第31話・外伝・国王様は今日も胃が痛いようです
儂の息子であるグレンが今日、謎の少女を専属メイドとして雇いたいと言ってきた。もしこの少女が普通の女の子であれば何ら問題はない。
ただ儂の勘がというかその子の眼が明らかに常人のそれではなかった。何百という死線を潜り抜けた歴戦の戦士の眼。
仲間の死あるいは裏切りを経験したことのある冷酷な眼。そして何かにというか儂の息子を明らかに崇拝しているような盲信めいた眼をしていた。
不意につい先程【探知の天魔】から緊急で魔通話によって伝えられたことを思い出した。
「今日は王城の近くで、新しい天魔が覚醒したのを探知した。詳細な能力は分からないが少なくとも光系統の能力を持ち。年齢は10代前半の子供。それも女性である可能性が高いと。非常に綺麗な心をしていたから、もしこちら側に引き込めそうなら引き込んでおいた方が良い。当たり前だが絶対に敵対するな。多分俺よりも強い」
という内容じゃ。
そして全てが頭の中で繋がってしまった。
ほぼ100%この少女が件の天魔であると。ハア。全く持って何故グレンはこうも天魔を引き付けるのかこれで二人目じゃぞ。儂の胃の心配をしてくれないかのう。
やはり本当にグレンは天魔じゃないか?
いや儂としても信じたくはないのじゃが。イト殿に続いて二人目となると。いやはや。全く持って胃にくる話じゃ。
そんでグレンは【剣舞の天魔】であるイト殿を連れて儂に向かってきた。
本当ならば断わらせた後、どうにかしてこちらの自由に使える駒として引き込みたいのじゃが、イト殿が後ろにいる時点でその選択肢は強制的に消える。
こんなもの断るという選択肢がない。はいかイエスの二択という物じゃ。
そうしてバカ大臣が馬鹿なことを抜かしたりというのはあったが。まあ特に問題なく終わると思ったらグレンから謎の手紙を渡された。
感謝の手紙と言っていたがそんなわけがない。
それが何なのかを考えた時。
あのグレンの事だ。何か大事な事であろう。そう考えて懐に仕舞い。一人で読むことを決める。
そんな事を考えてる間に用事を終わらせたグレンは笑顔でイト殿と天魔の少女?を連れて部屋に戻っていた。
その後はいつもの様に職務をこなして、夕飯を食べて職務をこなして。そして気が付いたら夜になった。
そうして懐に仕舞った手紙を思い出して読み始める。
そこには衝撃という言葉じゃあ生温い。気が狂うような内容が書いてあった。
全文はこうじゃ。
父上へ
取り敢えず俺は天魔ね。
【万能の天魔】であり【消滅の天魔】であり【怠惰の天魔】。
多分俺よりも強い存在はいないから。まあやろうと思えば一日でこの国を滅ぼせるね。いや。一日もいらないな。多分国を滅ぼすだけだったら1時間で十分かな。
まあそれで本題があって。
多分優秀な父上のことだからナナが天魔だと気が付いてると思うよね。それは正解だよ。天魔だよ。それも光を操る万能型の天魔だよ、メチャクチャ強いね。
でまあ、ナナは元勇者ね。
えっと、今聖教国にいる勇者は偽者で本物はナナで。偽者勇者はナナが魔王と戦ってヘロヘロの状態の時に吸力の呪いをナナにかけてナナから力を奪ったて感じ。ようはクソ野郎ってことだ。
でまあ、魔王は生きてるね。
いや。魔王思ったよりも賢くて生きてたわ。ほんで多分魔王は本物の勇者しか倒せないから聖教国側がナナを連れ戻しに干渉してくると思う。
それがどんな形かは分からないけど。俺の予想だと適当に理由をつけて勇者とそのパーティーメンバーが来ると思う。
そんで。そのパーティーメンバーの中に多分【洗脳の天魔】がいると思う。
多分父上もその洗脳の天魔によって聖教国に都合に良い駒に洗脳される可能性はあるわ。まあ、それはバレた時のリスク高いからしない可能性の方が高いけど。
まあ、結局何を頼みたいかというと。
勇者とそのパーティーメンバーが来たら何かしらの理由を付けて俺もその場にいさせてくれ。そんでもって俺が勇者パーティーメンバーに握手出来る機会を設けてくれ。
まあ、そうだな。歓迎パーティーみたいなのを開けたらその場に俺も参戦して適当にファンですって言って握手するわ。
というわけでよろしく。
あ、因みに父上が俺に敵対行動を取ったり、俺に仕事を押し付けたりしない限りはこの国に留まるし、この国が天魔が必要なレベルの大問題に見舞われた時なんかは適当に手助けするから。
一応俺は結構今の暮らしが気に入ってるからね。もちろん俺が天魔だとばらしたらこの国から出てくからね。
以上が手紙の内容じゃ。
何というか何というか。うん。胃が痛いのじゃ。
グレンが天魔だってことでさえ胃にストレスかかるのに。
それが3つの天魔の力を持つ最強の存在と来た。胃が痛くないわけがないのじゃ。もしグレンの気分を損ねたら冗談抜きで1時間で国が滅ぶ。
何故儂は息子の機嫌を取らなければならないのじゃ。
ハア。更に追い打ちをかけるように。元勇者であり天魔を第二の専属メイドとして雇ったり。実は魔王が生きていたり、そんで更に聖教国が我が国に干渉をしてくる可能性まで示唆されて。
ハア。胃が痛いのじゃ。
責任から逃げ出したいのじゃ。
王を止めたいのじゃ。
思う存分戦いに身を興じたいのじゃ。
じゃがしかしそれは無理な事。
ハア。嫌で嫌で仕方ないのじゃが一つずつ面倒事を潰していくとするかのう。
ハア。本当に胃が痛い。
そして髪の毛がまた抜けていくのじゃ。辛いのじゃ。
じゃが、まてよポジティブに考えるのじゃ。ある意味では我が国に天魔が三人もついたようなものじゃからな。
ハアアア。何て言ってもそんな天魔が三人も必要なヤバい事態なんてめったな事では来ないと思うがのう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます