第49話・元勇者の影武者と魂容量の話
「じゃあ、なんでカゲウスが天魔に至らなかったのか教えてくれ」
「はい。それは私が考えるのに神器と複数契約をしているからだと思います」
カレーヌにそう言われて全てを理解できた。
「なるほど。ようは魂の問題。容量の問題か」
「はい。そうです。といってもこの話は私が【探知の天魔】様の元にいた時に教えてもらった話ですのであまり詳しいというわけではないですが」
「ああ。まあ確かにそうかもな。魂の話となると、俺の知る限りだと真希が一番詳しそうではあるが、まあ俺も一応そういう本は読んでたから多少は知識あるよ。でも確かに納得だ」
俺とカレーヌだけで通じあったように頷き合う。その様子にカゲウスもイーディアちゃんもポカンとしていた。
ああ、多分二人は理解してないな。
でも面倒だし俺か説明はしたくないな。
「カレーヌ二人に説明をしてあげろ」
「分かりました」
面倒だと思ったら人に投げるに限るぜ。さて適当に本でも読んで説明が終わるのを待ちますか。
俺はそう考えると異空間から本を取り出して、説明を始めたカレーヌを横目に一応カレーヌの話を聞きながら読書を始める。
「では。お二人に私の方から魂の容量と神器契約についての話をさせていただきます」
「お、お願いします」
「お願いしますわ」
カレーヌの言葉に二人が少し戸惑いつつも返事をする。
「まず。お二人は魂というのを知ってますか?」
「はい。全ての生物に与えられるものであり、私たちの自我と力を形成するものですよね?」
「その通りです。そんな魂なのですが。大きさがあります。大きければ大きいほど容量があり、容量があればその分魂を通じて力を獲得できます」
「なるほど」「なるほどですわ」
「そしてそんな魂の容量が普通の人の倍以上ないと天魔に至ることは出来ません」
「ということは私はその魂容量がなかったということですか?」
「いえ。カゲウスさんの魂容量は普通の人の倍以上存在します。ただし、神器契約によってその大部分を消費している状態です」
「神器契約?あ。もしかして神器との契約って魂の容量を使うのですか?」
「その通りです。神器とは神が創り出した人智を超えた力を持つ兵器であり、それの契約者・所有者となるということは。それ相応の対価は必要に決まっていますから」
「では私が神器契約を破棄したら、天魔に至ることが出来るのですか?」
「いえ。それは難しいと思います。もう既に第五王子様の眷属化処理は終わっていますので、今魂容量を空けた所で無駄です」
「そうですか」
「でも。不安に思う必要はありませんよ。カゲウスさんの力は神器の力も考えれば充分に天魔に匹敵する力であり。戦い方によっては戦闘型の天魔に勝てる存在ですから。現在天魔である私が保障します」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると気が楽になります」
「さて。話は終わったね。じゃあパーティーに戻りますか。あんまり長いこといなくなると怪しまれるからな。そうなったら面倒だ」
何となく二人が納得した感じなので本を異空間に閉まってそう言う。
「あ。確かにそうですね。でもイーディアを一人残すことになってしまいます。一緒に連れて行ってもいいですか?」
バカなことを言い放つカゲウス。
うん駄目に決まってるだろ。いきなりカゲウスが妹と一緒におったら怪しいとか超えてシスコンだよ。
いや、待てよ。もしかしたらある意味これは使えるのではないか?
「分かった。いいだろう。ただし幾つかの条件がある」
「条件ですか?」
「ああ。そうだ。まずイーディアちゃんには金髪になって貰う、その上で適当にメイド服を着させて、俺が新しく専属メイドとして雇ったと元勇者という設定で一緒に来てもらう。そんでカゲウスは面倒だし、ロリコン設定で一目惚れしたとか言ってずっと傍にいてあげろ」
「薄々気が付いてると思うが囮として利用するつもりだ。多少危険はある。でも俺もカレーヌもいるし。もしもの時はカゲウスが守ればいい。俺の眷属になったんだ。それくらいは余裕だろ」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
カゲウスは感極まったようにそう言って俺に頭を下げる。あ、そういえばイーディアちゃんの意思確認してないな。
「イーディアちゃんもそれでいいかい?」
「はい。大丈夫ですわ。でも私黒髪ですし。その元勇者?って人と似てるんですか?」
まあ、ごもっともな疑問だな。
「ああ、ぶっちゃけると背丈と体つきに肌の色は似ているが、雰囲気とか目の色に髪の色は違う。でも大丈夫だ。俺にまかせろ。染料魔法発動・髪染料からの色魔法・色変化・目」
俺は髪と目の色を変化させる。
これで終わりだ。雰囲気が違うといったが。ぶっちゃけ俺の知るナナの雰囲気は天魔に至ったナナだ。
むしろ、違ったほうがいい。望むならば弱弱しくも潜在能力もとい魂容量に満ち溢れた存在がいい。
そんでその点をイーディアちゃんはクリアしている。
多分普通に騙せると思う。
「あ、それとドレスアップ発動・メイド服」
俺は一瞬でイーディアちゃんの服装をメイド服に変換させる。着替えとか面倒だしね。まあ、この魔法男物の服を一切だせないという致命的すぎる欠点持ってるけど。
「わあ。凄いわ。一瞬でメイド服になるなんて」
「気に入ってくれたみたいな良かったわっと。さてじゃあ転移しますか。いやその前に一応情報にすり合わせをしようか。情報は大切だからな。何かしらの食い違いが起きたら面倒だ。というわけでカゲウスお前の知ってる元勇者ことナナについてそして【洗脳の天魔】について教えてくれ」
「はい。分かりました。私の知る情報は主に3つです。一つ目はナナ様が本当の勇者であり洗脳の天魔の力によって偽物勇者にすり替わったこと」
「二つ目は洗脳の天魔が勇者パーティーの魔術師として旅に参加していること」
「そして三つ目は洗脳の天魔の本当の自我は閉じ込められており。今現在洗脳の天魔を動かしている操っているのは聖教国の上層部にいる老侯共の配下だということです」
一つ目と二つ目は知ってたが。三つめは初耳だな。いや。まあ薄々そう思ってたし。大分結論として出掛ってはいたが。なるほど。まさかの乗っ取りをされてたか。
洗脳ではなく。乗っ取り、いやはや洗脳より立ちが悪いかもな。だって洗脳の天魔はずっと自分の体が自分じゃない何かに動かされているのを味わうことになってるのだから。
それがどれだけの年月かは分からないが普通の人ならば一日で発狂するな。
流石にこれは同情を禁じ得ない。でも逆に考えてみよう。もしこれを救ったのならば結構簡単に俺の忠誠を誓ってくれそうだな。
うん。中々にいい情報だ。
「ありがとう。カゲウスそれは中々にいい情報だ。さてと、では洗脳の天魔を救って、そんでもって俺に面倒事をかけさせて聖教国に地獄を見せてあげるか。さあ、戻るぞ、みんな俺と手をつなげ」
俺の言葉にカレーヌが右手をつかみ。カゲウスとイーディアちゃん二人が左手をつかむ。
よしオッケーだな。
「じゃあいくか。集団転移」
―――――――――――――――――――――
そして俺は人避け結界を張ったままのバルコニーに転移した。
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