海編9

「さあ、忙しくなりますよ。あなた達も何時までもボンヤリしてないで、早く支度して下さいね」


 魔法使いは何処か浮き浮きした調子で、僕達を残して小屋から出ていった。

 しばらくして戻って来ると、のんびりと言う。


「約束の時間は過ぎてるのに遅いなぁ。ん~困った」


 僕らは顔を見合わせて、?マークを出した。


(約束って、誰か来るのかな?)


 ここは海の釣り客が、軽く休憩を取るための小屋らしい。

 所々に釣竿や網などが散乱している。

 一体、誰が来るというのだろう? セイヤなどは、我関せずといった感じだが、僕は心配でドキドキしていた。

 と、いきなりドアが開き、二十代半ば位の男の人が、入って来るなり魔法使いを抱きしめた。


「セルジュ、久しぶりだな! 元気にしてたか?」


 魔法使いは、にこやかに微笑んで為すが侭になっている。


「無理なお願いを聞いてくれて、ありがとうトミー」


 トミーと云う人は、僕達を見て頷き言った。


「もちろん、セルジュの頼み事ならどんな事だって聞くさ。この子達も人魚なんだろ? ちゃんと日本へ行ける様に、手続きはしてあるからな」


 最後の方は僕達に向かって言った。

 悪い人じゃなさそうで僕はホッとして、お礼を言う。


「まあ、良いって! 他でもない親友の頼みだし、事情も聞いて知ってるから」


「トミー、皆元気でやって居るのか? 先生方は?」


「おう、皆元気だよ。モン先生なんか逆に若帰った」


 二人和やかに話は弾み、気が付いたら外は薄暗くなってきた。


「今夜は俺の家に泊まって、明日出発して行きなよ」


 トミーさんに言われ、僕らは泊まる事になった。

 美海、やっと来たよ。もう少しで君に逢える。







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