第9話・俺の人望なさすぎワロタ
「さてと。俺は今から敵軍に突っ込んで、真ん中に着いたら神器の力を解放させて敵兵を昏睡状態にさせてくる。そんな訳だから敵軍に突っ込むために俺を守る役目を受けたい人はいるか。先着100名だ。もちろん報酬はたんまりやるぞ」
俺はイトにおんぶされた状態でやる気なさげにそう言った。もちろん我が国の兵士達1万の前でだ。まあ結果なんて目に見えているが。
「誰がお前みたいなグウタラ王子についてくんだよ」「そうだそうだ」「そんなもの確実に死ぬに決まってるじゃないか」「そうだそうだ」「俺は戦争に来たんだ。自殺しに来たんじゃねえ」「そうだそうだ」「グウタラ王子お前一人で行け」「そうだそうだ」「大体神器の昏睡状態って本当に神器なんてお前に使えるのかよ」
「そうだそうだ」「俺達はお前を信用できない。別にお前が死んだところで我が軍は揺るがない」「そうだそうだ」
まあ、案の定というべきが罵詈雑言の嵐雨だ。つか一人ずっとそうだそうだ言ってる奴いたな。知らんけど。
ハア。でも確かにそうなんだよな。正直俺いなくても大丈夫なんだよな。
今回の目的は同盟国が帝国に攻め込まれてピンチだから援軍を出したという話だ。
帝国の兵士は5万で同盟国の兵士は3万。ただ同盟国の方が地の理もあるし守る側だから結構戦えてた。それでも戦争に明け暮れてる帝国の方が兵士全体の地力が高いもんで追い詰められた。
そこに、国境線での戦争やら魔物との戦争やらをしてて他の国よりも多くの経験を積んだ上に我が国の特産品であるミスリル鉱石と鉄の鉱石で合金を作り出しそれによって生み出された普通の剣や鎧と比べると圧倒的に高い性能を誇る武器防具を身に纏った兵士が1万も援軍に来ている形だ。
つまり。普通に帝国の5万の軍隊ならば元からいた、まあ少しは減ってるが同盟国の兵士3万と我が国の強い兵1万で多分簡単に退けられるって感じだ。
まあ大体天魔とか言う常識外の存在を除き籠城してる砦に攻めるなら3倍の数は欲しいからな。数的差はせいぜい1万、負けるわけがない。
うん。俺要らないやん。
いやまあ国王、というか父上の俺がいないと一万の兵士を出兵させられないというのと俺が神器を使えば被害が少なくなるという理由についてなんだけどさ、正直言って、一つ目は普通に今回の戦争に限り万の兵を率いる資格をある程度優秀な指揮官に与えるとかさあ、二つ目だって別に被害は増えるけど神器なくったって戦争自体には勝てると思うしさ。
少々理解に苦しむな。
というか俺の人望のなさを考えろよ父上も。それはもちろん国王という立場の人間だし俺がまさかここまで兵士達から嫌われているとは考えてなかっただろうけどもさ。
それとも何か別の目的でもあるのか?
・・・・・・・・・ワンチャンありそうだな。ハア。面倒だな。
まあ、いいや。適当に敵軍突っ込んで昏睡させて終わらしてくるか。俺の力ならば余裕だろう。
「さてと。じゃあイト。どうやら俺には人望がなくて誰も来ないらしいし。二人で行くか。あ、一応お前ら俺が敵兵を昏睡状態にさせたらすぐに敵兵を殺せるように準備だけはしとけよ。これは命令だ。守らなかったら全員処罰するぞ。といっても敵兵とにらみ合うだけの簡単なお仕事だからな。まあ頑張ってくれたまえ」
そうして俺はイトにおんぶされたままそう言い終わると、イトにおんぶされた状態でその場を去るのだった。
死ぬほどカッコ悪いかもだが、まあ気にすることはない。
――――――――――――――――――
「グレン様。一応敵軍の近くに出ましたよ。というわけで起きてください」
「ああ。そういえば俺寝てしまってたな。よく寝れたわ。ありがとうイト」
イトに起こされて周りを見渡すと。ここから数百メートル離れた所に帝国軍がにらみを利かせてながら待機している。もちろん俺とイトのことはバッチリ視界に入っていて明らかに警戒している。
それはまあ、青年がメイドにおんぶされている状態だからな不思議だろうな。でもまあ、こちらは敵対行為を取っていないのもあるからか、警戒だけで攻撃とかはされなさそうな感じやな。
「そうですか。それは良かったです。というか私、少し恥ずかしかったんですからね。グレン様が大爆睡を決め込む中。服装はいつものメイド服で腰には私の剣と神器もとい杖をくくり付けていて、何とも間抜けな恰好で周りに兵士達に不審な眼で見られながらここまで来たんですから」
少し頬を膨らませて怒るイト。ちょっと申し訳ことしたなって思い一応謝る。
「ああ。それは申し訳ない。というか確かにそうだな。俺一応王子だけど、王子としての活動せずに引きこもってるから俺の姿知ってる人いないな。だから普通にメイド姿の人が青年背負って歩くという明らかな不自然な状態になってるな」
「そうですね。まあ気にしても仕方がないですし。サクッと任務こなしていきましょうか」
「ああ。そうだな。というわけで怠惰の権能発動・【強制怠惰】我が前に立ちふさがりし敵達よ。怠惰となり我とイトの事を認識するな」
その瞬間敵兵が俺とイトの事を一切見向きもしなくなった。あれだけ警戒をしていたはずなのに。一切だ。まるで元々そこに何もなかったかのように。
「グレン様。もしかして今のはグレン様のお力ですか?」
イトが俺の力にかなり驚いたように言ってくる。まあ驚くだろうな。自分でも凄い力だと思うし。ハッキリ言って化け物だ。
「ああ。そうだよ。取り敢えず効果は数時間は持続するし。ゆっくりと敵兵のど真ん中に行こうか」
「もしかしてですけど。こんな神器なくてもグレン様がやろうと思えばここにいる敵兵全員を昏睡に近い状態にすることは可能ですか?」
「それはもちろんそうだよ。でもそれをしちゃうと結構力を使って疲れる上に明らかに不自然だからしないよ」
疲れると言ってもほんの少しだけ夜更かしをしたなって程度の疲れだけど。まあそれは言わないでおこうか。
「そうですか。グレン様って私の想像以上に凄いお方だったんですね」
「それはそうだ。言っただろ俺は世界最強だって。というわけでこのままおんぶした状態で目的地まで歩いてくれ。その間は寝る」
「寝るんですか。相変わらずグレン様ですね。分かりました。では着いたら起こしますね」
「ああ。よろしく頼む」
俺はそう言ってイトの背中で気持ちよく二度寝を始めた。
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