陸編4

 あったかくて、きもちいい。

 耳にきこえてくる声、王子さまの声だ。

 ここは……どこ?

 海のかおりがする、はやく目を覚まさなきゃ。

「あ、美海、大丈夫? びっくりしたよ、急に倒れるんだもん」

 香苗が心配そうに私を見てる。

 でも、あれ? 変だな、香苗よりも私の目線のほうが上だよ。

 それに、なんだか不自然な姿勢――??

 横を向いた私の目に飛込んで来たのは、海斗の横顔。

 海斗にお姫さまだっこされている私。

 口をパクパクする私に、海斗は微笑んだように……見えた。

「美海ちゃん。いま保健室に向かっているからね」

 海斗の友達の星弥が優しく話しかけてくる。

「あっ、あの……もう、大丈夫だから。降ろしてくれ……る?」


「嫌だ」一言そう言われてカチンときた。

「なっ、なによ! 助けてくれたのはありがたいけど降ろしてって言ったら降ろしてよ!」

 期待した私が悪い、王子さまの訳ないのに。


 でも、何故か似ている様な気がしてつい。 私に逢いに来てくれたのかと思っちゃったから、その幻想が醒めた分、腹だたしくて。

 拳でポカポカ海斗を叩く、泣きながら。

「もう……ひっく……放し……てよ……だい……じょうぶ……」

 海斗は涙を見せまいと下を向いたままの私を、保健室まで運んで行った。


「先生、あれ?」

 香苗が保健室に飛込んで、保健の先生を見たまま固まってる。

 何故なら今までの女の先生ではなくて若い男の先生がいたから。


「どうしたのかな? こんなに大勢で」

 白衣を着ているから、新しい保健の先生なのかも?

 海斗の腕に力が入った。目を細め、まるで睨み付ける様な顔。

 何で? 知り合いなのかな?







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