第18話 寝ぼけた夫婦(配偶者控除)

 今回は、『配偶者控除/配偶者特別控除』のお話です。


 皆様はもうご存知とは思いますが・・・・

 夫が会社勤めをしていて、妻がパート勤めをしていて且つ不動産収入がある場合。

 年末調整/確定申告の手順としては


 夫⇒

 会社から支給された年収について、会社で年末調整を行い、会社が所定の所得税を納める。

 妻⇒

 ①パート先から支給された年収について、パート先で年末調整を行い、パート先が所定の所得税を納める。

 ②パート先で発行された給与所得の源泉徴収票に記載の金額と、別途得た不動産収入を元に、確定申告を行い、不足分の所得税を納税する。


 となります。

 妻は、2箇所以上から収入があるため、確定申告を行う必要があるのです(収入の金額にもよるみたいですけどね。詳細はお知りになりたい場合は各自お調べくださいね。わたしは確定申告についての仕事はしていないので、詳しくないので)。

 で。

 この時の妻の確定申告というのは、あくまで【妻の得た収入】を申告するものであって、夫の収入は全く関係ないのです。

 夫を【配偶者控除/配偶者特別控除】の対象としていなければ。

 ・・・・まぁ、このケースで夫を【配偶者控除/配偶者特別控除】の対象として申告する人はいないと思いますが。


 この前提条件を踏まえて。


 先ごろ、ある社員に対して税務署より【是正通知】が来てしまったのですねぇ。


「お前んとこの社員、所得税間違ってねーか?確認して不足分納めろや」


 という、あの通知です(笑)。

 まずは年末調整の申告状況を確認したところ、この社員、【配偶者特別控除】を申告していました。

 ですので、おおかた配偶者の年収が、予想より少しはみ出してしまったのだろう、と踏んで確認をするために、配偶者の年収が分かる書類の提出を求めました。

 求めに応じてこの社員が提出してきたのは、妻のパート先から発行された源泉徴収票。

 念のため、


「配偶者様は、他に収入はございませんか?」


 と確認したところ。


「ありません」


 と。

 ええ。

 確認メールにはっきりとそう記載してありましたとも!

 確かに、ほんの少しばかり年収がはみだしていたので、その年収を元に正しい【配偶者特別控除額】算出しなおし、正しい所得税も算出しなおして、差額を税務署に報告しました。


 やれやれ、一件落着。

 と、思いきや。


 数日後に税務署から、電話が掛かって来たのです!


「●●さんの税額なのですが、こちらで把握している額と異なります。配偶者の年間所得をいくらで計算していますか?


 正直、税務署にも腹が立つんですよね。

 分かってるなら、おんどれがやらんかいっ!

 だいたい、確認資料の例として「源泉徴収票」を挙げている時点でおかしいだろ。最初から正しい金額が確認できる(おそらく、税務署での確認にも使用されている)「所得証明」にすりゃいいじゃないか。そりゃ、取り付けにお金はかかるけれども。

 と。


 そんなことはまぁ言えないので(別に言ってもいいんだけど)、仕方なく、対象者にもう一度確認を取って


「源泉徴収票ではなく、市区町村で発行している【所得証明書】を提出してください」


 とお願いしました。

 これだと、複数個所から収入がある場合でも、合算された所得が確認できるのでね。

 そして、提出された書類を確認してみれば。

 なんと。


 配偶者には、不動産所得が160万以上もあったのですよっ!


 お前っ!

 他に収入は無いと言って無かったかっ?!

 嘘吐きめっ!


 本当に、腹が立って腹が立って。

 またもや色々計算しなおして税務署に報告したところ、やっと税務署からのOKも出て、一件落着の運びとなったのでした・・・・


 もちろん、差額の所得税は対象者から追徴するので、その旨お伝えしたところ、なんとも寝ぼけた回答が。


「妻はきちんと確定申告を行っているので、報告する必要は無いと思っていました。妻もそう思っていたようです」


 ・・・・はぁっ?

 わたしは妻の所得税が適正に納められているかを確認しているのではないのだよ。

 お前の所得税が適正に納められているかを確認しているんじゃいっ!

 だいたい、【配偶者様に他に収入はありませんか?】と確認したよねぇ?

 なんでその時に言わないんじゃっ、阿呆っ!

 お前のお陰でどんだけ我らの仕事が増えたと思っとんじゃいっ!


 まったく。

 妻のものは俺もの。

 的な、前時代な考え方、いい加減無くならないものですかねぇ?


 いやいや。

 考え方云々よりも。

 お前、入社して何年経つんだよ?

 毎年年末調整の説明を丁寧に掲載して、配偶者控除に関する税制が変わった時には、ものすごく丁寧な説明書も作成したはずだぞ?

 なんも読んでねぇな?

 というか。

 不動産所得が160万以上もある妻なんか、税金の控除が受けられる訳が無いだろうが。

 配偶者控除というのは、年収の低い配偶者を養うために免除される税金の制度だぞ?

 J会社の社員てことは、それくらいは理解できる頭は持っているはずだろうが。

 ちゃんとそのいい頭使って理解しやがれ。


 はっ。

 いかん、あの時の怒りが甦ってつい、言葉遣いが・・・・(・・;)

 まぁ。

 これでも抑えている方ですけど(爆)。


 本当に。

 人様の年末調整とは無縁の部署に異動したいっす。

 何年も異動願い出しているのに、ガン無視なんだもんなぁ、うちの会社・・・・

 ストライキでも起こしてやろうかしら。

(即刻クビになるのが、オチな気もするけど)






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る