海編8
美海、もし僕が違う姿になっても、前と変わらず微笑んでくれるだろうか?
「おい、リオン!」
セイヤが僕を呼んでいる。
目を開けたら見知らぬ若い男が、心配そうに僕を覗き込んでいた。
頭をひとつ振り、セイヤを捜す。
と、目の前の男が、溜め息を付き話し掛けて来た。
「オレだよ! オレ」
ポカンと口を開けていると、セイヤの声をした男は笑い出す。
「魔法使いが言ってただろ? ペ・ナ・ル・ティだよ。それに、お前だって……」
そう言って鏡を僕に突き出した。そこに居たのは、見知らぬ顔の美海と同じ、髪と瞳が黒い男だった。
「これが……僕?」
姿かたちがまるで違う。声まで……こんな。
「リオン、その格好じゃ『僕』は止めた方が良いぜ」
オカマみたいで気持ち悪い……
セイヤがそう言うのも、分からなくは無い。
年齢は同じ位でも、男らしい整った顔立ち、以前の僕とは違うタイプだ。
「セイヤは、余り変わらないのに何故、おれだけ? これじゃ美海が僕だって分からないよ」
「だから、ペナルティだって言ったじゃ無いですか」
後ろから突然、声を掛けられてびっくりして振り返ると、やっぱり知らない男の人が居た。
「わたしですよ。魔法使いです」
僕と一緒で姿かたちがまるで違う。
やっぱり髪と瞳の色で。それに何やら鼻の上に硝子みたいな物が2つ乗ってる。
「眼鏡と云う物です。これが無いと良く見えないのですよ」
さっきから感じた違和感がやっと分かった。
魔法使いは言葉使いまでもが変わってる。
「何で俺は、大して変わらないのかな? 姿かたちとか声とかも」セイヤが言う。
「分かりませんよ、人によって変化が違うのですから。幾ら鈍いあなたでも、他に出て来るかも」
そう言って魔法使いはクスリと笑った。
この時は、魔法使いの言葉が、とんでもない出来事の始まりだとは、まだ気が付いて無かったんだ。
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