第51話・詠唱した方が能力が高くなるのは当たり前
というわけで俺は今現在洗脳の天魔もとい勇者パーティーの女魔術師と邂逅しています。
邂逅って大層な言い方をしたが別になんてことはない。ただ普通に向こうから寄って来ただけ。俺の作戦通りだ。
そんなわけで洗脳の天魔は実に良い笑顔でイーディアちゃんに近づくとこう言ってくる。
「こんちわ。お嬢ちゃん小さいのにメイドなんてやって偉いわね」
そう優しい笑みで言って何気なく頭を撫で始める。
その瞬間に俺の力で洗脳の力を行使したというがわかった。
よし。こっからが俺の出番だ。
俺は気配を消滅させて近づき、そっと洗脳の天魔の肩に手を置く。
肩に手を置くと同時に俺の力で洗脳の天魔の精神を覗く。
そこには二つの精神があった。
一つは激しい輝きを放ちながらも呪いに雁字搦めにされている精神でもう一つは薄汚れた色をした汚い精神だった。
確実に後者の精神が洗脳の天魔をのっとってる精神だな。
一応念のために精神の記憶を除いて確認をするか。
・・・・・・・・・
うん、まっ黒だな。確定だ。洗脳の天魔の身体を乗っ取り好き勝手している、屑の精神だ。
今はイーディアちゃんに洗脳をかけるのに夢中というか力を使っていて防御は弱いわ俺に気が付いていないわで隙だらけだな。
よしサクッと消滅させますか。
「【消滅の天魔】たる我が命じる。この者に憑きし悪しき精神よ消滅しろ。精神消滅」
俺はしっかりと小声で詠唱を行ったうえで確実に乗っ取ってる方の精神を消滅させる。
よし。これで大丈夫かな。
後は呪いを解いてあげましょう、いや。消滅させてあげましょうか。
こっちの呪いの方が中々に強そうだから一応補助道具を使いますか。
多分なくても大丈夫だろうが。まあ一応だ。
俺は異空間からナナの作ってくれた聖水を取り出して、今現在体を動かしていた精神が消滅したことにより放心状態の洗脳の天魔にかける。
因みに他の人には見えないように軽く幻覚魔法を使っているのでそこら辺りは大丈夫だ。面倒事を嫌う俺に抜かりはなしだぜ。
お、でもあれやな思った以上に聖水の効き目良いですな。流石ナナだぜ。
これならば簡単に消滅出来そうだ。
「【消滅の天魔】である我が命じる。この者にかけらし悪しき呪いよ消滅しろ。呪術消滅」
パリン
精神を消滅させた時は聞こえなかったが呪いを消滅させたことによって呪いが砕け散った時に出る音が聞こえた。
「あああああああああ。私は解放された~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。ああああああああ。本当本当に本当に心から最高の気分だ」
洗脳の天魔が狂ったように叫び声をあげて自分で自分を抱きしめる。
まあ、でも確かに嬉しいだろうな。今までずっと別に人間の精神が自分の中に入り込み自分の身体を動かしていたのだから。
そんな生き地獄からようやく解放されたんだからな。
「貴方が、いえ、貴方様が私をあの地獄から解放してくださったのですか?」
俺の方を向き跪く洗脳の天魔。
よく俺がやったと分かったな。
「ああ。そうだよ。俺がやった」
「本当に本当にありがとうございます。よろしければ貴方様に永遠の忠誠を誓わせてください」
まさかの洗脳の天魔の方から忠誠を申し出てくれた。
いやはや驚きだな。まあ手間が省けて良かったけど。
常識的に考えて今始めてあった俺によく永遠の忠誠を誓えるな。いやでも、あの地獄から救い出したってのを考えると、まあ、うん納得は出来るか?出来るよな?
一応能力を使って確認したが本当と出てるから嘘ではない。心の底から俺に忠誠を誓ってる感じだな。
まいっかサクッと眷属化させるか。考えるの面倒だし。
「いいよ。じゃあ薄皮消滅。俺の血を飲め。そしたらお前を俺の眷属となる」
俺は薄皮を消滅させて指から血を垂らす。
「ではありがたく頂戴いたします」
俺が血を垂らしてるのでそれを手で受け止めてなめると思ったら、そのまま俺の血が垂れている指を口に咥えた。
うん。絶妙に生暖かい。
何とも言えない気分になるのだが。いや何か滅茶苦茶舐めるやん。
つか長い。別に一滴でも飲めばというか舐めればそれで十分なのに。
そんなことを考えてる間に洗脳の天魔は覚醒をする。
元々彼女には圧倒的な才能と魂の力があった。しかしそれを呪術の洗脳という形で無理やり押さえつけていた。
だから本当の実力が出せなかった。
それが解放された今。彼女は洗脳という力以外にもう一つの新しい力に覚醒をした。
その力は【呪術】なんの皮肉か。因果か。
今までずっと洗脳されて呪いをかけられてきたからこそ、呪いに対する理解が耐性がそして才能が身に着けられ、今眷属化という形でその才能が本格的に開花したのだ。
直接的な戦闘能力は戦闘型の天魔と比べると僅かにだが劣るものの、【洗脳】と【呪術】という精神操作系統の中でもかなりの力を誇る能力を2つも身に着けた彼女はやりようによっては天魔すらも操る力を手に入れた。
それは狂ってるというのが正しい。
そんな存在。
本来ならば絶対にありえない存在。
そう言わしめたる力を持った存在。
ありとあらゆる呪いを使いこなし。ありとあらゆる存在を洗脳することが出来る存在。
そんな彼女はただ一人の主に敬愛と神のごとき忠誠心を持ち、その狂ったとしか言えない力をたった一人の青年の為にのみ振るう存在となった。
そんな化け物こと彼女の中にあったのは、新しく力に覚醒したから、より主に役立てるという思いのみ。より必要とされる思いのみであった。
ただ詳しく述べるのならば彼女はいつまでも敬愛する主の指を咥えていたいという少々狂った思いがあったというのは言わぬが花というものであろう。
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