第2話・第三者ザマァは現実を教えてくれる
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俺はさっき、パーティーを追放された。
ちょっと借金したり、冒険サボって酒飲んだり、セクハラや喧嘩してただけなのに。
と言う事で、俺は借りている安宿に戻っていた。
石畳の道を歩きながら、俺は悩んでいた。さっきから、デジャヴを感じる。
「今の俺に、妙な既視感が……。でも、追放なんて見た事ないし……」
となると、後は本か?
俺が読んだ本とかの中に、何処かで……。
「あっ!何で忘れてたんだよ!裏勇者伝説だ!」
思い出した俺は、今まで思い出せなかった事を悔やむ。
裏勇者伝説とは、良くある一般的な勇者の童話とは違う、この国では一部の人しか知らない真実だ。
俺がそれを知っているのは……いや、いいだろう。
簡単に言うと、勇者は道中追放され、その後覚醒する。
新たなメンバー(もちろんハーレム)を集め、魔王と呼ばれる者を瞬殺。
今は魔族と人族は良好な関係を保っている。
つまり、同じく追放された俺は__________
「俺もチートを手にするかもしれん!よし、まずはステータスの確認だ!」
俺はまたもや踵を返し、ギルドに向かって走り出した。
***
ギルドにに戻ると、もう元パーティーメンバーの姿は無かった。
俺は近くにいる悪友に聞く。
「おい、あいつらどこ行ったか知ってる?」
「パーティーの奴らなら、とっくに出てったよ。お前、追放されたんだろ?ザマァァァ!!」
「う、うるせえ!お前がザマァしてどうする!」
笑い転げる悪友を置いて、受付の方へ向かう。
ステータスとは、人の能力を無理矢理強引に数値化したガバガバシステムである。
ガバガバすぎて今更当てにしている奴などいないが、単純に肉体の変化を見たい今の状況にはうってつけだ。
レベルもあるが、レベルが上がっても別に脳内アナウンスが流れたりしない上、存在の意味がもうほぼ分からない。
それらは、ギルドでカードを機械にかけて初めて確認できる。
俺は職員に、冒険者の身分証カードをバンと叩き付ける。
「おい、カードの更新を頼む!」
「承りました」
職員は、カードを機械の中に入れてボタンを押す。
冒険者ギルドと言う一大組織は、この国の文明レベルに似合わない物を持ってたりする。ある国から輸出されたものだ。
「では……」
「手を置くんだろ」
機械の上に手を置く。
やがて、機械からカードが出てくる。あの電車のカードを取り出す時に似ていて懐かしい。
「どうぞ」
差し出されるカードを取り、目を通す。
そこに記されていたのは______。
「へっ?」
………………いや、
「悪化してるじゃねえか!」
記されていたステータスの数値は、冒険者の中でもかなり下の部類に入る。
しかも、ロクに冒険してなかったせいで持久が大幅に落ちている。
おいふざけんな、チートはどうした。
いや。成長速度アップとか能力が付いてる可能性も……!
まあ元々、ステータスなんて当てになんないしな!
となれば、することは一つ。
「よし、冒険しよう!」
そう決め、俺は背中の杖を握って立ち上がった。
***
この街の壁の外には、青い草原が広がっている。
街は弱い魔物しか生息しない地域に造られているので、当然ながら周りには雑魚が多い。
そんな草原には複数の冒険者達がおり、俺もその1人だった。
俺が今相手にしているのは、4体の小さなスライム。
スライムは、液体状の透明な体に、真ん中にある赤い核で構成された魔物だ。
ただし、草や土を取り込んでいるため、正直言って汚い。
「オラッ!クソ、中々当たらねぇ……!」
縦横無尽に飛び回るスライム達に、俺は火の球を放っていた。
何とか2体を散らしたが、1体が勇敢に体当たりして来た。
「痛っ!コイツ……!」
腰に付けているダガーで反射的に斬り飛ばし、残りの1体を火球で散らす。
「ハァ、ハァ……体力が持たねえ……ロクに外出て無かったからな……」
草原に思わず座り込み、息切れを収める。
「おい、チートはどうした」
むしろ弱くなってるだろこれ。
いや、発動条件とか成長速度アップかもしれない。
「とりあえず、攻撃全パターン試してやらぁ!魔術師舐めんなや、皆殺しじゃあああああっ!」
そう言い、俺は遠くに見える兎に向かって走り出した。
***
「ハァ、ハァ……。クソ、魔力切れそう……」
数日ぶりに走り回り、もう体がガタガタだ。
赤い空を背に街を歩き、目の前の大きな建物___ギルドに入る。
頼む……成長速度アップ来い!カモン!
祈るような気持ちでカウンターへ一直線に向かう。
「頼む」
逸る心を抑え、カードを出す。
「どうぞ」
カードを奪うように取り、食い入るように目を走らせる。
そこには______。
「変わってねえじゃねえか!」
全然変わってなかった。
おい、マジかよ。スライムにも手擦るんだぞ?
いやね?元々、そんなに期待してなかったよ?
勇者の伝説とか、こじつけが過ぎるよ?
でも、ワンチャンあるじゃん!賭けてみたくなるじゃん!人生はギャンブルだもの!
……とは言え、1人ではもう限界が近い。__そう、1人なら。
となれば______。
「明日は、パーティーメンバーを集める!」
そう決意し、俺は今日の成果の換金へ向かった。
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