第32話・商人の天魔

「あのう。ご主人様。ナナと手合わせをしてくれませんか?」


 部屋についてナナを膝の上に乗せた状態で本を読んでいたらナナからそう頼まれる。


「どうした急に?俺と戦いたいなんて?」

「ナナはご主人様の力を知りたいです。ナナはナナの敬愛するご主人様がどれだけの力を持っているのか知りたいです。だから手合わせしてくれませんか」


 上目遣いで可愛く頼むナナ。


 だけど面倒だな。普通に面倒くさいというのはもちろんあるのだが俺とナナが手合わせしたらワンチャンこの城が崩壊するレベルの戦いになるからな。


 そうなったらマジで後始末がエグイことになるからな。

 まあ、もちろんナナの願いは出来る限り聞いてやりたくはあるが。流石に手合せはキツイな。


「すまないナナ。流石に手合せは難しい。でもナナは俺の力を知りたいんだろ。じゃあこれで、どうかな?」


 俺は一瞬、それこそ1秒にも満たない時間ではあるが、今までずっと消滅させている周囲に漏れ出る俺の魔力を解放させる。

 その上で更に魔力を可視化する程込めてこの部屋を紫色の俺の魔力で埋め尽くす。


「これがご主人様の力ですか。・・・凄いです。私の想像以上です。私が10人いても絶対に勝てない位の力を感じます。流石ご主人様です」


 驚いたようにそれでいて心から俺を敬愛する感じで嬉しそうに俺を褒めるナナ。ああ。可愛いな。でも流石に10人は言い過ぎかな、3人~5人くらいが適正かな?


「ああ。本当にナナは可愛いな」

「ありがとうございます。ご主人様」


 俺はナナを思いっ切り撫でまくる。最高だ。

 さて、じゃあこのままナナを抱き枕にしてひと眠りしますか。


 そんなことを考えながら寝ようとしていた時だった。

 慌てた様子でイトが部屋に入って来る。


「どうした?イトそんなに慌てて?」

「グレン様。グレン様にお客様が来ています」


「ああ。面倒だからパスと言いたいが。イトがそんなに慌ててるんだ。相手は誰だ?」

「それが、商人の天魔です」


「は?商人の天魔だと?」

「ねえねえ。ご主人様、商人の天魔って誰?」


 俺の腕にスポット収まっているナナが不思議そうに聞いてくる。


「いいかナナ。商人の天魔って言うのはな。この世界のほぼ全ての店を手中に収めていると言っても過言ではない越後谷店という店の創設者であり。ほぼ全ての国の貨幣をその国の国家予算10年分を個人的な資産のみで保有しており。商人の天魔がやろうと思えば国の経済を活性化させることも逆に崩壊させることも簡単に行える。そしてこの世界のありとあらゆる全ての商品も個人的な趣味だけで保有しているという。まあ、ある意味での世界の支配者であり究極の収集家のような存在だよ」


「なるほど。それはとても凄い人ですね?でもご主人様の方が凄いですよね?」 


 ナナは至って当たり前のようにそんなことを言ってきた。


「どうしてだいナナ?商人の天魔はやろうと思えば我が国の経済を崩壊させて潰すことの出来る恐ろしい存在だよ」


「でも。戦ったらご主人様が勝ちますよね。それにご主人様には私とイトお姉ちゃんが付いています。多分やろうと思えば一晩で国を更地に帰すことが出来ますし。その商人の天魔?って人が何かしようとしても殺せばいい話じゃないですか?」


 ナナのその純粋無垢というべきか、ある意味狂っているというべき発言は確かに的を得ていたし。その通りであった。


 ああ。確かにそうだ。いくら商人の天魔が凄くても俺とイトとナナという天魔三人に勝てる戦力となると戦闘型の天魔ならば最低でも5人以上はいるし戦闘型以外も含めるとなると7〜10人はいるだろう。


 用意できるわけがない。

 そして俺とイトとナナの三人が本気で誰かを殺そうとしたら多分だけど最低でも4つ以上の天魔を持ち俺の数少ない友人である天魔連盟会長以外ならば全員殺せるんじゃないかな?


 ・・・・・・・・


「何か急に商人の天魔とあるのがそこまで面倒に思わなくなってきた。そうだな俺達の方が圧倒的に強いもんな。何だかんだ面倒になったら最後は全部力で解決すればいい。ありがとうナナ」


「ご主人様が喜んでくれるのなら私も嬉しいです」


「というわけでイト商人の天魔に会いに行くわ。取り敢えず商人の天魔自身を俺の所まで呼んできてくれ」

「分かりました。グレン様」


 さて、じゃあ商人の天魔とやらはどんな人間かな実に楽しみだ。

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