第24話 逝去社員のご遺族へお支払いされるもの

 今回はちょっと、ね。

 できれば知らずに済ませたいような内容ですよね。

 元気に働いて、転職するにしても定年退職を迎えるにしても、その場合には全く知る必要の無い内容なので。


 ですが。

 人事にいると、しかもJ会社のようなかなりの社員数を抱える会社の人事にいると、年に10名~20名の社員は、毎年在職中にお亡くなりになります。

 ここに配属された当初はね。

 なんだかショックでしたよ。

 特に、ご遺族から送っていただいた死亡診断書を見てしまった時なんかは。

 なんせ、わたしが一番最初に対応した逝去社員は、自死された若い女性の社員でしたから。

 会社施設からの転落死、だったそうです。

 でもね。

 こういう言い方も何ですが。

 1件1件に心をひっぱられていると、ハッキリ言ってメンタルが持ちません。

 顔も知らない他社の社員が亡くなった。だから、ご遺族への対応を行う。これが、我らの仕事。

 そう、割り切らないと。

 そして、馴れて来てしまうものなんですよね。

 ・・・・偶に、業務の関連でやりとりをした記憶がある方の訃報に接すると、やっぱりズンっと、気持ちは重たくなりますけどね・・・・



 さて。

 切り替えますか。


 それぞれの会社の規則にも寄るとは思いますが、逝去社員へは、会社から様々なものがお支払いされます。


 ●お香典

 ●弔慰金(見舞金/保険金)

 ●退職金

 ●未払い給与(含:残業代)

 ●所得税還付金


 といったところが、主なものでしょうかね。

 そして、逆にご遺族からお返しいただかなくてはならないものもあります。


 ●負債(会社から借り入れをしていたローン等)

 ●支給済みの交通費(未使用分)


 といったところですかね。


 そして、これも重要なところなのですけれども。

 お支払いするもの、お返しいただくものは、それぞれご遺族が異なるケースがあります。


 給与関連・・・・法定相続人

 退職金関連・・・・労働基準法に定める相続人


 多くの場合、上記の相続人は同一のご遺族です。

 ただ、稀に異なる場合があります。

 その場合は、


 給与関連 ⇒ 法定相続人のご遺族へ

 退職金関連 ⇒ 労働基準法に定めるご遺族へ


 となります。負債もまたしかり。


 お香典・退職金・未払い給与 はまぁ、お分かりかと思います。

 弔慰金?所得税還付金?なにそれ?

 な方もいらっしゃると思うので、ご説明を。


 弔慰金と呼ばれるものの多くは、保険金ですね。

 会社が、対象を社員、受け取りを遺族として、会社が保険料を支払って掛けている保険があるのです。そして、もしその社員が亡くなった場合には、保険会社から支払われた保険金を遺族へお支払いする、というもの。

 多くの会社はこの制度を利用しているのではないかと思います。

 わたしが今まで勤めていた会社は全て、この制度を使用していました。

 福利厚生の一環なんでしょうかねぇ?

 ちなみに。

 お亡くなりになった場合以外では、在職中に高度障害となってしまった社員にも、この保険金はお支払いされるはず。

 ただし、高度障害となって保険金がお支払いされた社員が万が一その後亡くなってしまった場合には、いわゆる『弔慰金』の支払いは無くなります。


 所得税還付金とは、平たく言えば「年末調整の時に返ってくる税金」と同じです。

 月々のお給料は、月ごとに所得税が徴収されています。

 これは、1年間このお給料が支払われ続ける前提で計算されている税額です。

 ところが、年の途中で逝去されている方は、当然1年間のお給料は支払われていないのですから、所得税としては取られすぎていることになります。

 そこで、正しい所得税を計算して、取り過ぎていた所得税をお戻しする。

 これが、所得税還付金です。



 ご家族を亡くしたご遺族にとっては、心痛でそれどころじゃないと思います。

 おまけに、悲しんでいる間もなく、色々な手続き(行政関連の)を行う必要もありますし。

 そこへ、会社からこのような書類が わさっ と送られて来たとしても、正直しばらくの間は、見る気にもならないでしょう。

 書類を発送後、しばらくご遺族からご連絡や書類のご返送が無いことも、良くあることです。

 当然のことだと思います。

 ですが、貰えるものは貰うべし、です。

 気持ちが落ち着いてからで構わないので、書類に目を通して、必要書類をご返送さえいただければ、我らは速やかにご遺族へのお支払いを実行します。

 逝去された社員が、一生懸命働いて得たお金、ですからね。

 何の遠慮もせずに、しっかり受け取っていただきたいです。



 しかし。


 わたしはものすごーく、不満なのですよ?J会社に。

 この、ご遺族宛の書類の取りまとめから発送から、ご遺族とのやりとり。

 ぜーんぶ、W会社の社員が行っているのです。

 ただし、偉い役員の方が逝去された場合を除いて。

 そう。

 偉い役員の方が逝去された時だけは、J会社の社員が対応しているのです。

 こんなこと。

 J会社社員のご遺族がお知りになったら、どんな気持ちがするのでしょうね?

 書類の取りまとめくらいは、しますよ?単純な、事務ですから。

 ですが、ご遺族とのやりとりの窓口になることすら拒否するって、どういう神経?

 一生懸命働いてきた社員を、大事に思っているという態度が、1ミリも伝わってきません。

 この業務を受けるにあたって、わたしはちゃんと伝えたのですよ、J会社の人事の当時の責任者に。


 せめて、発送者名だけは、J会社社員のお名前にした方がいいのではないですか?


 って。

 それも、拒否されました。

 この業務はW会社に発注したものだからと。

 あーあ、やだやだ。

 業務の切り分けなんて、簡単にできるのに。書類の作成と、書類の発送。ほら、明確に切り分けられるじゃないですか。

 それさえしないなんて、ただご遺族とのやりとりが、したくないだけでしょー、どうせ。

 本当に、『社員は会社の宝』とか、どの口が抜かしとんじゃいっっ!って、思ってしまうのも、仕方ないと思いません?

 J会社の人事がこんなんだったら、W会社の社員のわたしが、J会社社員の訃報に触れても、イチイチ心を痛める必要は無いなぁ、とか思ってしまいます・・・・

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