第55話・本棚に少し過激な恋愛小説置いてたって話

「取り敢えず二人とも一旦落ち着こうか。大体今この場にはナナもいる。教育上よろしくない。それに今この場で流されたら確実に後々面倒だ。まずは落ち着こう。そっから話を始めようじゃないか」


「何を言ってるのですかグレン様、私達は落ち着いてますよ」

 イトの声が優しい声なのが逆に怖い。


「そうですよ。教育上よろしくないって。大丈夫です。私の部屋に行けばいいのですから」

 カレーヌ、そういうことじゃないんだよな。

 というか今にも襲いかかろうとしてるのに説得力がゼロだよゼロ、何ならマイナスだよ。


「いや。待て二人とも。今この場で流されたら後々確実に面倒なことになる。二人とも知ってるだろ。俺が面倒事が嫌いだって」


「はい。知ってますよ。でもグレン様だって満更でもないでしょ。だってほらグレン様のグレン様はヤる気いっぱいですよ」


「いや。イト。そのグレン様のグレン様とかいうパワーワードやめて。マジで止めて。それ言われたら、その通りですとしか言えないから。後ヤる気は不味いって。ここでは不味いから。いや場所変えても不味いから。今は駄目だよ」


「どうして第五王子様ダメなのですか?第五王子様だって満更でもないでしょう。そういう事に興味あるでしょ」

 カレーヌのいうことはごもっともだ。


「いや確かに興味はある。でも今俺の直感がこのまま流されたら不味いと警告を鳴らしてるんだ」


「でも、興味があるならやってみればいいじゃないですか?グレン様。もし面倒事が起こったらその都度考えましょ」


「そうですよ。イトの言う通りですよ、それに第五王子様と私とイトがいればほぼ全ての問題は解決できますし。デメリットなんてないじゃないですか」

 二人共が見事に協力しあいながら俺にじりじりと近づいていくる。


「ちょっと、待って一旦、メリットとデメリットについて俺に考えさせてくれないか?」


 ・・・・・・・・


「まあ。いいですよ。それでグレン様が納得するなら」


「私もイトに同意見です」


 よし。二人から了承は得たと。


 というわけで一旦メリットとデメリットを考えてみよう。


 まずメリットは俺の興味が満たせる。性欲を解消出来る。

 ぐらいかな?


 デメリットはそうだな。

 まあ、確実にズルズルその関係になれば糸を引いて長引くと思う。それは非常に面倒だな。


 後はそうだな。俺の消滅を使って俺の精子とかを消滅させればいいが。いつか確実に面倒くさがってそれを忘れる自信がある。そしたら詰みとかそういうレベルの問題じゃない問題が起こるかな?


 ようは子供が出来るのだ。 


 流石に今はまだ父親にはなりたくはない。

 というかもしイトとカレーヌの子供で親が俺ってなったら。その子供は王位継承権を持つことになると思うんだよな。


 だって今の所、王子で子供を持ってる人がいないのだから、いや。中々問題だとは思うが。

 初代国王が王位継承権を持つ者はその代の国王が確定するまで子供を作ることを禁ずるという法律を作ったからな。


 理由は王が確定した時にもし他の王位継承権を持つ者に息子がいた場合は余計な混乱を防ぐためにその子供を処刑する可能性があるから。それを回避する為とのこと。


 まあ、これは結構ごもっともだ。

 実際に帝国とかでは王位継承権を持つ者が7人ぐらいで争って勝ち抜いたものが後顧の憂いを立つために他の王位継承権を持つ者含め親族全員殺したって例はあるからな。


 生まれた子供に罪はない。


 王位継承の争いで子供が処刑されたら可哀想だという初代国王のかなり人道的な判断によって出来た法律だ。


 でまあ、ここで問題なのが俺が王位継承権を持ってないので子供を作ることが法律的に可能なのと、グウタラ生活してて仕事とかしてないが一応は第五王子なので王族、つまり俺が王の血を引く人間だというこだ。


 そんでもしこの2人の子供となったらば。


 まあうん。普通に滅茶苦茶に優秀な天魔候補になるな。


 だって母親が戦闘型の天魔であり今現在我が国の最高戦力であるイト。

 もしくは、まだ天魔と周囲に認識されてないが天魔であり、様々功績を立て、我が国の騎士団長であり、【探知の天魔】ともう一人の三代将軍を除けば軍部において最も力を持つ存在カレーヌだぞ。


 うん。


 その子供って、まあ凄いことになるな。


 多分どれだけ頑張っても優秀な存在になるだろうし、天魔に至る器を持ってる可能性も非常に高いからな。


 血筋と言うのはしっかりと力を持っている。


 基本的に天魔の子供は天魔とまではいかないが確実に人並外れた力を持ってるし、祖先を辿ると天魔がいるような場合は普通よりも圧倒的に天魔が生まれやすい。


 だからこの国も元を辿れば祖先が天魔であるという訳で俺含め父上も英雄クラスには強いし。第一王子の方の兄上だってそこそこ能力はある。妹だったり姉である王女達も結構皆様々な才能を持っている。


 つまりなんでかっていうとそれは血の力によるところが大きく。祖先に異世界転移であり天魔である初代国王がいるからなんだよな。


 さて、で、考えよう。


 今現在世界最強の天魔である俺と天魔であるイトとカレーヌの子供。


 まあ、天魔になるわな。

 そんで。そんな天魔に至った存在が王族の血を引いてると。


 一応この国の法的に王族の血を引く男には全員生まれた瞬間から王位継承権が与えられるからな。


 もちろん母親が俺みたいに平民だったり。貴族的な都合があれば生まれてすぐに王位継承権剥奪となるが。イトとカレーヌの子供ってなったらば身分的には全然問題ない。


 むしろ高すぎるぐらいだ。


 ・・・・・・・・・


 うわ。厄介事の匂いしかしない。面倒事の匂いしかしない。


 やっぱり無しかな。


 せめてこの国の王が確定してからだな。

 もしくは完璧な避妊方法を確立してからだ。といっても薬で抑制とかは天魔である俺にもイトにもカレーヌにも効かないし。


 そうなると俺の消滅しかないけど、絶対面倒くさがって忘れる自信がある。


 ・・・・・・・・・・


「よし。決めた。取り敢えずこの国の王が決まるまではお預けだ。もし子供が出来て王位継承権を持ってってなったら超絶面倒だからな」


「グレン様の消滅の力を使えば避妊出来るんじゃないですか?」

 イトから至極ごもっともな質問が来る。

 まあ、ですよね。


「いや。それは俺が面倒がって忘れる可能性があるから駄目だ」


「じゃあ。私が忘れないようにします。これでしたら大丈夫ですよね?第五王子様」

 カレーヌがギンギラとして目でそう迫って来る。圧が圧が凄い。


 でもカレーヌの提案は確かにその通りなんだよな。

 ただ、いまいち信用が出来ないんだよな。

 既成事実を作るためにワザと言わないような、そんな気がする。

 俺の直感がそう言っている。


「いや。それはそうなのだが。本当に教えてくれるかどうか不安だ」


「もう。そんなこと言わないでくださいよ。第五王子様」


「そうですよ。グレン様。私もいますから大丈夫ですよ」

 カレーヌとイトが俺のかなり側まで近寄り、身体をまさぐって来る。


 ヤバい。流されそうだ。


「いや。タンマ。でもでも、やっぱり面倒事は嫌だ」


「大丈夫ですって。グレン様。面倒事が起きても私達で解決させますから」


「そうですよ。第五王子様。そもそも第五王子様は王族です。私共、僕に全てを任してドンと構えといてくださいよ」


 二人が俺の服の中にまで手を入れ始まる。


 ヤバい。非常にヤバい。そして不味い。


「いやちょっと。二人とも一旦落ち着こう。というか俺は何度落ち着こうって言えばいいのかな?面倒くさいよもう。だからさあ、取り敢えずナナもいるし。まずは服に手を入れるのを止めてくれないからな?」


「ナナは別にいいなの。だって今からご主人様とイトお姉ちゃんとカレーヌお姉ちゃんの3人でXXXするってことなの。それは仲良しでとってもいいことなの」


 その瞬間部屋の空気が固まった。


 理由?


 そんなものは決まってる。


 何でナナがそんなことを知ってるのだ。


「おい、ナナ。何故ナナがそんなことをしってる?」

 俺は少し震えながらナナに質問をする。


「本で読んだなの」

 そう言ってナナが俺の部屋の本棚にある本を指さす。

 タイトルを確認したらメイドと王子の恋だった。


 俺が最近まで読んでいたら恋愛小説であり、そこそこ過激なシーンのある小説だ。


「ああ。そういえば最近読んだ本とか読もうと思ってる本は本棚に置いてるな俺?」


「グレン様。流石にこれはグレン様が悪いですよ」


「ちょっと。イト何を言うんだよ」

 イトが服から手を抜いて俺をそう責める。


「そうですよ。ナナちゃんにそんな本を読ませるなんて」

 カレーヌも服から手を抜いて俺を責める。


「え?カレーヌまで、いやまあ確かに不用心だったのは認める、でも読んだのはナナだって、俺はナナにお勧めしたりしてないよ」


「え?ご主人様がそこの本棚の本も面白いよってお勧めしてくれたから読んだナノ」


 ナナに言われて記憶を辿ったら、言った覚えが確かにあった。


「グレン様」

「第五王子様」


 二人の声が明らかに低い。

 これは確実に怒ってる。


「いや。たんま。別によくないか?誰も傷ついてないんだから」


「まあ、そうですけど。それはそれ。これはこれです。グレン様」「そうですよ。イトの言う通りですよ。第五王子様」


「いや。何でだよ。というか二人とも息ピッタリ過ぎ。あ、そうだ。ナナの方から二人になにか言ってやってくれ」


「別にナナはどうでもいいなの。ただナナはああいう本は好きじゃないなの」


「そうか。うん。何かごめんね好きじゃない本勧めちゃって」


「ご主人様が謝らなくてもいいなの。その本を好きになれなかったナナが悪いなの」

 そう言ってシュンとなるナナ。

 ああ。凄く可愛いけど、申し訳ない気持ちがこみ上げて来る。


「ああ。こっちこそごめんね。ナナ。よしじゃあ今度ナナと一緒に本屋行こうか。その時にナナの好きな本を買おう」


「ありがとうなの。ご主人様。嬉しいなの」

 俺に満面の笑みを見せてくれるナナ。


 ああ。可愛い。癒される。


「というわけだから。イト、カレーヌ。ナナは特に気にしてなさそうだし。この話題は出さないという訳で決まりだ」


「「分かりました。グレン様(第五王子様)」」


「息ピッタリやな。まあ。いいや。ハア何か疲れた。俺は寝る。当たり前だが夜這いとか仕掛けるなよ」


「分かってますよ。グレン様。あ、カレーヌは私の方で見張ってますから安心してください」


「私もイトが先に抜け駆けないように見張っておきますね。第五王子様」


「おう。そうしてくれ。じゃあおやすみ」


「「「お休みなさい(なの)」」」


 そうして三人に囲まれながら俺はまた布団にくるまって眠りについた。

 やはり睡眠は正義。


―――――――――――――――――――――

補足説明

もう暫くは主人公は童貞です。いやなんの報告だよって言われたら、まあその通りとしか言えませんが。


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