第35話・愉快犯
「ありゃりゃバレたでござるか。確かに某は今認知の力を使ってるでござるよ。因みにいつ分かったのでござるか?」
俺が殺気を浴びせているにも関わらずに真希はいつもと変わらない様子で飄々と言い放つ。
「おい。真希。何いつもと変わらない様子何だよ。いくら友人とはいえ。流石にそれはやり過ぎだろ」
俺は再度殺意を込めて真希を脅す。
「おやおやグレン殿激おこぷんぷん丸でござるな。まあ。良いでござるよ。それで?いつ分かったのでござるか?教えてくれるでござるよね?」
真希は心底楽しそうにそう言う。何か企んでそうだな。
でも。まあ俺の命の恩人である真希の頼みだからな教えるか。
「ああ。分かったよ。俺が自分が認知の力を操作されていると分かったのは。怠惰じゃなかったからだ。今までの俺を考えればいくら危険なベリアルの封じられた悪魔の書とはいえ。放置しておけば世界に甚大な被害が出る可能性があると知ってるとはいえ。わざわざ自分の身体に多大な負荷がかかる悪魔の力の吸収なんて愚行に及ばないと思ったんだ」
「いつもの俺なら面倒と言って。別に他の人に任せろよというだろうし。真希の空間転移を使えばベリアルに勝てるだけの戦力は簡単に集められるだろ。そんで認知を操作して協力させれただろ。なのにその提案をしなかった。それがまず異常だ。そうなると俺が洗脳されていなければ説明がつかないというわけだ」
「つか悪魔の力の吸収死ぬほど痛かったんだぞ。マジで気が狂うかと思ったよ。半ば操られてたとはいえよくやったな俺。自分で自分を褒めてあげたいよ」
「なるほど。おお。よく分かってるでござるな。でも。まだ確信の所についてないでござるよ。某はグレン殿が違和感に気が付くという認知も操作していた筈でござるから。それに本当にそれが真実でござるか?」
何ださっきからやけに含みのある言い方をするな。というか何で真希は嬉しそうに笑ってるんだ。
「悪魔の力を取り込んだ時に支配の力か何か分からんが、俺にまとわりついていた力を弾き飛ばした。それが認知の力だったんだろう?違うか?」
その時、俺は更なる違和感を感じた。
ベリアルの持っていた支配の力は俺に馴染んだ。これは確実だ。そしてほぼ100%俺の物となった。
でも、おかしいのだ。何故馴染んだ支配の力が認知の力を跳ねのけるんだ。だって自分という存在がより高次の次元へと進化する時なんかは状態異常の回復という現象が起きるのは知っているが今回は悪魔の力を吸収もとい奪ったという状態だ。
別に俺が上位存在へと進化したとかそういうのではない。
いうなれば俺の力が多少強化された感じだ。つまり状態異常の回復は起きないはずだ。でも、もしも、そうもしもであるが、その力が支配の力ならば説明がつく。
いや。ついてしまう。
俺は一応ネズミ眷族を使って天魔の情報を集めている。そんな俺だが【支配の天魔】という情報を手に入れたことは一度もない、でも真希は支配の天魔がいると言った。
それはつまり。俺の眷属ネズミですら探せないような人里離れた場所でひっそりと暮らしているか、俺の眷属ネズミが分からないレベルの隠蔽能力を持っているということとなる。
そして天魔というのはある意味ではその人の欲のようなものであり。人生のようなもの。支配なんている天魔を手に入れた支配欲にあふれる人間が人里離れて暮らす?
そんなふざけたことあるわけがない。
あってたまるか。
じゃあ、誰が支配の天魔だ。ああ分かったぞ。多分真希だ。
まず。俺はベリアルの力を吸収して虚無と支配の力を手に入れた。
その瞬間に俺の中にあったある意味での洗脳のような精神操作系の能力が解けた。というか弾けた音がした。
でも状態異常回復が起こるのはない。
つまり。俺は真希に支配の力と認知の力を両方掛けられていた?
そして俺が支配の力を獲得したことにより同系統の支配の力を弾き返した。これは理解が出来る有り得る現象だ。
で、支配の力で俺は何を支配されていた。
予想としては俺がベリアルの力を吸収するように仕向けられていたのか?
じゃあ。次は認知の力だ。
認知の力では何を操作されられている、あ、分かった。俺は今真希の事を命の恩人と思った。
最初、真希が俺に認知の力を使ってるという結論に至った時には溢れんばかりにあった殺意がゼロとなっている。何なら今は命の恩人に対して申し訳ないという思いすらある。
そんなわけがない。らしくなさすぎる。別に真希にはお世話になっているが命の恩人ではない。そんな記憶はない。
「消滅の力よ。俺に掛けられた認知の力を消滅させろ」
俺はこれで認知の力は消えると思ったが消えなかった。
「ああ。そんなことをしても無駄だよ。じゃなかった。無駄でござるよ。グレン殿」
一回素に戻ってるやん。キャラ付けブレてんじゃん。まあいいけど。
「どういう意味だ?」
「だってグレン殿は一回某の認知の力を無条件で受け入れることを了承し、解くことを禁じたでござるから」
・・・・・・・・・
「は?どういうことだ?いや待て。分かった。俺が6歳の時か。卑怯とは言えないな。しかし天魔である俺にここまでの強制力があるということは。もしかしなくも、真希お前は【制約の天魔】でもあるんじゃないか?」
「あ。おしいでござる。【制約の天魔】はもう既にいるでござるよ。某は【契約の天魔】でござるよ」
「どっちもさして変わらないだろ。ハア。で?真希今俺に掛けた認知解いただろ。何故だ?」
俺はさっきまであった真希を命の恩人と思う感情がゼロになったのでそう問いただす。
全く何をしたいんだ?愉快犯かな?
でも。あれだな今更真希にキレてもしょうがないな。何より面倒だ。
戦ったら多分勝てると思うが。まあ被害の大きさにワンチャン死ぬ可能性もあるというのを諸々考えたら。戦うなんてのは愚者の選択だ。
というか【空間の天魔】の力で真希相手だと簡単に逃げられるしな。
ハア。面倒くさい。本当に面倒だ。
「で?グレン殿は某に何をするでござるか?」
答えなんて分かりきってるのに聞いてくるの少しウザいな。つか質問に質問で返すな。まいっか面倒だ。
「何もしないに決まってるだろ。今ここでお前と絶交しても俺に旨味はないし。何だかんだで今まで仲良くやってきたんだ。今回の件だって結論だけ見れば特に俺に害はない。強いていうならば俺がより強くなったくらいだ。別に悪魔の力を取り込んだ言うても、元々怠惰の力を持ってんだ。さして変わらないよ」
俺は心底面倒そうにそう言い放った。
でも実際問題俺は今ここで真希と絶交するってのはデメリットが大きすぎるんだよな。
真希に貸してもらっている貴重な本や真希から教えられる最新の情報はもちろんのこと天魔連盟という俺を殺す力を持った組織と友好関係を捨ててしまうということ。
マジでデメリットがでかいな。
ハア。面倒だ。本当に面倒だ。
そんでこれを分かった上でやってるから余計にたちが悪い上に面倒だ。
「ハハハ。グレン殿ならばそう言うと信じていたでござるよ。因みに某がグレン殿をわざわざ支配と認知の力を使ってまで悪魔の力を吸収させた理由は分かるでござるか?」
「ああ。もちろんだとも。俺を強くさせるためだろ」
・・・・・・
何故か少し間が開く。いやもったいぶるなよ。面倒くせえ。
「大正解でござる。某はね。見てみたいのですよ。世界最強なんて言葉じゃあ生温い。本当の世界最強をそれこそ上位神いや最上位神すらも滅ぼせるような正真正銘の化け物を。見て、そして某と協力関係を結ばせたいのでござるよ」
興奮したように恍惚とした笑みでそう叫びだす真希。
うん。あれだな。中々に狂ってんな。まあでも俺が強くなるのは俺も大歓迎だ。
強くなって悪いことはないからな。それに何だかんだで真希とは付き合いも長いし、俺も真希とは協力関係を結んでいたいからな。
「ハア。分かった。じゃあ今回の事は許そう。ただもし俺を強くしたいというのならば短い時間かつ。概要を説明してからにしてくれ」
「分かってるでござるよ。だから今回の悪魔の書を使った強化も短い時間具体的には数十分で終わる物でござったからね」
「ああ。確かに言われてみればそうだな」
「そうでござるよ。それにですねグレン殿。某は確かに認知の力をグレン殿に自由に掛けれるでござるが。グレン殿の力はかなり強いので強引な認知を歪ませるとかが出来ないのでござるよ」
「出来たとしてもすぐに気が付かれるでござる。支配の力を使えばかなり強引なのも出来たでござるが。グレン殿がベリアルを通じて支配の力を手に入れたので、もう通じなくなったでござるし。今みたいな強化は出来なくなったでござるよ」
「なるほどね。まあ、いいや。どちらにせよ俺の怠惰でグウタラな今の幸せな生活を怖さないのならいいよ。余り今ここで追及したりとやかく言っても面倒なだけだからな」
「相変わらずグレン殿ですな」
「そうだな。相変わらずグレン殿だよ。というわけで俺は眠くなったからな寝るんで。サクッとナナに二つ名を授けに行ってこい」
「分かったでござる。では、お休みなさいでござるグレン殿」
「ああ。お休み」
俺はベットに潜りこみ。真希が分身状態になってから空間転移してこの部屋から出たのを見届けると浅く心地よい眠りについた。
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補足説明
天魔連盟創設者真希はメチャクチャに愉快犯です。
ガッツリネタバレなのですが。神から7つの人智を超えた力を授かっています。
七つの力はそれぞれ【真贋】【空間】【認知】【分身】【支配】【契約】の6つと。まだ明かされていない一つです。
強さ的な物で言えば7つ全て戦闘系統能力ではばいですが。主人公グレンを除き最強の存在です。といってもグレンと戦ったとしても【空間】の力で簡単に逃げれるので実質的には誰にも負けないくらいの化け物です。
実年齢を出すつもりは今の所ないですが。少なくとも300年以上の時を生き。娯楽に飢えており、倫理観は大分欠如しています。
主人公ことグレンを最強の存在にするっていうのも。最近読んだ本に毒されてやってみるかというふざけた感じです。
ただ人類が滅亡したら元も子もないので。そういう人類が滅亡するような大それたことは絶対にしません。何なら全力で止めます。
逆に言えば滅亡しない程度の無茶であれば簡単にします。
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