第5話・結成

「あーっ、疲れた疲れた!」


日が沈んで間も無い時刻。

俺は今日の仕事を何とか終え、ギルドで酒を飲んでいた。


今日の稼ぎは10万。

先輩と組んだため効率は上がったが、命をかけてこれは安い。


と、ギルドの扉が開いて先輩が入って来た。


「あっ、先輩。これ、半分の5万っス」


「おう、ありがとよ。……おっと、忘れてた。パーティーの申請しなきゃいけねえな」


そう、俺達はパーティーを組む事になった。


今日一日パーティーを組んで、この人は強いと分かった。

たまに余計なことをするが、充分お釣りが来る。大丈夫だ。

……大丈夫な筈だ。



え?大丈夫だよな?



と言う事で、俺達は申請をしに受付へと向かった。


「おい、この人とパーティー組むから申請頼む」


「承りました。あと、さっきから胸をガン見するのはやめて下さい。出禁にしますよ?」


そう言い、受付は書類を作成する。


「パーティー名は?」


「保留。……おい、パーティー名保留にすんな、嫌がらせやめろ」


俺は受付を離れると、酒を注文する。


「やっぱ前衛が必要不可欠だな。おっと、オレは用事があるからここで失礼するぜ」


「お疲れさまっス」


そう言い合う俺達を見て、1人の少女が驚愕する。


「レアルがパーティーを組んだ……!?あんなのと組む人なんていないと思ってたのに!」


「さっきから何だテメエ、とりあえず服脱げや!今すぐにだ!俺を侮った無礼、身体で分からせてやっからよぉ!」


朝から言いたい放題な見知らぬ少女に、俺の堪忍袋の緒が切れそうになる。

振り向いた時にはもう走り出している少女に舌打ちし、俺は運ばれて来た酒を一気に飲んだ。



***



翌日。

俺は昨日に引き続き、朝早くからギルドに来ていた。

と言うのも、


「調子はどうだ?」


「最悪っスよ、まだ寝てたいのに」


先輩に叩き起こされた。

前のメンバー達もこんな事しなかった。


「あのレアルが2日連続で早起き!?吹雪とか土砂崩れでも起こるんじゃない?」


「いい加減にしろやぁ!お前ふざけんな、今日はもう許さねえぞ!」


毎度の如く少女を追い払い、体に鞭打って立ち上がる。


「雪解けの季節で繁殖期が近いな。おっとレアル、魔力切らさない様にポーション買っとけよ」


「借金返済と酒代に全部使っちまいました」


「お前ならそう言うと思ってたよ。どうにか節約しろ」


俺の思考回路を理解したらしい先輩に続き、俺は目を擦ってギルドを出た。




***




町を出る時、門番から忠告された。


「気をつけてください。はぐれの白狼が近づいているらしいので」


白狼は冬のイメージが強いが、全然春でも活動する。

はぐれの個体は1匹しか居ないため、冬眠する始末だ。


「1匹でもD級相当の力がある奴っスよね」


「まあ、近づかなきゃ良い話だ。出くわす事なんてそうそうないからな」


そう言って歩き出す先輩。そうだよな、近づかなきゃいいよな……。


あれ?

なんかフラグ立たんかった?




***




「あっつ……」


草原を歩きながら、俺は呟く。


「妙だな。魔物の出現率が下がったような気がする」


先輩が言う通り、あまり魔物と出くわさない。

かれこれ1時間は収穫なしだ。

そんなことを言っていると、突然__。



「きゃあああっ!」



………



「おおおっとぉ!どこかの少女が傷つけられない程度に都合よく襲われている気がして来たぁ!」


「おい、ちょっと待て!」


先輩の制止を振り切って、俺は声の主の元へ駆け出す。

オイオイ、早速フラグが立ちやがったなあ!

俺が丘を越え、現場に駆けつけると______。



血に塗れた女騎士が、白狼相手に倒れ伏していた。



……うん。



もう死んでるくね?

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