なんで、抜きだ。サクッと本題に入るぞ」


「分かりました。神様。では本題に入らせていただきます。まず二人の天魔は後1時間程でここに到着する予定です」


「なるほどね。もう一人天魔は?えっと確か【星光の天魔】だっけ?はどうした?」


「【星光の天魔】は趣味の孤児院巡りをしています?」

 一瞬俺の頭の中で孤児施設にお金を寄付したり。子供達と愉快に遊ぶ、まだ顔も知らない【星光の天魔】の姿が思い浮かぶ。

 ただ、セリカが恨んでいたのを思い出して。多分悪い方だなという結論に至る。


「えっと、それって、悪い方の?人身売買系だよね」


「もちろんです。神様。【星光の天魔】は10代未満の男と女両方に性的興奮を覚える変態でして」

 いや、まさかの両刀使い。なるほどね。ヤバい奴やな。

 二つの意味でヤバいね。


「あ~ね。いやはや。なんというかえぐいな。まあ、でもそうしてるなら。面倒じゃないからええな」


「そうですね。極論、今と待遇を変えずに、むしろ待遇を良くしたら簡単にこちら側に付きそうです。まあ、復讐もかねて洗脳しますけどね。フフフ」

 怪しげな笑いを浮かべるセリカ。


 でもまあ少し考えれば納得だ。

 だって、セリカは子供の時に洗脳されているのだから、まあ、そしてその時の年齢は確実に10代未満の頃も含まれているだろう、そんでもってセリカはかなり可愛い方だ。

 まあ、うん、後はなるほどねって、察せてしまうよな。


 それは復讐したいよな。


「そうだな。まあどうぞ思う存分復讐してくれ」


「はい。ありがとうございます。神様」

 嬉しそうな笑みを浮かべるセリカ。


「よし。じゃあ、他の二人の天魔が来る前に全員で【星光の天魔】を洗脳するか」


「いいんですか?」


「ああ。もちろんだよ。どうせ、ここには全員洗脳するつもりで来たからな」


「分かりました。では行きましょうか」


「ああ。そうだな?皆もそれでいいだろ?」


「もちろんですよグレン様」「ご主人様の行きたい場所にいくなの」「第五王子様が望むままに」


「よし。じゃあセリカ、その場所にネズミ眷属は向かわせてるか?」


「もちろんですよ」


「よし。じゃあ皆手を繋げ、転移するぞ。ほい。転移」


 ―――――――――――――――――――――


 転移したら優しそうな好青年と16人程の孤児達に優しそうなシスターと司祭の男性がいた。


「は?お、お、お前らは一体何者だ?」

 転移してきた俺たちをみてすぐに清潔感のある白色の服に身を包み。優しそうな雰囲気の好青年こと【星光の天魔】は怯えるようにそう言った。


 まあ。流石に俺たちの力に気が付いたんだろう。

 俺は隠してるけど、ナナとイトとセリカは隠してないから天魔だと理解出来るし、カレーヌもそこそこの力を出してるからな。


 【星光の天魔】からしてみれば、いきなり天魔3人に天魔に匹敵する存在、そしてなんの力も感じないけど、逆にそれが恐ろしい得体の知れない化け物が来たって状況だからな。


 それはそうなるよな。


「まあ。なんだ。お前をフルボッコにしに来たものだ」

 そう言って俺は普段は隠している【消滅の天魔】【万能の天魔】【怠惰の天魔】【虚無の天魔】としての力を解放させる。更に追い打ちに天魔に匹敵するレベルの聖力も解放させる。


 誰がどこからどう見ても最強の力であり、こいつに勝てない、殺される、そう思わせれるだけの圧をかけた。


 もちろん。【星光の天魔】以外の人達にはダメージが入らないようにう、虚無の結界を張ってあげてる。


 まあ、ここで死なれたら面倒なんでね。


「ハハハハハハハハハハ。何だよ。何だよ。何なんだよ。その力は、お前は。お前らは一体何者だよ」


 半狂乱したように叫ぶ【星光の天魔】。

 ああ、可哀想に心が折れてるなこれは。


「お前をフルボッコにしに来たっていっただろ、さて、じゃあ、もう少し絶望を与えてあげようか。洗脳しやすいようにね」


 ゆっくり歩いて【星光の天魔】に近づくと、恐怖のあまり座り込んでいる彼の頭に手をのせてから、昨日の記憶を全部消滅させた。


「今、俺に何をした?」


「昨日のこと思い出せる?」


「何を言ってるんだ。昨日?昨日?え?昨日俺は何をした?・・・・・・・・」


「さて、俺は【消滅の天魔】だよ。後はもう分かるよな」


「お、俺の記憶を消滅させたのか」


「まあ、そういうことだ、さて、じゃあ、何時の記憶を消滅させられたい?」


「やめろ。やめてくれ。そんなことしたら、俺じゃなくなってしまう。俺が俺じゃない存在になる」


「まあ、そうだね。でもセリカにそれをしたわけだし。自業自得だよ」

 俺は再度頭を掴み力を発動させようとした時だった。


「こうなったら道ずれだ。星の力を喰らえ。死ね。オーバーメテオストライク」

 【星光の天魔】は何をとち狂ったか、この町全てを崩壊させる程の巨大隕石をいくつも落としてきた。


 だけどそれは、隕石としてこの世界に現れた瞬間にカレーヌが全てを探知して、眷属経路を使い全体に共有、イトがすぐさま外に出て飛び上がり剣で粉々にして。ナナがそれを光線で更に粉々の粉末にする。


 最後にセリカが風魔法を使い暴風を吹かせて空中にて粉々になった隕石を全て、人の住んでいない近くの荒れ地まで吹き飛ばした。


 見事な連係プレイだ。


 そして【星光の天魔】の攻撃がたった一瞬で無にされたのという意味でもあった。


「今の一瞬で、一体、何が?」

 いきなり全ての隕石が消えたもんだから驚く【星光の天魔】。まあ気持ちは分かるよ。


「まあ、ようは。お前が何をしても意味はないということだ。どうする?もう一回隕石落とすか。その時は全ての記憶を消滅させるけど?」


「やめてくれ。それだけは辞めてくれ。もう、俺はお前に抵抗しない。なんなら永遠の忠誠を誓ってもいい。だからこの場は見逃してくれ」


 天魔というのは命乞いをする時。いつも何処か図々しいな。敗北を知らない最強の存在だからかね?

 まあ、何だろう【幻覚の天魔】のクソみたいな命乞いを思い出したよ。


 全くもって、今まで自分は散々小さな子供を使って遊んでおいて、クソみたいな野郎だぜ。

 これで好青年で顔が良いから余計に腹立つな。


「ハア。見逃すわけないだろ。さて。取り敢えず今この場で拷問にかけるのは子供達に悪影響が凄いんで、あの応接室まで連れてくか」


「おい。皆。今から転移するけどいい?」

 俺はそう言って【星光の天魔】の頭を掴んで引きずりながら皆のいる所に向かって歩いた。


 その時、近くで様子を見守っていた孤児の少女が声をあげた。


「ねえ、もしかしてナナちゃん?」


 と。


 その瞬間、俺の中にありもしない記憶が断片的に。パズルのピースのようにナナを経由して無理やり入ってきた。


 まるで俺よりも上にいる上位存在・神がナナにこの記憶をねじ込んだような。


 そんな不思議な感覚。


「一体どういうことだ」


 俺の呟きはナナの泣き声によって掻き消えた。


「マリちゃん。マリちゃんなの。生きてたの、生きてたんだね」


 ナナはそう言って駆け出しさっきナナに声をかけた少女に抱き着いた。


 俺の周りの人は全員ポカンとしてる。


 だけど俺はナナ経由で流れてきた断片的な記憶によってその状況が多少分かった。


 ようはマリちゃんはもしもナナが俺と出会わなかった世界線で力を失ったナナが仲良くなった友人。


 そして経緯は分からないが。目の前で殺されてしまった存在なのだ。


 自分でもちょっと何を言ってるか分からないが、ただそうとしか説明がつかないのだ。


 そしてこの考え方が一番しっくり来る。


 多分この世界にはいくつもの世界線や未来がある。

 その中でマリちゃんが殺されナナが泣き叫ぶバットエンドの世界線の記憶。だけど二人は友人として幸せに過ごした記憶。そんな記憶を二人に神が見せてあげたのだ。


 まあ、あれだな。どの神がしてくれたかは分からないが。今抱き合って互いに嬉し泣きをしてるナナとマリちゃんを見る限り。中々どうして良いことをする神がいたものだな。


 ―――――――――――――――――――――


 補足説明


 これをした神はゲーム神です。

 理由は二人が幼女だからです。


 そして二人が感動の再会にて抱き合う姿を見たかったからです。


 とどのつまりゲーム神は変態というわけです。


 以上。


 後ネタバレですが、マリちゃんの正式な名前はユーリー・マリエット・センフェス


 聖教国にて教皇の次の権力を持っている三大公爵家とは別に7年前に教皇に反旗を翻して滅ぼされてしまった公爵家の一人娘です。


 何故孤児施設に預けられたかというと、両親は民衆の前で晒し首にされ、娘も禍根を残さないようにと秘密裏に殺されそうだったところを。高い忠誠心を持っていた護衛達が救出、しかし追手が厳しくやむなく素性を隠して孤児施設に預けたって感じです。


 まあ、それがその孤児施設が真っ黒で変態貴族に売られて殺されるとは護衛さん思ってなかったですけど。


 一応。【乙女ゲームと呼ばないで】ないにて、マリちゃんを救い出してナナを仲間に出来るクエストは存在していますが、このクエストを選択するとナナが覚醒しない為、ナナがそんなに強くなく、また、クエストクリアに必要なレベルとアイテムが無駄に高いくせに、受けれる期間が超短く。かなり難しい鬼クエストで有名です。


 一応最後までクエストをクリアさせるとマリちゃんを公爵家当主にして、聖教国に強い伝手をつくることが可能ですが、その最中にロリコンこと【星光の天魔】と戦う必要がありクリア難易度は滅茶苦茶に高いです。


 クエストクリア可能キャラは修羅か2週目以降じゃないと絶対に不可能と言わしめてるクソクエストです。


 ついでに【星光の天魔】を倒すくせに、報酬は覚醒前のナナを仲間に出来るのと。少量のアイテムに正味天魔倒せる強さあったらいらない、聖教国へのコネのみなので、まあ、やる価値は薄いクエストです。


 主人公が当たり前のようにフルボッコにしてる【星光の天魔】ですが。強さ的に言えば戦闘型の天魔であり一対一ならセリカを倒せるぐらいは強いです。


 能力としては星と光を司る天魔で隕石を落としたり、光系統の攻撃のほとんどを使用可能というチートキャラです。


 普通に戦ったら隕石を一切の制約なしで、毎ターン落としてきて、攻撃しても光の盾が勝手にガードして、ダメージを与えても治癒の光で回復して、ダメージを一定以上与えると。「本気を出す」とか言って何十もの隕石を落として周囲全てを更地に返るヤバい奴です。


 一人で何十万という軍やら魔物を隕石一つで崩壊させれる化け物です。


 ただ相手が悪かった。

 本当に相手が悪かった。ちょっと同情できるキャラ。

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