陸編3

 私の記憶の中の王子さまは、金色の髪に海の色よりも深い碧だったはず。

 だけど今、目の前にいる男の子は、日本人だから当たり前なんだけど、黒い髪と同じ色の瞳。

 でも、言葉とは裏腹にその瞳は優しく、どこか懐かしさを感じる。


「なっ、なによ! 誰がアンタの裸なんか。行こ、美海」


 香苗が私の腕を掴み、引っ張って行こうとするが足が動かず、目を反らす事も出来ない。

 私達は見つめ合ったまま、かな縛りのようになっていた。


「海斗(カイト)なに見つめ合っちゃってんの?」

「……星弥(セイヤ)」


 その途端、止まってた時が動き出した。

 香苗に引っ張られるままにその場から離れる。後ろを振り返りながら。


「ふーん、あの子なんだ。リオンの言ってた子って」

「星弥、分かってるな?」

「大丈夫だって、今の姿じゃ分かりっこないさ」

 星弥と呼ばれた男は、楽しそうに笑っている。海斗(リオン)は不安になった。


(コイツ、面白がってるな)


「さあ海斗、教室に戻ろうぜ」


 僕は溜め息をひとつ付きシャワーを浴びに行く。


「香苗、香苗ってば。どうして、そんな怒ってるの?」


 結局、水着を着替えるためにシャワー室まで香苗は私を引っ張って来た。


「アイツってば、本当あんな奴だとは思わなかったよ」


「香苗、あの子知ってるの?」


「私のクラスに先週、転校してきたばっかだよ。あの一緒にいた奴と二人で。いい奴だと思ったのに……」


 着替えを済ませ、教室まで二人で歩きながら香苗が話してくれた。

 香苗の教室まで来た時、さっきの二人が女の子達に囲まれているのが見えた。


「ウチの教室では優しくて、かっこいいって人気があんだよね。でも、何で美海にあんな事言ったんだろ?」


 香苗の言う事が段々聞こえなくなって来て、目の前が暗くなった途端、私の意識が途切れた。









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