陸編6

 海斗が私を?

「ごめん、ちょっと見せて貰えるかな?」

 あまりの事で放心状態だった私に、樹音先生が優しく話し掛けてきた。

「あっ、すみません。でも、もう大丈夫ですから」

 さすがに若い男の先生に診てもらうのは、恥ずかしい。

 樹音先生も気付いたのか。

「じゃあ、暫くここで休んでいく?」と言った。

 ベッドで横になりながら樹音先生を見て居ると、次から次へと生徒が、先生までやって来る。

 多分、樹音先生目当てかな? 狭い保健室はすし詰状態に。

 嫌な顔ひとつせずに皆を診て回る姿に周りの人達は、ただポーッと見つめている。


「樹音先生。私、もう大丈夫ですから」

 何時までもここには居られない。先生に声を掛け保健室を出て行こうとしたら。

「心配ですね、ちゃんと病院へ行くんですよ」と言ってくれた。


 教室に入って行くと、クラスメイト達が私に群がり話を聞きたがる。

「ねぇねぇ、樹音センセって独身かなー」

「分かんないけど。優しい先生だよ」

 クラス中の女子が注目してる樹音先生の甥が海斗たちなんて、なんか信じられないな。


「桜塚居るか?」

 担任の先生に呼ばれ、病院へ行って来いって言われた。

 どうやら、樹音先生が言ったらしい。

 仕方なく帰り支度をして校門を出た所で意外な人物に会った。


「送ってくよ……」

 海斗が声を掛けて来た。

「樹音先生に言われて来たの?」

 聞くと、違うと言われた。後ろを黙々と付いて来る海斗。何だか、安心している私がいた。









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