第37話・身分の差と殺害計画
「で?一応聞くがイトはどうしたい?第一王子こと兄上と結婚したいと思えるか?」
まあ。答えは分かり切っているのだが一応質問をする。
「一切思いません。私にあるメリットなんてグレン様が義理の弟になるくらいです。私としてはグレン様に身も心も捧げていますし。第一私よりも弱い男と結婚なんて絶対に嫌です」
「ハハハ。そうかそうか。まあそう言うと思ったよ。にしても最後の私よりも弱い男って。戦闘型天魔であるイトよりも強い男なんて10人もいないと思うぞ」
「確かにそうですね。でもやっぱり私の近くには世界最強のグレン様がいるので。一番魅力的に感じるのはグレン様ですかね」
少し頬を赤くしながら嬉しいことを言ってくれるイト。といっても多分恋愛感情ではなく尊敬に近い物だと思うが(なわけあるかこの鈍感主人公)。
「そうかイトは嬉しいことを言ってくれるな」
「ナナもご主人様が一番魅力的に感じるよ」
俺の隣でフルーツを一心不乱に食べていたナナも会話に参戦して来る。
「お。ナナも嬉しいことを言ってくれるじゃないか。俺もナナの事は可愛らしい守ってあげたくなるような、そうだな。妹みたいに感じてるぞ」
「じゃあ。ご主人様じゃなくて。グレンお兄ちゃんだ」
ナナは多分何気ない気持ちでそう言ったのだろうが。その言葉は俺に想像以上にクリティカルヒットした。
何という破壊力だ。
一応第五王子という訳で妹は3人程いるのだが。ぶっちゃけ母親違うし。関りもないし、何なら数えるくらいしか会ったことがないからお兄ちゃん呼びは新鮮かつ強すぎる。
もう本当にヤバすぎる我が国の建国者である山田王が残した萌え萌えという状態だな。
「ゴホン。グレン様。流石にナナちゃんにお兄ちゃん呼びは止めさせた方が良いと思いますよ。お兄ちゃん呼びが他の人にバレたら確実にあらぬ噂を掛けられる上に。国王様の手によってグレン様のリアル妹が送り込まれる可能性もありますよ」
イトの正論に納得をする。
確かにその通りだ。
それにナナにずっとお兄ちゃん呼びされるのは俺の精神的に負荷が大きすぎるな。だって呼ばれる度にいわゆる萌え萌え状態になってたらまともに寝れんし本も読めんわ。
「すまん。ナナ今まで通りの呼び方で頼む」
「分かったです~。ご主人様」
「分かってくれたか。ありがとうナナ」
「グレン様。それであのう。第一王子の件なのですが。振ってよろしいですか?」
あ。すっかり忘れてた。
「ごめんごめん。話が脱線してたね。もちろん振ってくれて構わないよ。にしてもアレだな第一王子こと兄上を王様にしようと計画してたけど。イトにそこまで好意を抱いてるのだったら。兄上が国王になった瞬間に無理やりとイトと結婚するとか言い出しそうだな。まあもちろんイトは断るが。確実に関係は悪化するし。この最高の環境が崩れる可能性もあるしな」
「確かにそうですね。恋は盲目とは良く言ったもので。私としても第一王子様は正気の状態じゃないと思ってますから。もういっそのこと殺しますか?」
「あ。ナナもそれが良いと思う。殺そう。殺そう。だってご主人様の悩みの種何でしょ。サクッと殺して取り除こう」
二人とも凄い殺す気が強いな。
大分ビックリだよ。一応俺の兄だぞ。まあイトに結婚を申す込むという愚かな行いをしたから兄(愚)だけど。
「いや。二人とも殺すのは無しだ。というか一応俺の兄だぞ。ハア。でもどうしようかな。ぶっちゃけ力技で解決するのは凄く楽なんだが。後処理が大変そうだし。かといってイトが結婚って選択肢は絶対に有り得ないし。二人とも何か良い案はない?」
「う~ん?ごめんなさい。グレン様思いつかないです」
「ナナも分かんない」
「まあ。そうだよな。どうしようか?」
コンコン
ノックと音が聞こえる。
基本的に俺の部屋を出入りするのは俺とナナとイトの三人だけだ。他の人は来ないというか来る理由がない。
だって俺は怠惰でグウタラな王子なのだから。
にも関わらずノック音がする。
つまり相手は第一王子こと俺の兄上確定ということだ。
「おい。グレン。イト師匠はいるか?」
まあ案の定というべきかガッツリ兄上の声です。はいやらかしてる。
マジで今一切対処決まってないよ。どうするんだよ?
「ごめんなさい第一王子様。今はまだ返事が決まってません。返事が決まったら私から伝えます」
イトが慌ててドア越しそう言う。
「そうか。分かったいくらでも待つよ。返事楽しみにしている」
明らかに嬉しそうな声で兄上が去っていった。そして思う。
あ、これ絶対に付き合うか付き合わないかで悩んでると勘違いしてるやん。多少は脈アリと思ってるやん。
正確にはどうやって話を穏便に振るかで悩んでいるのに。脈ゼロだよ。ゼロ通り越して殺人計画まで出てたよ。
まあ、今は勘違いさせたままでいいか面倒だし。
「あのう。ご主人様思ったのですけど。第一王子様はイトお姉ちゃんの天魔としての力が目当てで付き合ってくれなんて言ってるんですか?それとも本当に惚れてるんですか?」
兄上が去った後、急にナナから素朴な疑問を投げかけられる。
「いや、普通に前から兄上はイトのことを好きだったと思うぞ?」
「じゃあなんで今になって付き合ってくれなんて言ったんですか?好きならもっと前に告白すればいいのに」
「ああ。それはな多分身分の問題だろうな。第一王子こと俺の兄上は一応王位継承第一位を持っている王族だ。それが第五王子の専属メイドと結婚なんて許されるわけがない。クズ第二王子とかならばともかく。兄上は純愛主義者のハーレム嫌いだからな」
「イトと付き合うってなったら絶対に正妻だ。でもイトは一介のメイドというわけで身分が釣り合わない。確実に派閥の貴族に止められる。かといってそれらを全て投げ捨ててイトと駆け落ちなんてのも。まあイトの気持ちが伴ってないので無理なのは当たり前として、そもそも論として兄上にそんな度胸はない。だってそれをしたら馬鹿第二王子が王になるんだぞ。この国終わるやん」
「確かに。あ、でも今はイトお姉ちゃん天魔だよね?これ身分としてはイトお姉ちゃんの方が上なんじゃない?」
「そういうことだナナ。ナナは賢いな。ようは今までは身分の差があって無理だったけど。今はイトが天魔となり身分でいったら国王よりも上。そんでもってもし兄上がイトの心を仕留めることが出来てイトと結婚となれば王位継承権の争いは一気に兄上の方向へと傾きクズ第二王子の派閥もイトの力を恐れて確実に減少し、やがて向こうから白旗を上げるだろ」
「それこそ血の一滴も流さずにな。というわけで元々兄上がイトに恋をしてる事を知っていたであろう派閥の貴族共は告白しろと。囃し立てだろう。そんで今に至るってわけだ」
「じゃあ。普通に私の力が目当てて告白をしてくるなんて最低って言ってから。せめて私よりも強くなってから出直してこいってイトお姉ちゃんが言えば良くないですか?」
ナナから凄く単純で簡単な解決方法が提示される。
「「あ。確かに」」
珍しく俺とイトの声がはもる。
「ナナ、その案凄くいい。それならば兄上が何を言おうと、明らかにイトの力が目当てみたいに映るし。イトよりも強いってそんなの天魔になれって言ってるような物なのだから、まあ無理だ。うん。凄くいいよ」
「ありがとうございます。ご主人様。そう言ってもらえて嬉しいです」
心底嬉しそうに俺の前で頭を出して撫でて撫でてってしてくるので、思う存分撫でてやる。
「さてと。じゃあイト。サクッと行って兄上を豪快に振って来てくれ」
「分かりました。グレン様。では行ってまいります」
「おう。いってらっしゃい」
――――――――――――――――――
しかし俺は気が付いていなかった。恋は本当に盲目だというのを。
そして俺の感じた嫌な予感がこの程度で終わるわけがないということを。
その時はまだ一切気が付いていなかったのだ。
―――――――――――――――――――――
少しでも面白いと思っていただけましたら星で評価をして下さると最高に嬉しく思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます