第44話・偽物勇者との邂逅
そんなわけで俺は今勇者パーティー歓迎会の会場にいる。
当たり前かもしれないが俺はボッチである。
一人で適当に料理をつまんでいる。
城の超一流の料理人たちが作った料理は中々に美味しく、また使われている食材も最高級品質な為、結構満足出来る。
まあ、俺が作ったほうが多分美味しいの出来るだろうけどね。面倒だからせんけど。
でまあ。なんでボッチで飯を食べてるかというと。勇者とその仲間たちがフリーになるのを待ってるんだ。正確に言えば握手タイム的な交流タイムまで待ってる感じだ。
今現在勇者とその仲間たちは国王からの歓迎の挨拶やら他の大貴族や王子(馬鹿第二王子と愚か兄上)との挨拶を行っている。
まあ流石に目の前にいるのが自分よりも強く魔王という驚異から人類を救った勇者が相手だからか馬鹿第二王子は借りてきた猫みたいに大人しい。
流石にここで何かやらかした不味いというのは馬鹿でも分かるか。
良かった良かった。
そんなわけで交流タイム終了まで待つこと30分。
ようやく勇者とその仲間たちがフリーとなり。いい感じのスキマ時間が出来る。
パッと見渡すと。父上が勇者に話しかけよう、もとい取り入ろうとしてる貴族共を止めている。うん。どうやらしっかりと約束は守ってくれたみたいだな。
ありがたい。ありがたい。
さてじゃあ行きますか。
笑顔を作って演技をしていこう。俺は今から勇者パーティーの熱狂的なファンだ。【万能の天魔】の力を信じろ超一流の演技をしよう。
よし。さあ、頑張るぞ。少し面倒だが。これから起きるであろうより大きな面倒事を回避するためだ。俺ならばいける。
俺は覚悟を決めて勇者の元に少し駆け足で向かうと凄く良い笑顔かつ目をキラキラに輝かせて嬉しそうに興奮を隠しきれないように叫ぶ。
「勇者様ですか。あ、握手お願いしてもいいですか」
如何にも勇者に憧れる青年って感じだ。因みにそういう人間は結構いる。勇者っていうのはそれだけ凄い存在だからな。まあ偽物だけど。
「ああ。もちろんだとも」
そう言って優しい笑顔で握手に答えてくれる。勇者。いや偽物勇者。
握手すると同時にどれだけ洗脳をされているのか確認する。因みに確認方法なんてのは幾らでもある。精神を除くなり魂を除くなり能力干渉の痕跡を調べるなり。それはもう色々ね。
てなわけで結果はどうかな?
・・・・・・・・
どうやら今ままでナナが行った功績を全て自らの手で成し遂げたと洗脳されているようだな。
実際は城にこもってグウタラしてただけなのに。そんで最後の最後。魔王城の戦いの時だけ、護衛と共に魔王城に向かいナナに呪いをかけたって感じだな。
もちろんその時も洗脳されていて記憶はゼロと。
まあ。あくまで呪いの籠った神器を使用した感じだが。それでもやってることは悪質だな。でも凄いなこの神器。天魔の力で放たれたであろうかなり強力な呪いを完璧に閉じ込めたうえで増幅させている。
なるほど。これは幾ら天魔といえど抵抗は難しいな。
俺だったら消滅で終わりだけど。
う~ん。じゃあ。どうしようか。
取り敢えず2日後に洗脳が自動的に消滅するようにセットするか。
偽物勇者パーティーは1日でここから去るみたいだし。
さて、じゃあもういいかな。
「勇者様。本当にありがとうございました」
俺はそう言って勇者の手から手を放して頭を下げる。
「ああ。それは良かった。勇者である俺と握手出来たんだ一生誇りに思うといい」
超傲慢発言が飛び出る。
こいつ勇者じゃなくて、七つの大罪・傲慢が似合ってるな。まあ、傲慢はもう既にいるけど。
まあ。いいや。次だ次。
サクッといかないと。面倒事は早く終わらせたいのでな。
「あ、あの、勇者パーティーの防壁にして最高のタンク。ゴリマッチョさんですよね。握手お願いしてもいいですか?」
偽物勇者とは少し離れたところで一人肉を食べていた。勇者パーティーメンバーの一人に話かける。因みにタンクとしては英雄クラスに優れているゴリゴリマッチョだ。
まあ。名前がゴリマッチョだからな。親は何をどうしてこの名前にした?まあ本人気に入ってるし名前に恥じない筋肉だからいいけど。
「おお。そうかそうか。いいだろう。しかしお主も中々に鍛え上げられた肉体をしているな」
そう言って握手に応じてくれる。ゴリゴリマッチョ。じゃなくてゴリマッチョ。
つかよう俺の肉体が凄いって分かるな。一応万能の天魔の力のせいというべきかおかげで、一切運動をしてなくても超一流レベルの美しい筋肉を持ってるからな。
あ。少し考えが脱線した。
サクッと洗脳確認をしよう。
うん。どうやらナナと共に戦ってた部分を全部偽物勇者と共にってのに置き換えられてるな。他は特にないな。
これも2日後に消滅するようにセットしとこ。
はい。終わりっと。
「ありがとうございます。ゴリマッチョさんに筋肉を褒めていただけるのは嬉しいです」
「おお。そうかそうか。小僧これからも筋肉道を精進しろよ」
取り敢えず適当にお礼の言葉を言って。ゴリマッチョも嬉しそうに笑ったのを確認してから。次の人に向かう。というか筋肉道ってなんだよ。
次に向かうのは何故かバルコニーで一人ワインを飲んでいる勇者パーティー斥候の青年だ。
滅茶苦茶に影が薄くて。周りからよく、忘れられている可愛そうな人だが。その実力は本物で探知能力は準英雄クラス、影の薄さを生かした暗殺能力も準英雄クラスに高い。普通の戦闘も超一流クラスには戦える。雑用等の能力も秀でている。
縁の下の力持ち的な人だ。
名前は確か、えっと。えっと。あれ?何だったけ?
【おい。名前なんだっけ?】
俺は名前を完璧に忘れたのでネズミ眷属に念話で質問をする。
【カゲウスでチュウ】
【ああ。そんな名前だったな。ありがとう】
【また。いつでも質問してくれでチュウ】
しかし。カゲウスか。名は体を表すというが表し過ぎだろ。本当に親はどういう考えでカゲウスなんて名前を付けたんだよ。知らんけど。
まあいいや。取り敢えず接触しますか。
「ああ。もしかして勇者パーティーの縁の下の力持ち、類まれなる暗殺技術と探知能力を持った、カゲウス様ですか。ファンです。握手お願いします」
俺がそういうと。なんかあっけに取られた様子で目をパチパチする。カゲウス。
「僕にかい?」
「はい。カゲウス様にです」
「そうか。それは嬉しいね。いいとも幾らでも握手してあげるよ」
凄く優しそうな口調でそう言ってくれる。うん優しいというか苦労してる人って感じだな。少し目が死んでるし。
そんなわけで握手をして洗脳の有無を確認しようと精神を覗こうとする。
その瞬間だった。
パキン
何かが割れた音が聞こえた。
それと同時に俺の手を放して距離を取り。懐から短剣を取り出すカゲウス。
おっと。これは失敗したかな。
「君は。いやお前は何者だ。何が目的だ」
さっきの優しい言葉とは大きく変わり、冷たく低い言葉で問い詰めにくる。
うん。いやはや舐めてたね。
さっきの感覚からしてカゲウスは精神守護の宝珠を持ってたな。一度きりではあるがほぼ全ての精神干渉から防ぐ貴重なアイテムだ。
いやはや用心深いな。だがある意味では尊敬できるな。最強である俺はそういうのしないからな、まあ面倒だからってのはあるが。
まあだがしかしここからどうしましょうか。
ああ。凄く対処が面倒だ。
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