第33話・英雄連合

「この度は【万能の天魔】であり【消滅の天魔】であり【怠惰の天魔】であらせられる世界最強の実力を持つグレン様にお会いできたこと心より嬉しく思います」


 イトが商人の天魔を俺の部屋まで案内するや否や。商人の天魔はドアを丁寧に開けて俺にわざとらしく丁寧に挨拶をしてくる。


 因みに容姿は。何というか中肉中背黒髪黒目。

 結構若々しい容姿でパッと見た感じは20歳くらいの若者に見える。顔立ちは、まあ、そこそこイケメン?といった感じ。つまりどういう事かと言うと、そこそこ俺に似ている感じだ。


 何だろう俺を少しイケメンにした上で3つ程年取ったらこんな顔になりそうだ。


 あれだな世の中には自分と似た顔の人がいると本で読んだことがあるのだが、ガッツリそれだな。


「取り敢えず自己紹介とかは面倒だから省く。ここに来た要件を言え。要件を」


 俺はベットに座った状態で適当に手を振りながらそう指図する。


「おやおや。噂通りせっかちなお方だ。私もそのスタイル好きですよ。さてさて、要件でございますが、ズバリ私が今から作ろうと考えている英雄連合に加入しませんか?」


「英雄連盟だ?また。随分と天魔連盟に似ているな?」


 俺は明らかに不機嫌そうにそう言った。因みにこの時点で入る気はゼロだ。


「はい。その通りでございます。英雄連合とは準英雄以上の力を持つ存在のみが加入できる連合でして、かの有名な天魔連盟を真似させて、いえ。リスペクトして作らせていただきました物でございます」


「基本的な活動と致しましては我が商会の護衛任務や材料採取。道を塞ぐ盗賊の討伐や危険な魔物の討伐となっております。もちろん加入していただいた時点で莫大な報酬はお約束致しますし。何か望むものがあれば我が商会の手の届く範囲で全力を持ってお探ししお届けさせていただきます、更に何と何と、他にも特典がございまして、」


「面倒だから断る」


 俺は商人の天魔がペチャクチャ話している途中ではあったがぶち切り、そう伝える。

 だって、そうだろ?明らかに面倒くさそうじゃん?俺は面倒事が嫌いなんだよ。まあ元々入る気ゼロだったけど。


「そうですか。ではそちらのお二方。【剣舞の天魔】イト殿と【天魔】ナナ殿はどうですか?」


「グレン様が断るのでしたら私も断らせていただきます」


「ご主人様がやらないなら私もやらない」


 まあ、二人ともそう言うわな。逆に言えば俺がやってたら二人ともやってただろうな。まあそんなことはないだろうけど。


「以上が答えだ。分かったのならば出てけ。俺は本を読むので忙しんだ」


「どうやら。そうみたいですね。やはり断られてしまいましたか。まあ薄々そうなるだろうとは予想をしていましたよ。では英雄連合に加入してくれだなんて馬鹿なことは言いません。ただ今後ともよろしくお願いいたしますという意味を込めてこちらをどうぞ」


 商人の天魔はそう言って何処からともなく懐から大量の本と明らかに超一級品だと分かる調理器具に国宝レベルに指定されるであろう美しい剣。そして遠い海を越えて運ばれてくるマンゴーやドラゴンフルーツにスターフルーツといった超高級果物を差してくる。


「これは。ほんのお気持ちでございます。何。全て私の個人資産から出したものでありますし。私の資産を考えれば特に痛くはありません。どうぞ気兼ねなく読んで使って食べて下さい」


「何だ?これをやるから敵対するなか?」


 俺はドストレートにそう問いかける。


「はい。その通りでございます。そしてよければ今後ともいいお付き合いをさせていただきたく思っております」


 ペコペコと俺達に頭を下げてそう言う商人の天魔。


 うん。あれだな。今の所好感度超高いのだが。


 まず。本。これ全て俺が読みたかった本だし。中には絶版したり作者が行方不明でもう読めないと思っていた幻の本がいくつもある。

 調理器具と剣はイトにメチャクチャ刺さってるし。美味しいもの大好きなナナにこの超高級フルーツは暴力的と言って過言じゃないチョイスだし。


 なるほど。流石商人の天魔というべきか。

 上手いな。凄く上手いな。


 これは、敵対なんてするわけがないし。もし。本当に彼がヤバそうなときは面倒ではあるが助けて上げてもいい、そう思えて来たよ。何だかんだで物欲につられるのが人間というものだ。


「分かった。今後とも仲良くしていこうか。もしも本当にヤバい時はこのネズミに伝えな。俺が、いや俺達が転移魔法で飛んできてやる。天魔三人だ。国を落とせと言われても落とせるだろうよ」


 取り敢えず近くにいたネズミ眷族を転移魔法で呼び寄せて商人の天魔に渡す。


「あ、ありがとうございます」


 深々とお辞儀をする商人の天魔。多分内心では最高に上手く行ったと喜んでいるだろうな。まあ俺としても結構満足できる結果ではあったしいいけど。


「その代わり。たまに今回みたいに貢物持ってこいよ」


「もちろんでございますとも。では今後ともよろしくお願いします」


「ああ。よろしくな」


「では。私はこれで失礼しました」


 そう言って商人の天魔は転移魔法が封印されている魔法結晶を使い何処かに転移した。


 ――――――――――――――――――

 補足説明

【商人の天魔】の能力説明

 1・無限収納・・・全ての無機物と自分よりも弱い生物を無制限に自分だけが使える亜空間に無限に収納できる。

 亜空間内は時間が止まっており。絶対に劣化しない。


 2・金=全・・・この世界に存在する全ての物を金を消費して自由に買う事が出来る。

 それは世界に一つしかない宝石や絢爛豪華な城はもちろんのこと、異世界に存在する書物や電化製品に食料、果ては他人の命や自分の寿命、技能や奇跡だろうと。

 要求額さえ支払えばありとあらゆる全てを買うことが

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