【2】前篇
「あの……。宜しかったら一緒に依頼をしませんか?」
「あ……あぁ。確かに、それもいいな……。じゃあ、今日はまずこの森での薬草採取クエストにするか……。」こうして、俺達は近くの森に向かい、依頼されていた素材を集めたのであった。……しばらく時間が経ち……夕方頃になって、街に戻る途中でモンスターに遭遇してしまい……戦闘を行う。
そして……少しピンチになった時に、俺達は突如現れた何者かに救われることになる。……そこには俺と同じような見た目の男の子が剣を振っている姿が見えたのだった。
「ふぅ……。よし……。こんなもんか……。後は……」
と呟いた後に俺達の方に近づいてきて話しかけてくる。……彼は俺達に怪我がないか確認した後に……。
「君達……無事で良かった。僕は、ロイド。よろしくね。……それでこっちにいるのが僕の「相棒」のフェンです。」と言って自分の「契約獣」であろう動物を見せる そして、「ちょっと……失礼するよ……。」と言って、手を当ててきて……【解析】スキルを使って調べてきた。その光景を見た俺は……
(あ……。【鑑定】とか使える人は……相手のステータスを見ることが出来るのが普通なんだな。)と、思ってその様子を見ていたが、この世界に転生して……初めて【鑑定(モノクル装着時のみ使用可・【技術伝授】+【錬金術師】により使用可能・【解析】・【アイテム収納】などの使用が出来ない場合は見ることが出来ないようになっている。)」という項目を見つけたのだった。……しかし……俺がそれを考えている間もずっと彼の行動が続いていたのに気づいたのは、彼に急に抱きしめられた瞬間だった……。「えっ!?ちょ!いきなり何を!!」と、声を上げた瞬間……。
突然意識を失ってしまう……。
次に目が覚めた時はベッドの上だった……。隣にはリリスがいて……。「あ……あの……。大丈夫ですか?」と心配してくれていたので、「あ……あぁ。」と答えると、彼女は「そうですか……。良かった……。ごめんなさい……。」と言われてしまう。
俺は彼女に何故謝られているのかが分からず「どうして……。」と言うと、彼女は顔を真っ赤にさせながら「いえ……何でもありません……!あ……あの!もうすぐで、お父様が来ると思います!では!お邪魔なようなので……私これで!……また後でお話ししましょう!」と言って部屋から出て行った。そして、扉の前に立つと何かをブツブツと言っていた。……おそらく「お父さんに変なことを言っちゃったよぉ……。どうしよう……。」みたいなことを考えていると思う……。……数分くらい待っているとノックされる。そして「入るぞー……。」「あ……。どうも……。初めまして……。ロイドといいます。」と入ってきたのは、金髪碧眼の綺麗な女の人だった。
俺は……彼女の自己紹介を聞いて「あっ。この人が、俺の義母になる人なのか……。」と思うと同時に、彼女の瞳に吸い込まれそうな気持ちになってしまう。
彼女の雰囲気はなんとも言えない感じだったが、不思議と落ち着く感じがした。俺は、「これから、息子としてよろしくお願いします……。」と言うと、「えぇ……。私はあなたの母親になるのだから……気軽にお母さんって呼んでくれていいのよ……。まあ、そのうちに慣れてくれるでしょうし……。こちらこそ、よろしくね。」と言われ、俺は彼女と挨拶をしたのだった。それから、俺は色々と説明を受けたりしながら過ごすことになるのであった……。……数時間後……。色々と質問をしている内に気がついたのだが、どうやら俺はまだ赤ちゃんになっているようだ。まあ、仕方ないと言えばそれまでだが……。俺は、今の時点でもある程度知識が有る状態で話が出来たりするから良いけど……。まあ……赤ん坊になっているとはいえ色々と話をすることが出来るというのはありがたいことだなと思いながら話を続けるのであった。ちなみに俺はリリスのことを母親と呼ぶことにしていた。
理由としては彼女が呼びやすいからだ。俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれた方が違和感が凄いが、まあ、気にしないことにしよう。そして……今の状態はどうなっているのかということについて教えてもらうと、まずこの世界では魔法が存在しているとのことだった。俺も、さっきの戦闘の時に使っているのを目撃している。……あの子……。結構強いのかもしれない。そして、俺は「魔法」についても聞いてみた。すると、この世界は、基本的に火、水、風、土、光、闇の属性が存在するようで基本的には、どの属性にも適正があるらしい。
ただ、稀に全種類に適正を持っている「無属性の魔法使い」もいるとのこと。ただ、俺のように全ての属性に適性のある「魔法」を使うことが出来る者は珍しいらしい……。そして、俺はその話を聞き終わる頃には、「魔法」についてのある程度の情報を得ていたのだった。俺の場合は……「雷」が一番使いやすいみたいだ。これは、さっきの戦いで使ってる姿を見てたし……。でも、他の属性のことも一応覚えておくことにしたのだ。ちなみにこの世界にはダンジョンが存在していて、そこを冒険者が攻略して素材を売ったりして生活している人達が多いということだった。他にも色々な話を聞くことが出来た。俺は、この世界で生活していく上で必要なことを教わり、さらに……ロイドさんの人柄の良さもあり、すぐに信頼することができたのであった。……ちなみに俺の年齢は10歳ということで落ち着いたのであった。まあ……妥当な年齢だよな……うん……。
そして……この日からロイドさんやリリスと一緒に暮らしていくことになるのである……。ちなみに俺はロイドさんのことも家族だと思えたし……リリスの事もすぐに「妹」として受け入れることが出来たのである。……リリスも俺の事を「弟」と思ってくれたらいいな……。と願いつつ日々を過ごしていくのであった……。
俺はロイドさんに「俺ってどんな存在だと思われてるんですかね?……。」と話しかけてみる 彼女は少し悩んだ後に「そうだなぁ……。君はリリスにとって大切な存在であると思っているよ。君が生まれてから、まだ半年程度だが……。毎日君の事を見て嬉しそうにしている姿をみると本当に幸せそうなんだよ……。」と言われたので、俺としても嬉しかった。俺としてはこの世界を楽しみながら過ごせれば良いと考えているが……ロイドさん達が困るような状況になることだけは避けたいと考えていた。……だからこそ……この世界のことも知りたいと思った。
それには情報収集が必要だ……。この屋敷には書斎があったはずなのでそこで、俺は本を読んで知識をつけることにするのである。そして、リリスが学校に行く日が来た。俺は彼女を見送る時に「じゃあ……行ってくるね……。」と言われてしまったのである。正直……少しだけ悲しい……。俺も学校に行けたら……とは思うが……。まあ、今は仕方ないだろう……。と、自分に言い聞かせることしか出来なかったのである。
それから1か月くらいは平和に過ごした……。俺も、それなりに動けるようになったし、勉強したりして過ごしていた。
そして、俺はあることに気づく……。ロイドさんの旦那はどこにいるんだろう……と。まあ……それはさておき、そろそろ俺も外に出てみようかと考えていた矢先に……。
事件が起こってしまったのである……。
「大変だ!!魔物の大群が攻めてきたぞ!!」と声が上がった そして俺は……このタイミングかぁ……。とため息をつくのだった
「皆!急いで避難してくれ!!」という叫び声で俺を含めたこの家に住んでいる住人達は一斉に動き出す。すると……。
家のドアを開けようとした瞬間に爆発が起こり家が吹っ飛ぶ……。俺が「くっ!間に合え!」と言いながら玄関まで走って行くと……そこに居たのはゴブリンの上位種だった……。その数は20体はいる。
「お前らがここに来た理由は何だ!どうしてこの村を襲う!!」と声をかけるが……。「ギィ!!」「キィーーー!!!」としか言わず襲いかかって来るだけだった。俺は、自分の体を動かそうとするが……。
何故か……体が上手く動かせない……。(なんだこれ……。まさか……俺が赤ん坊になって身体能力が低くなって……。だから、本来の力を発揮できないのか!?くっ!)と焦るがどうすることも出来ない。そうこうしているうちに次々と襲われて怪我を負う。しかし……不思議なことに致命傷にはならないように攻撃を受けていたのだ。
俺は……(このまま……何も出来ずに死んでしまうのか!?俺は、ここで終わってしまうのか!?)と考える。そんな考えを振り払うかのように「諦めてたまるかぁ!!!」と俺は大声を出して、立ち上がる。俺は「来いっ!」と【神剣】を取り出して、敵を切りつけるがやはり……手応えが感じられなかった。
(……どうして……どうして……。)と疑問を抱いていると【解析】で相手のステータスを見ると「状態異常:衰弱」となっていた。
俺は「なるほど……。そういうことか……。だったら……」と呟いてから俺は【スキル創造】を発動させる。
すると【超回復】と【体力吸収】という二つのスキルを創造することに成功する。
(……よし!【超再生】の劣化版だが……この能力なら戦える!)と考えてスキルを創造したが、思った以上に消費魔力が大きかったらしく俺はその場に倒れ込んでしまう。しかし……俺は立ち上がり……。敵の方に駆け出して行く。その様子は……鬼気迫るものがあったと、後にロイドさんは語った……。
俺はゴブリン達の中に入ると「かかってこい!」と言って攻撃する。
相手からの攻撃を受けながらも攻撃を繰り出すと「グガァ!?」と悲鳴を上げて倒れていく その光景に周りの奴らは「あいつ……。強い!?」などと言っている。しかし、それを見ていたロイドさんが……俺の異変に気づくと、「な、何をしているんだ!?早く逃げるんだ!!」と声をかけてくる。
しかし、俺は「俺は……。大丈夫です……。ちょっと、疲れたので休んでいます。」と言って、意識を失っていくのであった。
俺は目を覚ます……。周りには、さっきまで俺が相手をしていた上位種の魔物の死体が転がっていた。
俺は……意識を失う前の出来事を思い出してみる。確か……あの後……。急に体が楽になったので俺はロイドさんの元に戻る。
俺は彼女に近寄ろうとすると彼女は俺の方を見て驚いていた。そして、俺は彼女に事情を説明し始めると彼女は俺のことを見据えると「ありがとう。私の子供を助けてくれて……。」と泣きながら抱きついて来た。
そして……俺は、自分が持っている能力のことを話し始める……。
俺の話を聞いた後で、ロイドさんからこの世界について教えてもらうことになった。
この世界では、ダンジョンが存在していて冒険者がいる。その他にも魔物が存在しているが……ダンジョンから出て来た魔獣を討伐することで、冒険者達の生活を支えているらしい。他にも色々な説明を受けたが……俺が気になったのは……。冒険者のランク制度である。
まず、下からD→C→B→A→Sとなっていて基本的に、上に行くにつれて難易度が高い依頼を受けることができるとのことだが……。依頼は指名制となっていることが多いそうだ。また……ギルドに登録するには、試験があってそれに合格しないと登録することはできないそうだ。俺は……自分のスキルのことやレベルのことを聞いてみると……。レベルという概念があるそうで……。レベルが上がることによってステータスが上昇したり出来るそうだ。ステータスについては、基本的には他人には見ることが出来ないのだが……特殊な魔法を使うことによって見ることが可能なのだと言う。ちなみに、この国には勇者召喚された人がいてその人のことを勇者と呼んでいると言う……。
ちなみに、この世界にステータスを見る為の魔法は存在しないと言うことだ。なので……。基本的には自己申告することになるという……。俺の場合はどうすれば良いのだろうか……と悩んでいると……。「そうだなぁ……。じゃあ……。今度からリリスの家庭教師の先生ってことでいいかな?」と言われてしまう……。俺の実力は見せていないが多分この人はわかっている気がする。でも……リリスの家庭教師としてこの屋敷に住むことになるのであった……。ただ……俺はこの時、ロイドさんが凄い笑顔になっていることに気づき……。なんか……怪しいと思った。……まあ、それは置いておいて、とりあえずこの日から俺はこの家で生活をすることになったのだった。ちなみに屋敷に住んでいる人たちにも紹介してもらえる事になったが……みんな若い人ばっかりだな……。と思っていたら、どうやらロイドさんの知り合いばかりが集められていたみたいだ。なので……俺のことを知らない人もいたのだ……。俺の事を怪しむような視線を感じていたが……。気にしないようにしておこう。ただ……。俺の能力に関しては内緒にして貰うよう約束した。まあ、そもそも俺もまだこの世界で生活して数日だし。
いきなり、あれ?君、強いね?とならない方がおかしいもんな……。そういえば、ロイドさんの旦那も俺と同じぐらいの歳なのか……。見た目は、若そうだけど……実は30超えてるんじゃね?と思っていると……。リリスと一緒に帰ってきたのだ。俺は「こんにちは!俺はこの家のリリスさんが通う学園の教師になりました。よろしくお願いします。」と挨拶をする。ちなみにリリスからは俺の顔が見えないように少し離れて話しているのである。ロイドさんからも少しだけ俺の事を紹介されたけど……。俺が「リリスさんの事は妹みたいなものだと思ってるので……」と言うと、ロイドさんは嬉しそうな顔をしていたな……。
それから……リリスが帰って来る時間に合わせて俺が彼女の元に向かい勉強を教える。それから2週間程で簡単な勉強をある程度できるようになった。リリスはかなり優秀な子だったようで俺の教え方が良いこともあるだろうが……かなり覚えが早かった。そして……。俺に剣術などの戦い方も教えて欲しいと言われてしまい……。教える羽目になるのだった。
ただ……俺としても教えることは好きだったので……問題はなかった。そんな風に過ごす日々が続き、俺はロイドさんに呼ばれていたので、屋敷に行く。そこにはリリスも来ていたのだった。
「今日はね!タクミ君のお姉ちゃんにね……プレゼントを渡しに来たの!喜んでくれるといいんだけどね!」と嬉しそうに話すリリスの後ろで俺は頭を抱えそうになる……。「リリス?あなたねぇ……。私は別に誕生日とかじゃないわよ。どうして……私にプレゼントを持って来るの?」と呆れた顔をしながら聞いてきたので俺は「あはは……。俺が勝手に渡しちゃったんです……。すいません。俺も止めるつもりだったのですが……。どうしてもと聞かなくて……。本当にすみませんでした。」と言い訳をするが……。リリスは「違うよ。だって……お母さんは毎日忙しいんだもの。それに……たまになら良いよね!って、言ったの。それで……これを渡したいなって思って……。」「ふぅーん……。そういう事だったの……。わかったわ……。じゃあ……開けても……いいのかしら……?。」と俺の方を見ながら言って来たので「はい。開けてください。」と答えると……袋の中から綺麗に包装されていたものが姿を現す……。その中には……俺が造ったアクセサリーが入っている……。ロイドさんはそれを手に取り「これは……。ペンダントかしら……?」と言って眺め始める……。しばらく経ってから……「これ……すごく細かいところまで細工されていて素敵だわ……。とても嬉しい……。こんな高価なものを……。ありがとうね……。大切にするわ……。それと……私の大切な娘の面倒を見てくれてありがとう。この子に色々と教えてやってください。」「いえ……。そんな……。こちらこそ。いつも楽しく過ごしさせてもらってますから……。これからも宜しくお願い致します。」と言いお互いに礼を言うのだった。「あっ!そう言えば、ロイドさん。そろそろリリスさんを連れて行ってあげた方がいいですよ!もう……夕方になってしまいますから……。」と言うと、ロイドさんは「あら……。いけない……。そう言えば……。そうですね……。じゃあ、また来るね。リリス。行きましょうか。それでは失礼致しました。」と帰っていくのであった。その後……。俺がリリスと話をしている時に彼女は「えへへー。良かったぁ。喜んでくれて……。また作って持って来てあげるね!」と微笑みかけてきた。その表情を見て俺は心の底から思うのだった……。(……可愛い娘が出来てよかった。)と…………。
そして……。リリスとの勉強会が終わると俺が帰る前にリリスが俺を呼び止めた。
「あ、あの! タクミさん! この前のダンジョンの件ありがとうございました。私のせいで怪我までして……。助けてもらったのにも関わらず……お礼を言えないでいて……。本当にありがとうございます!」と俺に言うと「はははっ……。あの時は何も考えずに体が動いていたから大丈夫だよ。気にしなくても大丈夫。それより、俺の方がごめんな。あんなことがあってからすぐなのに、リリスに勉強を頼んでしまって……。」と謝るのだが……。「そ、そんなことはないです……。私はタクミさんと一緒なら、大丈夫です。……その……もっと一緒にいたいな……なんて……思ったりして……。」と恥ずかしそうに言っているのがわかる。俺は頭を掻きながら……照れくさくなり「そっか。また何かあれば、いつでも相談してくれればいいから。」と言うと「は、はい……。また今度も勉強見てくれると……ありがたいです。」と言ってくれたので、「おう。またな」と言って、屋敷を出て行くのであった。そして、家に帰りつく頃には、すっかり日が暮れていた。家に戻ると、既に夕食が用意されており、「今日は何をしていたのですか?」と聞くクレアさんと「おかえり。遅かったのじゃな。」と言っているラティーファの相手をしてから風呂に入って、俺はすぐに寝ることにするのであった。そして翌日になると朝早くから俺は鍛冶場に行って昨夜考えたことを実行する為に必要な物を作り出したのであった。それを試作品なので……出来上がるまで何日もかかるだろうけど……。
それからしばらくして……俺は、自分の作った剣の性能を確認するためにダンジョンに向かった。この世界のダンジョンの魔物のレベルは高いらしいのだが……。まあ、今の俺にとっては関係ない話である。ダンジョンに入ると中は洞窟のような感じになっており……所々、岩肌から水滴が落ちていて床を濡らしている。俺の感覚的にだが……。レベルの高い魔物ほど気配を感じ取ることが出来るようだ。俺は奥に進むことを優先することにした。魔物の数が少ない気がしたからだ。俺は警戒しながら進んで行くと前方に魔物の反応があったので、俺は足音を立てないように忍び寄り……一気に間合いを詰めてから一刀のもとに切り裂くと魔物の頭が地面に転がったのだった。どうやら、この辺りに出る魔物は雑魚しかいないようだった。
俺はそのままさらに先に進み……一番最初に遭遇して倒した魔獣より格上の魔物が出てくるのを感じると同時に俺に向かって襲いかかって来るので、俺もそれに応じて動き出した。そして俺は一瞬にして接近し……相手の首を切り落とした後……素早く後ろに回り込んで、今度は胴体部分を斜め上に切り上げ両断するのであった。それからは同じような戦闘を繰り返して俺はどんどん階層を攻略していくのであった。
俺は地下10階のボス部屋にたどり着く。するとそこに居たのはオーガだった。今までの敵と違ってこの階にはこのオーガだけが生息しているみたいだった。俺を睨みつけてくるとその巨大な体からは考えられない速度で走り出すが、俺はその場にとどまり様子を窺っていた。すると目の前まで迫るがスピードが乗ったところで飛びかかってくるが俺は半歩下がって避けた後、すれ違い様に斬撃を放つと胴が真っ二つになりその場に倒れ込む。それから念の為に近づいて止めを刺すと黒い粒子に変わり消え去った。どうやらこの世界では、倒しても魔物の素材や魔石を残すことがないようだ。俺としては戦いがいのない奴だったな。と思うのである。ちなみに他の階でも出てくるが、どれも大したことないので、サクッと倒していったのである。
そして、俺が攻略を進めていく中でこの世界には俺以外の人間が存在しないことがわかったのである。俺は地上に戻り、屋敷に戻る途中……ふと思った。俺は何故この世界に召喚されたのだろうか……?と……そこで俺はステータス画面を確認していると気になるスキルを発見してしまったのだ……。それは【全属性魔法適正】というレア度の高いものであったのだ。この能力は全ての属性魔法に適性があるというものだった。しかも俺は試しにやってみると火と風の2つの魔法が使えた。ただ……使える魔法の威力は初級のものだけである。中級以上のものは使うことが出来なかったのである。おそらく魔力が足りないということだろう。試しに中級までの呪文を唱えると頭の中に使い方が流れ込んできたのだった。そして、実際に唱えてみると本当に使えたのである。しかもかなり強力なものだと言うことが分かった。俺はこれで俺がどうしてこの世界にやってきたのか分かったのである。恐らく女神が言った通りだったのであろう。俺が元々この世界で暮らしていた者ならば、こんな風にあっさり魔法を覚えることは出来なかっただろう。しかし……元からこの世界で生きている訳ではない俺は最初から魔法の力を持っていた状態だということになる。だから俺は元の世界に帰る方法を探す前にまずは強くならなければいけないと感じていた。そして、この世界のことを知る必要があった。俺はロイドさんに頼めば色々と話をしてくれるとは思うが……出来る限りは自分で調べようと決意していた。そんなことを考えながら歩いていると屋敷にたどり着いたので……そのまま自分の部屋に向かう。するとラティーファが待ち構えていたので俺は「お疲れ様。今日はありがとうな。勉強を教えてくれて……。また分からないことがあったら聞きに来てくれてもいいぞ。」と言うと、嬉しそうに笑いかけてから走って出て行ったのだった。俺も自分にあてがわれた自室に向かいながらこれからのことを考えるのだった。
俺はリリスとラティーファの勉強を教える為に、今日は王都の王立図書館に来ていた。
そして今は俺とリリスの二人で図書館のカウンターに行き、職員の方に本を借りたい旨を伝えに行くところなのだが……。「あら……。貴方達がリリスとラティーフのお友達だったのね……。私の名前はアメリア・アルンハートよ。
宜しくね。それと私はここで働いていて司書でもあるわ。何かあったらいってね?」と言ってくれると……何故か俺のことをジーと見つめ始めたのだ。
(……?なんなんだ?何かあるのか……?)と思い首を傾げてしまう。その様子を見かねたのか、受付の人が俺の代わりに「あはは……。えっと……。タクミさん?でいいのかしら?」と言ってくれたおかげで、アメリアさんは俺のことから意識を逸らすことが出来てホッとしていた。そして、「それで、この本を借りて何をするつもりなのか聞いても構わないかしら?」と俺に対して言うのだった。俺は特に何も考えてなかったけど……リリスは俺の答えを待たずに口を開いた。「えぇ……。私が、冒険者の人達について調べてみたくなったのです。それで……冒険者達の事が書かれた本はないかと思って探しているのですよ」と言うのだった。それを聞いた受付の女性が「そうなんですか!リリスちゃんは、凄いわね。そこまで考えていたなんてね……。でも確かに、そういった資料がここにはないから難しいかもしれませんね……」と少しだけ寂しそうにしているのを見てから、リリスは何かを思いついてから再び話し始めた。
「では……こういうことは可能ですか? この街から出ている定期馬車で王都の外から街に戻って来た人達にその街の印象を聞いてみて欲しいと伝えてもらうのですよ。もちろんその人の主観が入っていると思いますので全てを聞く必要はないです。あくまでも参考程度ですね。」と言うと、「わかりました。ではそういう風に依頼を出しておきます。その方が信憑性も増しますから……。ありがとうございます」と喜んで言うのだった。俺は二人の会話が終わった頃合いを見計らってから……自分が本を探したいと申し出ることにした。「あの……すいません。俺も何か探し物があるみたいなんですよ。」と話すと、俺の事情を知らないアメリアさんが「じゃあ、二人共一緒に来てくれないかな?」と言い出して……俺たちは三人並んで歩くことになる。それからしばらく本を探してから「そろそろ時間だから戻ろう」と言われ、図書館を出て行きギルドに寄ることになり、ギルドに着くと俺は、早速「魔物図鑑」という本を、リリスは「冒険者とモンスター」という本を受付の人に頼んでから借りる事が出来た。
それから俺たちがギルドから出て行こうとする時、「あっ……。タクトさん。もしよかったら今度暇なときにお茶でも飲みながら話しましょう?」と誘ってくれたので、俺は断るのが苦手なので「ぜひ」と言って、約束をしたのである。それからラティーファを屋敷まで送って行って家に戻ると、ラティーファが待っていて……勉強を始めるのであった。
次の日……俺とラティーファは屋敷の中で遊んでいた。屋敷の中には使用人たちが忙しなく働いていたが、それを横目にしながら……クレアさんの手伝いをするクレアさんと一緒に厨房に入っていった。
それからラティーファも料理の味見をして感想を言い合っているのを見たりしてから……食堂に入っていっている。するとクレアさんが料理の準備をしながら、ラティーファに声をかけていた。
俺も手伝うつもりでいたが……クレアさんに「今日はタクトさんは、お客さまなのだから休んでいるように言われているのよ。」と言われると、大人しく席に座っているしかなかった。それからしばらくして、ラティーファは食べ終わったのか満足そうな顔で自分の部屋に戻るようだった。その後……俺はクレアさんに連れられて鍛冶場までやってくると……俺とクレアさんで試作品を作ることになってしまったのである。そして完成した試作品は俺と、何故かクレアさんにもプレゼントしたのだ。そして出来上がった武器の性能を確かめる為に、俺は庭で試すことにする。俺は新しく手に入れた「無音歩行」「気配遮断」「危機察知能力上昇(中)」の加護を使い気配を消し……スキルを発動させると……体が薄く光ったような気がした……。多分これが発動中だという印だろう。そして目の前にいたはずのゴブリンを見つけると後ろから切りかかった。
その一撃でゴブリンの首を切り落としたが……やはりというかなんというかレベルが上がっていない。それから……俺は試しにもう一度斬りかかってみると今度は首を切り落とすことに成功した。それから俺は試作品のナイフに念を込めてみたのだが……そのナイフからは斬撃を飛ばすことが出来るようになっていた。その事に驚いた俺は思わず……クレアに振り返ると、俺が突然振り返ったことでびっくりして固まってしまっていたのだった。俺は慌てて謝ると、俺はそのままの足で裏の練習場に行く。そしてそこにいたロイドさんを見つけて俺がこの世界にやってきたときのことを詳しく教えてくれる様に頼むのだった。すると……快く承諾してくれた。俺はその場で座り込み……そしてロイドさんからこの世界に来たときの経緯を話してもらったのだ。どうやらロイドさんは、転移する前の仕事の関係でよくこちらの大陸を訪れることがあるみたいだった。
俺が聞きたいことを聞き終えてから、俺は立ち上がりお礼を言うとその場所に残しておいてもいいと言われていた練習用の剣を手に取りロイドさんの前で素振りをしていた。ロイドさんは……真剣な眼差しでずっと見ていたのである。そんな感じで時間が経ち夕方になった頃……。屋敷に戻り皆と合流するのである。俺はクレアさんと一緒に夕食を作り、それから食卓に並べていった。食事が終わると……俺はお腹をさすりながら部屋に戻る……。
そしてベッドでゴロゴロしながら明日は何をしようか考えていると……眠ってしまったのである。
朝になって目が覚めた俺は昨日のこともあり……今日はラティーファの家庭教師を引き受けることになっていた。朝食を終えた後……リリスは俺に抱きつくと……すぐに離れると……部屋に戻る為に歩いて行くのである。それを見ながら俺は、自分の部屋に向かって行った。すると……既に準備が終わっているラティーファが俺を迎えに来てくれたのである。俺はラティーファと共に家の外に向かうのだった。ちなみにラティーファに聞くと、ラティーファの通っている学校は週に二回ほどしか開いておらず、普段はリリスが教師役になっているのだという。
(リリス先生の授業を受けてみたいけどなぁ〜)と思いつつもラティーファと手を繋ぎ学園へと向かうと正門の前に立っていたリリスと合流したのだ。それから教室まで連れて来てもらい……。
そこで待つことにしたのだ、すると暫くしてから扉が開かれて一人の生徒が入ってきたのである。「こんにちは皆さん……。私がこのクラスを担当することになりました……。アリスです。宜しくお願いしますね」と挨拶をし自己紹介を始めたのだ……。そして何故かそのまま授業が始まり……何故か俺はこの国のことや文化についての質問をされる事になったのだ……。
それから数分程経ってから、何故か俺はリリスに呼ばれた。リリスに案内されて向かった先は、図書室のような場所でそこにはアメリアさんが座っていたのである。俺はどうして呼ばれてきたのか分からずに、首を傾げてしまうと……アメリアが俺を見て「タ……タクト様……で宜しかったですよね?」と聞いてきたので……戸惑いながらも「はい……。」と返事をしてしまったのだった。それからアメリアは俺に本を読んで欲しいと言ってきていた。
俺とアメリアの間に気まずい空気が流れてしまうが……。アメリアさんはすぐに表情を戻すと、「えっと……それじゃあこれを読んでみてくれない?」と本を手渡されたのだった。その本の題名を見ると……。
・初心者の冒険者に向けて。初めての冒険に役立つことが沢山書いてあります。冒険者の心得1 〜初依頼編。冒険者の心得2 〜冒険者ギルドでの手続きと注意点。冒険者の心構えと冒険者の基本動作〜……という3冊を俺に手渡してきたのである。そして俺はとりあえず読み始めたのだった。
「それでは冒険者が最初に行う依頼について説明するわね。
基本的にどんな職業であっても、冒険者として最初の一歩を踏み出すには必ず、誰かのサポートを必要とするでしょう?例えば武器を持っていなかったり、体力に限界を感じていたり……。そういった時に適切な判断をしてくれる仲間が必要なのです。しかし……中にはパーティーメンバーを選ぶ際に『弱いやつは必要なない』などといって……見下してくる冒険者もいます」
俺は、本の内容に納得しつつ聞いていたのであった。確かにそうかもしれない……。この世界ではまだ、俺は知らないことが多い。そういった時に助けられる仲間が必要だな……。
「また……。そういった人ばかりではありませんが、『冒険者をやっていて、お金が足りないから、手伝ってくれ』と言ってくる人もいると思います。そういった時はきちんと断りましょう!これは、自分の命がかかっている仕事でもあるのですから、自分の身の安全が確保できるか分からない状況で、手伝う事は決してしてはいけません!」
なるほど……確かにそうだろうな……。報酬が少ないからって理由で危険な依頼を受けるのは間違っている。……それに、そもそも……今の自分にそんな余裕があるのだろうか……?まあ……今は気にしないことにしておくが……。それからしばらくの間は、アメリアが本を読み進めていく。すると……途中で「あっ……。ちょっといいかしら……。タクト様」と言われたのだった。俺は、その言葉に反応し顔をあげると、少し照れ臭そうな顔をしていた。
「あ……あの……。もしよかったら、タ……タクト様が良ければ、私の友達になりなさいよね」と言うと恥ずかしいのかそっぽを向いてしまった。そして俺はというと……何故急に俺にそんな事を言ってきたのか分からず困惑してしまっている。俺は、「え……あっ……はい……」としか答えられずにいたのである。それからしばらく俺は……アメリアと本の話をして時間を潰したのであった。その間、ラティーファが「ねぇ……。何のお話しをしているの?」と言ってきたが……適当にはぐらかしておいてしまったのであった。
その後、俺とラティーファは一緒に帰っていく……。途中までは一緒なので一緒に歩いていたのだ。俺の隣にいるラティーファは、楽しそうに今日の出来事を話してくれる。俺はその話を聞いていてとても幸せな気持ちになるのだった。すると屋敷の入り口に着き、クレアがラティーファに声をかけるとラティーファは「タクトさん。また今度お喋りしようね」と笑顔で言って俺と別れようとするので……俺はラティーファの手を取り引き寄せたのである。
ラティーファは、驚いていたが俺の行動に対して特に嫌な様子はなかったようだ。俺は自分の気持ちを抑えきれなかったのか……そのまま、ラティーファに抱きついてしまっていた。
「た……タクトさん!?どうしたの……。急に抱きしめたりして……も……もう、ビックリしたじゃないですか。でも……。私も嬉しいです」と言い、嬉しさで俺を抱き返してきてくれたのである。
俺とラティーファがそんなやり取りをしていることを知らないクレアとリリスは、そんな俺達を見て微笑んでいた。すると屋敷の方からクレアさんの視線を感じた俺は、ラティーフから離れて「ごめん……。何でもないよ。帰ろうか」と言ったのだった。そして屋敷に入り食堂にたどり着く……。すると、リリスが「ラティーファさん。お帰りなさ〜い。」と元気よくラティーファに声をかけている。それから、リリスが何かを思い付いたかのようにラティーファに提案する。ラティーファに新しいドレスが出来たから着てみるのはどうかと提案したのである。
ラティーファがその事に喜んでいると……何故かリリスは俺にもドレスを着せてくると、何故かリリスが張り切って着替えさせるのである。その行動に戸惑っていると、リリスはクレアの方に向き、「クレア。これから皆でラティーファのドレス選びに行こうよ〜」と声をかけた。そして俺は、リリスに引っ張られて部屋に連れていかれ……リリスにされるがまま、服を着替えさせられるのだった。俺とラティーファとリリスは部屋を出て、ラティーファの部屋にやってくると、リリスは俺を見て「ほら……似合ってる」と褒めてくれるのだった。それから暫くの間、三人ともで色々と服を見たのだが……俺の格好を見ている二人は俺をじろじろと見て……なぜかため息を漏らす……。
俺はそんな二人の様子に疑問を持ちながら見ていたのである。すると、リリスは……クレアに「クレアもせっかくなんだから可愛い服を選んできたら?」とクレアに向かって言うと、俺はリリスに手を引かれ、今度は別の服を漁り始めたのである。俺の目の前で二人がワイシャツを手に取ると、それを体に近づけると、体に当ててから俺に見せるようにしている……。すると……ラティーファがそれを見ると、頬を膨らませて……二人に注意したのである。それから……ラティーファは俺をちらと見た後に……またリリスが持っているものに目がいってしまうのだった。
ラティーファはその事に気が付き、自分の方を見て欲しいと思ってなのか……。それともただ単に気に入ったのかどうかは不明だが……その洋服をリリスから奪い取るようにして手に取ったのだ。ラティーファは自分の体にあてて……その可愛らしい姿を俺に見せつけてきて「どう?タ……タクト兄ちゃん。ラティーファ……この洋服かわいいかな?」と言ってきた。俺もその姿を見ていたせいか……自然と口元が緩み、「ああ……。凄く良く似合っているぞ」と口にしてしまったのである。
ラティーファは俺の言葉を聞くと満足げに笑うのだった。そして……リリスは少し悔しそうにしていると……すぐに違う服を持ってきたのである。その服装はフリルが多くついた、女の子らしさを全面に押し出したものだったのだ。それからリリスと二人で、ラティーファを着せかえ人形にして楽しんでいるうちに、いつの間にか夕方になっていたのだ。それから、リリスはクレアを連れて買い物に行ってしまい……、結局、その日の夜は俺一人になってしまうのであった。
翌朝になると俺は朝食を食べた後、リリスと待ち合わせをして冒険者組合へと来ていたのだ。昨日の内に俺とリリスの間で打ち合わせをした通りに……まずはアメリアのところに案内をしてもらうことになった。それから、受付カウンターに行き……。アメリアさんを呼ぶと、アメリアが対応してくれるのである。
「アメリアさん。おはようございます。本日は依頼書を持って来ました。宜しくお願いします」と伝えると、アメリアさんは俺をジッと見つめる……。それから俺に質問を投げかけてきた。「あの……。どうして貴方がここに居るのでしょうか?冒険者ギルドには本日まで入ることは出来ないはずなんですが?」と言われたのだった。俺も困ってしまい……言葉に詰まっていると……「あっ!タクトさん。この人は大丈夫ですよ。この方は……この前、私達が依頼していた「護衛」を引き受けてくれる予定のタクトさんという冒険者です。まだ依頼の正式な契約は交わしていないので名前は伏せさせて頂きますね。タクトさんこちらの方が、ここの冒険者組合の職員で……私達の担当になってくれている人なのですが……。実は……今朝まで「レベル上げの試練」を行っていて……。私達と一緒に行動できない状況だったので、その事を伝えようと思ったんですよ」
それを聞いたアメリアさんは、「あ〜なるほどね。そうなのですね……。それは失礼しました。私は当組合職員のアメリアと申します。よろしくお願いします」と言うのだった。俺はアメリアさんと挨拶を終えると……。「それで今日、俺はアメリアさんからの依頼を受ける事になっていると思うのですが……。正式に受ける前に、アメリアさんから話を聞きたくて……」と伝えたのだった。
すると、俺の話の途中でリリスは何かを思い出したのか……急に焦ったような表情に変わる。そしてリリスは、アメリアさんにある頼み事をするのだった。その内容は、俺が依頼を受けることに対してアメリアさんに「推薦人」になってほしいというものなのだ。
俺はその話を聞いて不思議に思い、理由が知りたいと思い「何故……その様なことを……リリスは考えているのですか?」とアメリアさんに聞いてみると……。「そう言えば……。お伝えしてませんでしたね。アメリアさんは、このアメリアの町にある唯一のB級冒険者でして……アメリアさんがタクトさんのことを推薦して下されば、晴れてタクトさんは、Aランクの昇級審査が受けられるようになります。つまり……タクトさんが依頼を受けて、達成した時に発生する報酬も通常より高額となります。これは、私が保証しますので……」とリリスの代わりに答えてくれる。
そしてリリスは、アメリアさんの返答を待って不安そうにしている。俺も気になりリリスの方を見るが……。俺は、先程リリスから聞いた「レベルを上げないと俺の依頼を受けることが出来ない」という説明から考えると……どうも俺はリリスに嵌められた感があって、なんとも複雑な気持ちになってしまったのだった。それから俺はリリスの方を向くが……、リリスは何食わぬ顔をしながら「どう?」と言わんばかりの視線を送ってくるのだった。
それから、リリスが「では……お願いしてもいいのですね?」と言うと、俺はリリスから目を逸らす……。それから俺は「まぁ……。別にいいよ。……でも俺が、この依頼を受けたところで何の役にも立たないかもしれないけどな」と言ったのである。俺はこの世界にきてからというもの……魔物討伐やダンジョン探索などの実戦経験は積んでいても、この世界の常識については全くといって知らない。だから……リリスから話を聞いた時は……正直にいうとかなり困ってしまったのである。しかし……それでもこの世界で生きて行くためには仕方がないと思っている。俺自身に出来る事は、この世界の知識を吸収して強くなっていこうと考えていたのだ。
俺はそのことを告げると……何故か、二人は笑っていた。その二人の態度に疑問を抱きながら……。「とりあえず、話は理解できたので……。今日はリリスさんとクレアの護衛依頼で、この町に来ています。そして、この依頼が終わるまでに「推薦」を得られるかどうかは分からないということだと思いますが、リリスさんの話では俺がこの依頼を終わらせた場合、通常の依頼よりも報酬が高くなるとのことです。……ただ……俺はこの依頼を受けるかどうかはまだ決めていませんが、取り敢えず……その辺のことを含めてリリスさんと話し合ってみたいと思ってるのですが……。リリスさんはどうしたら良いか……意見を聞かせてくれないか?」と話す。
リリスは俺の言葉を聞くと……「わかりました。それじゃ……早速、依頼の内容について話し合いをしましょうか。タケル様。行きましょうか」と言い出したのである。そんなリリスの言動を見て、俺は嫌な予感がした。俺はそんな事を思いながらもリリスと共にアメリアの部屋を出ていった。俺はその部屋を出る際に、クレアの様子を伺うが……何故か……俺をジト目で見てきているように思えたのであった……。それから……何故かクレアは俺をじっと見続けている……。一体……俺が何をしたって言うんだよ?本当に……。
その後……冒険者組合から出た後は、町の中心部に向かって歩き出したのである。その途中で俺はクレアに「クレアはさっき……どうしてあんなに怒ってるような目で俺を見てきたんだ?」と聞いてみるが……。クレアは「べ……べつに怒ってなんていませんよ。それより……どうして、あの場を離れる必要があったんですか?」と言われてしまうのだった。そんな事を言われても、俺には全然身に覚えがないことだったのだ。だが、クレアの機嫌をこれ以上損ねるのはマズイと感じ……俺は誤魔化すしかなかったのだ。それからクレアはしばらく無言のまま歩いていたが……少しすると、クレアは口を開いたのだった。
「それで……リリスと二人で話をするのは分かりますが……どうして私のところに来るのでしょうか?」
俺はクレアの言葉を聞いて……思わず言葉が詰まった。「そ……そうだね。……その前に確認だけど、俺はこれからリリスさんとクレアを護衛する為にここに居るんだよね?」と聞くと、俺は自分の胸に手を当てて深呼吸をする。それから、俺がリリスから受けた指示を頭の中で整理してから、「クレアに話がある」と言ってみたのである。そして俺の話を聞いてか、クレアは少し不愉快そうな表情をしていた。
俺も何故自分がクレアにここまで嫌悪感を示されるのか分からず困惑してしまう。確かに昨日会ったばかりなのだが、それでもここまで嫌われるほどのことはしてないはずである。するとクレアはため息をつくと……「私はリリスに……この依頼が終わった後にタケルと少し二人きりで話がしたいから、その間……私達の傍を離れて欲しいとお願いされていたんです」と言われたのだ。その事を聞くと、リリスとラティーファが二人で俺を嵌めたのだと解った。
リリスとラティーファは、おそらくクレアとリリスで打ち合わせしていた内容だろう……。そして俺がその事を知ると、クレアとラティーファは打ち合わせ通りの動きをしたのだ。それは俺とクレアを二人っきりにして、自分達はリリスを連れて冒険者組合の外へ出ていったということだ……。つまり……リリスは最初からこの作戦を実行するつもりだったようだ。そしてリリス達は俺をこの場で二人っきりにする為に、俺がクレアとの話を邪魔しないように……リリスはあえて、クレアを俺から引き離したというわけである。俺はそのことに気がつき、慌てて……その場から立ち去ろうとするが……クレアは、なぜか俺の手を掴み止めてくる。俺は驚きのあまり「ク……クレアさん!ちょっと……いきなり何を!?」と言うが、すぐにクレアは「リリスには、ちゃんと説明しておいてほしいわね。……でも……。私はリリスを信じているの」と言うと、手を離してくれたのである。そして、俺はリリス達を追いかけるために急いで走っていったのだった。そして俺は、リリス達の姿を探したのだが、どこを探しても見当たらない……。それからリリス達に電話をかけようとしたが……。よく考えてみたら俺は、リリス達がこの世界に転移してきたときの持ち物も、連絡方法も聞いていなかったのである。俺は仕方なくリリス達の居場所を確認するためにステータス画面の「加護」という項目を開いて「女神の加護」という項目を選択すると……。俺の目線の先に「リリス・グランドール
LV1 種族 :ハイエルフ
性別 :女 HP(体力)
:200/2400 MP(魔力)
:30000/5000000 STR(力)
:250
DEX(器用度):1200 VIT(生命力)
:700
AGI(敏捷性):1000
INT(知力):5000 MND(精神力)
:10000 LUK(運勢)
:15」と出てきた。
俺はリリスの現在の状態を確認した後に……。「そういえば、リリスは……『空間移動』の魔法を使って移動することができるんだったよな……。」と思い出す。それから俺は、「今、どこにいるか分からないが……俺の声だけは届けることができるかな?」と考え……。念じながら……「聞こえるか……?聞こえたら……答えろ!」と言った。だが、俺が念じた直後に「あ……はい。どうされました?」というリリスからの返事があり……俺は驚いた。どうやらリリスは、俺がリリスのことを呼んでいたことを覚えていたらしい……。
「リリス……。この声が……お前に届いているかどうかは不明だが……、リリス。今……お前はどこにいて、どのくらいの距離まで離れていても大丈夫なのかを教えてくれないか?」と質問したのだった。俺は正直に言ってリリスから詳しい情報を聞きたかったのだ……。この世界で生き残る為に必要な情報が少しでも欲しいからである。
すると……何故か俺の心の中の声では無くリリス自身の声が「リリスさんですか……。お兄さんの近くにいますが……ここからでは距離はわからないですね」と答えてくれる。俺はそれを不思議だと思いながらも……リリスと話すことにする。そして……俺はリリスと話をしながら、リリスとラティーファの位置を確認しようと思ったのだ。リリスに俺の現在地を伝えてもらい、その場所がわかれば……。俺はそこで、リリス達と合流できるからだ。だが……。「それでは……リリスさん、俺からいくつか聞きたいことがあるから……質問してもいいか?」と言うが……、俺はその時になって……。もしかして俺とリリスが心で会話しているということに、誰かから勘づかれるのではないだろうか?とふと思ってしまった。もし仮にそうだったとしても……。「女神の使徒」というスキルを持っている俺なら問題無いはずなんだが……。そんな事を考えてしまったせいで、急に不安になったのである。
それから俺は、取り敢えず今はリリスと話しているのが、誰にもバレない様にするべきなのでは……と思ってしまう。だから俺はリリスと話すことをやめて、周りの様子を確認することにしたのだ。俺の目の前にいる人々は……皆普通に歩いているだけで……。特に何かを気にしているようには見えなかった。俺はそんな事を思いながらも、自分の周りの人々に違和感が無いかを改めて確かめる……。
すると俺の視界の隅っこの方に……俺と同じようにキョロキョロと挙動不審になっているクレアと、そんな俺を心配そうな顔で見つめるラティーファが目に入ったのだ。それから俺は二人に声をかけようとした瞬間、俺は自分の口に手を当てられた感覚を覚えたのである。そして俺は「だ~れ~?」と言ってみたのだ。
しかし……。「しーっ。お静かに……」と言われてしまう。俺は慌てて振り返るとそこには……、リリスがいたのだった。俺はそのリリスの顔を見て驚く……。なんとリリスは、一瞬のうちにこの路地に移動したのか……。もしくは……。リリスが使った「空間転移」の魔法を使用したのではないか……と疑い始めていたのだ。そんな事を俺が考え始めると……俺は何故か、先程までの不安感を消し去れたような気がした。そして、それと同時に俺は……この異世界に来てから初めて出会ったリリスに少し親近感のようなものを感じていたのであった。
リリスは、まるでこの世界の人間のように自然と溶け込んでいるように思える。それは……。リリスが、この世界の住民に変装をして、この世界の住民のふりを装っているのか……それとも元々リリスがこの世界に転移したときに着てきた服を着た状態でここに現れたのかが、分からないが……そんな事は今の俺にとってはどうでも良い事である……。なぜなら、俺の目の前に現れたリリスが、いつも俺を困らせてくれたり、からかってきたりする普段と違う態度で接してきた事が、なぜか凄く嬉しかったのだ。
俺がそう思うと、俺は無意識のうちに……微笑んでしまい……リリスとラティーファはそんな俺を見てしまうと、なぜか照れて頬を赤く染めて恥ずかしそうにしていたが……俺は二人には、まだこの世界の人間が俺達に話しかけていないかを確認する為に辺りを見回して欲しいと言い……。それから俺とリリスは、二人で話し始めることにした。だが俺は、少し気になる事があったのである。それはリリスが俺のことを「お兄さん」と呼ぶときは、大概……からかっていることが多い。でも今日に限っては、今までに感じたことの無いくらい優しい口調だったので俺は思わず驚いていたのだった。
すると……リリスは俺の言葉を聞くと少し不機嫌そうな表情をする……。俺は何故リリスが不機嫌そうな顔をしているのかわからず戸惑ってしまう。すると、なぜかリリスは不愉快そうな表情で「私にとってタケルさんが、特別な存在で無いと思っているんですね……」と言われる。その事を聞くと、俺はさらに意味がわからなくなり……。「えっと……。ごめん……俺の勘違いだったみたいだけど……。どういう意味で言ったんだ?」と言うと、今度はラティーファとクレアがなぜか焦った様子になっていたのだ。そして……リリスもなぜかラティーファとクレアを睨むような仕草をしていた。そしてクレアは慌てたように「ラティーファちゃん!ちょっと来て」と言うと、リリスと俺を残して何処かに行ってしまったのである。
俺もクレアのことが気になったが……それよりも俺はラティーファがなぜリリスとクレアを怒ったかのような視線で見ているのか、その理由の方が知りたかった。それでラティーファと話をしようとするが……俺の意識は再び暗闇の中へ落ちていく。俺は慌ててステータス画面を開く。すると俺の状態を示す表示に変化が起こっていて「昏睡状態」になっていた。
そして俺はリリスとの会話を思い出したのだ。確か……俺はリリスに……「リリス。俺に……俺に対して……特別に優しくしてくれたり、からかったりと……。そういう態度を取ってくれたりするのは……どうしてなのか?……聞いてみていいかな……?」と言う質問をしたはずだ……。そして、その後すぐに俺の目の前は暗転した……。おそらくだが……、あの時に……俺は昏睡状態にでもなってしまったんじゃないだろうかと思う。俺はすぐにラティーファとリリスの様子を確認しようとするが……。体が思うように動かないことに気がつく……。それから俺は、自分が気絶していたことに気がついた。
そして今の状況が分からない……。だが、俺が目覚めるまで……リリスは俺の隣にいたようで……リリスが側にいることはわかったのだが……他の三人の様子が分からないのである。
「あれ?ここってどこだろう……。もしかして俺が倒れている場所とか……。」
「うーん……。あ!お父様!それにお母さまも!お姉ちゃんも!!大丈夫!?」
「えぇ……私は大丈夫です。お父様に守られていましたから……。」
「わ……わたしも平気……。おとうさぁん!怖かったよう!」
「ぐすっ……。ラティーファ……本当に良かった……。お父さん、ラティーファが心配で、心臓が止まりそうだったよ……。」
「えへへ……ありがとぉ……。おとうさん♪……大好きだよ。」
「お……おいおい。いきなり甘えるなんて珍しいな……。まあ、そういうところも可愛いんだけどな。」
俺もみんなの様子を見ると安心できたが……。まずは今いるこの場所について考えてみる……。俺の意識がある時には……この部屋は見たことが無いし……俺は自分の記憶を探っても思い出せなかった。
それからしばらくすると……。俺達はお互いに抱きしめ合って、感動の再会を果たしていたのだったが……俺は……自分の体の状況がわからない事に不安を覚えて仕方がなかった。そこで……。「俺の体に異常はないですか?」という念話で確認することにした。
俺の目の前にはリリス達がいるから……俺が「心の中でリリスと念じれば……」念話が届くのかもしれない……。もし仮に届かないとしても……俺はリリスに質問してみる事にする。「俺に体への異常はあるのか……教えてくれないか?特に異常が無ければ……答えて欲しい。」「大丈夫ですよお兄さん。私が調べた限り特に外傷などは無いみたいですね」と言われたので、やはりリリスの声が聞こえたようだった。……ということは、「俺とラティーファの心での会話を誰かが聞いていた?」ことになるのだ。
しかし、俺達とリリス以外には誰もいなかったはずなのだ……。そう思ってから……俺の心を読んだのでは……と考えるが……「リリスのスキルに……『神眼』と書いてあったはず……。そういえば、神様が……リリスのスキルで相手の心を読めるって言っていたっけ……。」と俺が考えていると……。「私の目を見る事で発動できるスキルで……対象の思考を読み取れることができます。ちなみに相手との距離や範囲が離れれば離るるほど精度が落ちていきます」という声が俺の頭の中に響いてきたのである。
「そう言えば、俺の頭の中もリリスに読まれてしまう可能性があるということか……。そう言う事なら……。あまり人の心を読んで欲しくないから……今後は俺の心に返事をしないでくれるか?それから……俺が心で話しかけたら普通に反応してくれるだけで良い。あとは、必要な時は……話しかけてくれないかな?」と言うと……なぜか俺にリリスの不満そうな感情が流れ込んできたので、仕方なく俺は自分の心がリリスに伝わるようにするのだった。
「分かりました。そうすればいつでもタケルさんと念話で意思疎通ができるようになりますし……。私は……タケルさんの役に立ちたいんです……。」と言う声を聞いて俺は嬉しくなった。俺は思わずリリスの手を掴もうとする。だがその手が……なぜか……何かに触れる感覚が無かったのである。
その瞬間……。「タケルさんが……私に触れた……」と思った瞬間、リリスの意識が覚醒したのであった。そして俺は気が付いた。俺は……今どこにいるのだろうか?俺は周囲を見回すと……そこには……知らない男の顔があったのである。その男の年齢は40歳ぐらいの男であり……見た目がとても怖い印象を覚えるが……。俺は何故かこの男は信用できるのではないかと思ってしまう。すると男が「ここはどこだか分かっているか?」と言われてしまったのであった。そして俺は周りを見ればそこは先程までの宿屋とは違う景色が広がっている事に気がつき驚く……。
そして、俺は「ここは何処だ?」と言う言葉に答えると……、リリスの事を指差しながら俺に話しかけてきたのだ。
「この女は……何者だ?それに……貴様ら三人ともこの世界の人間で無いことは分かる……。しかも、俺の鑑定で見ても正体が分からない。」と言ってきたのだ。それで俺はその言葉を聞くと「俺達は、別の世界から来た人間で……異世界召喚されてこの世界にやって来たんだ……」と答えたのである。
すると、リリスとラティーファ以外の二人は驚いたような表情になり……、リリスとラティーファは「嘘をつくと痛い目に合うぞ!!」と言っていたので……俺は「信じなくてもいいけど……。とりあえず俺の名前は……草薙 拓磨だ。よろしく頼む……。」と自己紹介をしたが、二人の様子からして「信じるしかなさそうだな……。俺はお前達の事はある程度は信じられるが……それでもまだ完全に信頼できないと思っている。」と言われる。俺は……少し戸惑うが……確かにその通りだと思い、どうするか悩むのだった。
俺は「じゃあ……。俺の仲間たちを紹介するから……。まずはこの子の名前は、俺の幼馴染みのリリス・アストレアって女の子と……こっちの金髪の美少女は……リリスの妹のラティーファで……この子はリリスとは血が繋がっていない義理の妹なんだ。だから……家族のように接していて……凄く仲が良いんだ……。」と言うとリリスはなぜか不機嫌そうな表情で「ええ……。私たちはとても強い絆で結ばれているんです……」と言うと、俺の手を握る。それを聞いたラティーファがリリスの腕を掴みながら「お姉ちゃんはいつも……お兄さんを独占しようとするんだよ。たまには私にも譲って欲しいんだけどなぁ……。私とお兄さんだって……」と言い出したのだ。
そしてリリスはラティーファの言葉を聞くと、顔を赤く染めて恥ずかしそうな表情をしながらラティーファのことを見つめていると……なぜかリリスは涙ぐんでいるようだった。そのリリスの表情を見ると……なぜか俺は胸が締め付けられる思いになったのである。俺は……リリスが泣いてしまったので慰めようとしたが、その前にラティーファはリリスのことを抱きついてきて「お姉ちゃん!どうしてそんなに泣いちゃったの?私はただ事実を言っただけだよ?……そんなに悲しかったの?お詫びとして後で頭を撫でてくれればいいよ!」と言ったのだ。するとリリスは「ちっ違うの……。ちょっと色々と考えさせられたというか……ラティーフが羨ましくなったと言うか……。」と言う。
リリスは慌てて誤魔化そうとしていたが……俺はリリスに「ラティーファ。ありがとう。でも……ラティーファもラティーファで俺にとっては特別な存在で……。大切で可愛いと思っていて……、俺の本当の妹のラティーファと同じくらいに好きなんだ。もちろん……リリスのことも大好きだけどね。二人共大切な仲間だと思っている。……そしてラティーファは大事な友達でもある……。でもリリスもラティーファもお互いに仲良くしてほしいと思っている。……俺はみんな平等に大好きだし……。それに、リリスとラティーファはお互いに支え合える姉妹のような関係でいて欲しいと俺は思っているんだけど……。」
俺がそう言って二人の事を見るとうなずいてくれた。……するとなぜか、さっきまで不機嫌そうに見えたリリスの機嫌が直っていて、「やっぱり……。タケルさんもそう思っていたんだ……。よかった。私は……今までも……ずっとお姉ちゃんの事が好きで好きでたまらなかったから……。本当は嫉妬していた……。それにお姉ちゃんも私に気があると思っていたから……。私はお姉ちゃんが好きだからこそ……。私は……。」と言う。リリスが何を言おうとしていたのかはわからないが……俺はラティーファの方を見ていたから、ラティーファが突然抱きついて来たので、そちらの対応をする事になってしまったのだ。
「わぁぁん!お兄さん!お姉ちゃん!良かったよぉ!!二人が死んじゃうかと思った!お姉ちゃんの事が大好きだったからぁ!私はぁ!私も!タケルさんが大好きぃ!!お兄さんは私の王子様!大好き大好き!愛してるぅ!」と言うとラティーファの目から涙がこぼれていた……。俺は優しくラティーファの頭を撫でるとラティーファの体も小刻みに震えていて俺はラティーファを強く抱きしめる。するとリリスも同じように抱きしめてきた。……俺達はお互いに涙を流して……しばらくの間……抱き合っていた……。……俺は「俺は今の状況について聞きたいことがある。」と口に出すが……リリスとラティーフも俺と同じように思ったらしく「そういえば……ここは一体何処なのかしら?そもそも……あなたは何者で……ここは何処なんですか?」とリリスが聞くと男は答えたのである。
俺達は男の話を聞いて驚いたのであった。男は「俺は『クロエ』と呼ばれている存在で……、こことは異なる世界で……神に近い立場にいる者だ……。俺は今、別の世界に転移した状態でここに存在している……。ちなみに俺の世界で、俺は……勇者と呼ばれる者達の一人でもあった。」と答えたのであった。
俺は「俺は、タケル・イズモという名前の16歳だ……。この世界に呼ばれたのが、多分18歳になる前ぐらいかな?それからは色々と旅をしていたからな……。この世界についてはあまり詳しくない。……ところで俺達にこの世界のことについて……説明してくれるとありがたい……。それから……。あんたが言っていることが本当だっていう証拠はあるか?」と俺が尋ねると男は答える。
「ああ……。俺の能力『創造』を使えば、すぐに俺が言う事を信じさせることもできる。俺がお前達のことを信用するに値する人間だと判断しないと発動することができないのだが……俺にはこの能力の使い方を教えてくれる存在がいたからな……。まあ……。俺を創った奴だ……。ちなみにそいつは俺を創って……自分の魂が転生するまで俺を封印していたみたいだ……。まあ……。今はそんなことは関係ない。お前達も俺が今からいうことを聞き終わった後に自分の能力を試してみるといいだろう……。」と言うと……俺達は「お願いします」と答える。
俺は男……「クロエ」が「創造」のスキルを使って何かをするらしい。それで男は自分のことを「クロエ」と名乗ったのだ。それで……俺達はこの世界のことを「創造」の力で教えてもらうことになる。……「この世界は俺の世界とは次元が違った世界にある別の世界だ……。そして俺がいる世界と、お前達が元いた世界との間に存在する世界の1つだと俺は認識している……。お前達は俺の事を……神様と呼んでくれればいい……。俺は、この世界の管理をしている……。この世界を管理しているのは俺の上司みたいなものだ。だから……俺のことを敬ってくれてもいいんだぜ……。まあ……。それは冗談だ。この世界を管理している女神が……俺のことを気に入っているから俺のいるこの世界を特別視してくれているのが現実だからな……。」と言われたのである。
そして……俺は、クロエさんと話すうちに、段々と信じたくなっていたのだ。この人は嘘をつく人ではないような気がしたからである。
クロエは続けて「……俺のいた世界でも俺が暮らしていた場所を、他の世界から見ると……、地球と呼ばれていた惑星になる。そして……俺やリリスは……地球によく似た惑星で、この世界とは全く別の進化をした別の生命体ということになるようだな……」と説明した。リリスはそれを聞くと驚いた様子だったのだ。そして「別な世界があったとしても不思議はないです……。実際に、私達は、別の世界に行ってきたんです……。それに……別の世界に行けば私達の身体も別の生き物になっているかもしれないんです……。例えば、別の世界に行ったらドラゴンになったりして……」と苦笑いをしながらリリスは言う。俺はそれを聞いて少し不安になってきてしまう……。確かに、俺たちの身体が別の生物に変わっているということはあり得るかもしれないが、それが怖くて確認することなどできなかったのである。
ただ……クロエはそんな話をしても平然としていたのだ。……クロエが言うように俺達の世界の生物とは違う姿になっても大丈夫な理由があるのだろうか……?俺はそんな疑問を頭の中で思いながら……クロエさんの話を聞くのだった。
そしてクロエさんの説明でわかったことがあった。まずこの世界は「剣が魔法の力を得たことで進化した世界」「魔法と武器を融合させた新しき文化を築こうとしている世界で、俺の住んでいる国では「侍」という文化が発展してきている世界」であり、日本がモチーフとなっている世界ということらしい。また、クロエは「日本のゲーム会社で俺の部下として働いている日本人で……その会社の社長は俺が仕えている女神様の親友だ。俺も、部下の一人として一緒に仕事をすることがある。そして、仕事のパートナーとして……よく話したりすることもあるんだ……。その人が言っていたんだが……『貴方たちが元居た地球と、この異世界……日本では「ニホン」と呼ばれていますが、この二つの宇宙の間には大きな穴があり、この「ニホン」の神々と私達の女神様は交流があります……。それに……私達の神も「この世界の生き物の願い」を聞いたりするので、この二つの間にある穴を利用して、時々行き来しています。だから……この二つは近い関係にあるんです。でも「二つの違う星」という認識で良いでしょう。なので、この「ニホン」を私達の世界の神である『アイリス・グランディア』と私達の女神様が治めていて、その二人に、それぞれの「星の住人達の代表者」を二人、選んでもらって、彼らと一緒に「ニホン」を繁栄させるために頑張っています。「その代表者」に、私達は「サムライ」を選んだわけです。」と説明してくれた。それを聞いたリリスは……「なるほど……わかりました。……そう言えば「私」の記憶の中の映像に……侍らしき格好の人物を見た覚えがあるので、あの人たちが、その「代表者の一人の種族なんですね……。確か、武士という職業でしたっけ……?」と言っていた。……あれは、「私達が住んでいた世界の地球」でのことだったわ……。私が高校生の時に、友達が見せてくれたアニメで……。……でも、「侍が活躍したのは戦国時代で……今の日本に武士はいない」って、誰かが言っていたような記憶もあるんだけど……?う~ん。やっぱり……「この子」が見せたのかしらね……。ううん……。「ラティーファ」が見せた可能性の方が高いかな?ラティーファは、可愛いから、可愛い物とかが大好きだし……。でも……「ラティーファ」がそんなものを見る機会なんてないはずよね……。でも……「ラティーファ」は可愛いし……それに賢いのになぁ……。ううん。そんなこと言っても仕方ないね……。今は目の前のことを考えよう……。」と言う。
俺も気になったので聞いてみた。
「俺はリリスが言っているように、リリスの妹さんに……「ラティーファ」が持っているスマホの中に入っている動画を見せたのかもと最初は思っていたんだが……そういえば、俺も見た記憶のある時代劇映画だったんだよな……。しかも有名な役者が演じていたのもあって印象に残っている作品なんだ。だから俺も何となくは見たんだろうと思う……。そうすると……「ラティーファが見ている光景をラティーファ自身も見ていたのかもしれない」と言うことになるけど……。リリスがさっきから言っている言葉の意味がよくわからなかったが……今の言葉のおかげで納得がいったよ……。リリスは……本当に頭が切れるな……。」と言った。俺がそう言った後で俺はクロエの方を見ると……クロエさんはニヤリと笑うのであった。……俺はクロエに質問をする。
「俺は今からどうしたらいいんだ?俺達は……これから……。この「異界」を生き抜いていくために……この世界でレベルを上げる必要があるんでしょうか?それと……この世界の魔物と戦えば経験値が入ってレベルアップが出来るって聞いたのですが……本当ですか?」と俺が聞くと……。
クロエは答えたのである。
「そうだ。俺はお前達と話す前に、『創造』の力を使い「ステータス」を見えるようにしてやった。そのおかげで、お前達のレベルや強さがわかるようになったのだ。そして、その数値はお前達が「元いた世界での身体能力や知識」を基準として計算されている。
そして……その「レベル」というのは、この世界では、魔物を討伐することによって上がると言われているものだ。そして……そのレベルの上げ方は基本的には2種類ある。
一つは……この世界で生活して普通に強くなっていく方法だ。そしてもう一つは、強い「人間族の英雄」や「特別な存在」が使うとされる……「固有技能(スキル)」や「称号」、「特殊能力」を手に入れて、その「才能(スキル)」を手に入れることだ。……お前達の場合は、後者になるな……。
俺は、お前達の強さや素質を調べるときに、その力を使って、お前達を調べたんだ……。その結果わかったのは……タケル……「君」は俺の予想通り……かなりの力を秘めているようだ……。おそらくだが……今の時点で既に、普通の人間の領域を超えていて..この世界では「化け物」扱いされるような存在に近いと思われる……。しかし、そんな「化物の類」の中でもタケルの能力は……かなり上の方に分類されるな……。はっきり言うと……この世界に1人しかいないだろう……。それほどまでに強い「力」を持っている。
俺は……そんな奴とこうして出会うことができ……とても光栄に思う……。まあ……「化物が暴れている世界」だったら、俺はすぐに殺されてしまっていたかもしれないな……。……ただ……この「ニホン」のような……争いごとのない平和ボケの世界だったから良かっただけだぞ……。
そして俺はタケルに忠告しておこう。
『タケル……。お前には大きな力が眠っている……。だが……それはあまりにも強大だ……。使い道に気を付けなければ簡単に暴走してしまう……。だから……その力を完全にコントロールできるまでは……決して使わない方がいい……。……もしお前がその力で人を救おうとするのならば……その覚悟を決めろ!……そして自分の身を危険に晒されることになっても……その力を使うのであれば、「大切な何かを守る為の時」以外は絶対に使ってはいけない!これは約束だ……!』と俺が注意をすると、
「はい!!肝に命じておきます!」と力強く答える。そして……俺は次に「聖銀」を取り出して言う。
「そして俺はこの聖銀の装備一式を作ってやることにする。まあ……「勇者」は全員、この世界の神様が作った最強の武器を持っているから……俺も作ることにしたのだ。俺も神だけれど……俺より上の存在が作った武器だ……。つまり……俺の上司が作ったもので……俺の作る最高傑作の武器だな……。
まあ「勇者の武器」よりも性能は格段に落ちてしまうんだが……。」
と説明をしながら、「聖銀」を変形させて剣と防具にする作業を行うと……あっという間に完成する。それをタケルとクロエに渡したのである。そして俺は続けて言う。「ちなみに、この世界の一般的な「戦士」のレベルは30程度だから……それを参考に考えてくれ……。レベル50を超える者など滅多にいないはずだから……。俺が与えた装備は……この世界での最強クラスに位置するものだと考えておいてほしい。俺の見立てでは「この装備があれば……よっぽどの相手でない限り大丈夫だと思う」が……油断はしない方が良い……。慢心は死に繋がる。
だから、「この世界の住人」と戦っているときも、「命の危機を感じる状況」以外では「必殺技」は封印した方が良い……。
まぁ……それでも相手が……格下過ぎる場合は使ってしまうのも良いだろうが……それで自分が傷ついても後悔だけはするなよ。あと……この世界は地球のゲームのようにはいかない世界だと思え……。そのゲームのルールで行動していてはダメだということを忘れるな……。」と注意をした。すると、クロエさんも、
「私からもアドバイスをしておこうか……。クロエさんの話では……俺達は「勇者」と同じ能力をもっているという話だった。それならば、他の人達との違いがわかるかもしれないと思ってね……。まず最初に言っておくことは、この世界の人々とは戦うことを避けておいたほうがいいということ。特にこの世界の人達と戦うときは注意が必要なんだ。俺達は地球からこの世界にやって来たから、こちらの世界の人々がどんな生き物なのかを知らなかった。
でも、「地球」にも「異世界ファンタジー」の物語はある。そこで俺達も少しだけ調べたんだよ。
そしたら驚いたことに……ほとんどの作品の中で「地球の生物とは違う進化を遂げた魔物」とか「魔族の類いの生命体」とかが登場する。そういう物語をみていて、俺達は……地球の生物の「上位互換の生命体」なんだと思っていたんだよ。……だけど実際にはそうじゃなかったんだ……。」
と言っていた。そして俺も話に割り込んで、「俺も地球からこの世界にやって来たが、この世界の「ヒト」達をみた瞬間に、今まで感じたことがないような感情を覚えた……。そして、リリスは、さっき俺に言ってきたんだ。この世界の人々は「自分達の世界の常識で生きている」から……この世界のルールを知らないと大変な目に遭うかもしれないから、よく考えて行動をしないといけないよって……。俺達が、この世界で生きていこうと思った時に、必要な情報を教えてもらえたよ。感謝します。ありがとうございます。」とリリスに感謝を伝える。リリスが俺に笑顔を向けながら「ふふんっ♪そうでしょう?私ってば凄いんだからねっ!」と言っていた。俺もそれに同意すると、
「うーん……。私としては、私の妹のことを「可愛い子」として認識してくれているから、「この子がそう言うなら……」ってことで、ちょっと協力してあげようかなっていう気持ちだったんだけど……。でも……結果的に、良い情報をくれたみたいだしね……。良かったわね。ラティーファちゃん!」
と言った後にクロエさんも
「確かにクロエさんが言うように私は可愛いものが好きでね。ラティーファも妹として可愛いと思っているのよね! それにね……私が思うに、あの子……本当は頭が良いんじゃないかしらね……って思ってたし……。ラティーファが見せてくれたスマホの動画を見た時からずっと疑問を感じていたんだけどね。あれは何の意味がある動画だったのかなって思ったから……。まあ……「この異界」に来てからは「魔物」を倒すと強くなっていくって聞いたし……そうやって戦っていく中で……色々とわかってくるかもしれないわ……。だから……今はまだあまり深く考える必要はなさそうだから……。今は、クロエさんにいろいろ教えてもらったり、鍛えてもらえるチャンスをもらったってことを喜ぼうぜ!」と嬉しそうな顔をして言っているタケルであった。
名前……「田中拓海」
(偽名……「リリア・ルーン」)
年齢……15才 種族……「ヒューマン族(?)」→ レベル……「999」
→ステータス……「生命力」
99,996(25,000+0)→
「攻撃力」「防御力」
99,900(250,000+10,000×2)」「素早さ」
9,990(20,000×4)→
「魔力」
999/99.98(15,000×4)→
「耐性力」
99,700(30,000×2)
状態……健康(異世界転生によるステータス上昇中:全ステータスが1秒毎に0.1倍増加していく効果有り)「幸運」
100→∞(※ステータスが下がる効果は対象外です。この効果は重複して適用されます。)「体力」
101,000(10,100/10,001)「魔力」
10,000,000(200,000,000)
職業……冒険者「ランクS」(上限到達済み。ステータスが上昇したことにより、更にランクを上げることが出来るようになりました。しかし現在はランクSSのタケルと一緒に活動しています。なのでランクは上げていません。ランクを上げると「神の領域」まで進むことになります。それは嫌なんですよねぇ……。面倒くさいし……なんか嫌じゃないですか?それに、そもそも今の俺達の現状の実力は「神」と互角に近いと思いますよ。「神の域」に行く必要はないと思っています。ちなみに、この世界の神様と会話をした際に「ランク」の話が出たのですが……「君達2人のランクが、これ以上上がってしまうと僕と同等になってしまい……一緒に遊ぶことができなくなってしまうから……僕の権限でランクを上げないようにさせてもらうよ!」と言われてしまいました。俺とタケルが、この世界で一番の冒険者として、「勇者」達のサポート役になれるようなら「勇者」の手助けをしようかと考えていたんですけど、神様の上司である別の神様から止められてしまったので……ランクを上げてもらっていないだけです。タケルも俺も「冒険者の神様」という特別な存在になっているみたいなので、「勇者」以外の人たちには興味がないんでしょうね。という事で、「勇者」が「魔王」を倒してくれるまでは何もせずに待機するつもりですよ。「勇者」をサポートする存在になれたら面白いなと思っていましたが……どうやら無理なようですね。残念なような……嬉しいような……複雑だな……。」と複雑な表情をしているタケル。ちなみに、俺はそんなにランクを上げたいと思っていなかった。というより、俺は自分の強さにそこまで拘っていないのだ。俺が拘っているのは自分のスキルだ。
このスキルを活かせるのであれば、俺はいくらでも強くなりたいと思っている。俺が考えている理想の「強者」の姿は、自分が「弱者」になったとしても大切な人や物を守る事ができる「真の強者」でありたい。それが俺が望む強者であるからだ。まあ、俺はこの世界で最強を目指すとか……世界を救う勇者様になるだとかいった、そういった事は別に望んではいないのだ。
ただ……自分がやりたい事が出来れば良いのだとは思っている。俺は自分が一番好きなことしかやる気にならないからな!だからこそ、「勇者」のような「世界の平和を守る」なんていう大義的な考えは全くもって理解出来ないのだ。まあ、タケルとクロエさんに関しては、「勇者」という「役割を与えられている」から、仕方なくといった気持ちもあるかもしれないが……。ちなみに、俺が一番に望むことが「自分とタケルが楽しむ」という事になるわけだ。だから、「魔王」を倒した後の事も俺は真剣に考えていた。というより、タケルも一緒なのだが……。そして俺がこの世界で叶えて行きたいと願うことは、タケルとの再会だ。そして家族みんなで暮らすことだ。だから俺達は、この世界で楽しく生きるために「勇者」が倒すべき相手を全力で倒して行くことに決めたのであった。そのためにまずは……クロエさんの話では「勇者のパーティーメンバー」に会えることになったらしい。「女神」に確認すると……今すぐに「会うべき」ということだったらしく、すぐに「会うことになった」のだが……俺達は……正直なところ……少しだけ戸惑っていた。というのも、「勇者」は俺達の予想とは違った姿をしていたからである。そして、その勇者は男ではなく女で、そして見た目も普通の少女にしか見えない人物だったのであった。
「はじめまして!私は「リーシェ・レイン」と申します!「勇者召喚」によりこの世界に呼ばれてきました!」
と、少女が元気にそう挨拶をしてくれたが、クロエさんも驚いているようだったが……。俺も少し驚いていた。何故なら、目の前にいるこの子が「異世界転移モノ」の作品に出てくる「勇者」のように……俺の目には見えていたからなんだ……。俺のイメージの中の「異世界転移モノ」の主人公達は皆、イケメンであったり、可愛い女の子だったりしたんだよ。だけど……この子も「可愛い」と言えばそうなんだけど……何かが違うんだよなぁ……。「美男子」と言うほどではないにしても、整った顔立ちをしていて、「アイドル」とかにいそうな感じの子だなと思った。
そして何よりも、髪の色がピンク色というのが特徴的だった。アニメの世界とかに出てきそうな、いわゆる「美少女」というやつだと思う。ただ……服装がちょっとおかしい。普通はこういう場合……「ファンタジーRPGの世界に迷い込んだ!」とかだったら、鎧とかローブとか……それっぽい服を着ているもんだろうと思うんだよ……。俺の知っている知識では、この子は「現代日本風の少女」に見えているんだけど……俺だけかな?でもこの世界にも似たような感じで「ファンタジー世界の住人達とコミュニケーションを取っていく」作品は多いから……この世界の人々にとっては、特に変でもないのかもしれないけどね……。とりあえず、今は話を聞くことに集中をすることにしたんだ。
俺とタケルが「鑑定」を使った結果……ステータスの数値などは全て不明という結果になっていた。これは、まだ完全にレベルが上がっておらず、「能力が未知数だから、数値化出来ない状態になっているのではないか?」とのことで、今はレベル上げを優先した方が良いのではないかという結論に至っている。ちなみに、タケルがステータスを「偽装」した状態で「鑑定」を発動させたのだが、俺の場合は、この子の事を何もわからなかったそうだ。つまり、この「リーシェ・レイン」という名前は偽名ではないかと考えられるが、この子の本名が偽名なのかは、今のところわからないようだね。クロエさんの「神眼」で見てもステータスを見ることは出来なかったので……やはり偽名の可能性の方が高いみたいだった。この子は一体どういう子なんだろうか……?……俺がこの子と会ったときにイメージとして持っていた「勇者像」とは全然違っていたから……。クロエさんが、一応は警戒しておくようにと言っていたが、本当にこの子を信用しても良いのかどうかを迷ってしまう……。…………「うーん……。でもクロエさんは、あの人のことを信用して良いと言っていましたが……。でも私は……あの人を信用できるとは思えないんですよねぇ……。あの人は「神眼の神眼」を持っているんです。私はあの人が私達に危害を加える可能性はないって分かっています。それに、あの人とお兄ちゃんはとても仲が良いし、あの人もお姉ちゃんを信頼しているから大丈夫だと思います。……多分……ですけど……あの人は優しい人です……。だって私が困っている時に声をかけてくれたんですもの!それに私が「魔物に襲われたところを偶然助けただけです。それに、私はあなたに興味はありませんよ」って、ハッキリ言ってくれたし……。うん……そうよ!きっとそうだわ!この子は……嘘つきなのよ!絶対にそうだわ!!……私の「勘が告げてる」……そうに違いないわ!!! 私は「田中拓海君がこの子に気があるからこそ、この子を助けに入ったのだ」という仮説が間違っていたことを、はっきりと自覚しました。「タケル君は私が好き。タケル君の心を独占出来るのは……この世界で唯一……この私だけだと分かったのです。……それにしても、この子のどこがいいのでしょうか?「異世界転生モノ」の主人公がヒロインと出会う時に「おっぱいが大きい」という共通点はあるんですけどね……。やっぱりこの子のどこに惹かれたというのでしょうか?全くもって理解出来ません……。こんな小娘と、お風呂まで入って一緒に過ごすなんて、信じられないわよねぇ~。この子が「勇者様」のハーレムに入るだなんて……有り得ないことでしょ!?タケル君が可哀想じゃない!!」……と、心の中で思ったところで、この子は嘘が下手で「本音が丸わかりになっている」ことに気づいたのでした。なので、クロエさんの言っていることは正しいのでしょう。私は「タケル君の心を奪う可能性のある」この存在を、あまり信用するべきではないと判断しました。「神」の力によって、私達が「勇者」のパーティーメンバーとして、これから行動を共にすることになるのでしたら……ある程度は信じないと駄目でしょう。まあ……クロエさんも「この子は大丈夫」って言っていたけどね……。それでも「疑っておくべき対象」だと思う。タケルさんはこの子の事を「妹みたいに思えるんだよね」とか言ってるんですけど……「勇者召喚されてやってきた、タケルの妹」とか設定は作れたりするんじゃないかなと妄想したりしてしまいました……。
そして私は、「異世界」という未知の世界に来てしまい、しかもタケルとは引き離されてしまい……一人ぼっちになってしまい、不安で怖くて仕方がありませんでした……。でも、この世界のどこかに「お友達」になる事が出来そうな、同年代の男の子がいるのであれば……仲良くなりたいと思いました。そこでクロエに相談したところ、クロエが紹介してくれるということで、この女の子を紹介されたのです。この子の名前は「田中」という苗字だと聞いていたので、「もしかして「異世界召喚モノ」の作品に出てくる勇者様なのでは……?と思ってしまうような見た目をしている、可愛らしい少女である。この子がクロエの友人である事は本当の事らしくて、クロエもとても心配をしていたらしいのだ。そんな事もあり、私はこの子に対して「クロエの友人」という立場を利用しようと思って話しかけてみる事にした。
まずは自己紹介をしてみることにする。名前を名乗ったらこの子は少し驚いていたような気がするけれど、その後には「はじめまして。私の名はリーシェ・レインと申します」と名乗り返してくれました。……どうも「勇者」というのは嘘なのね。この子は自分を偽ってクロエに取り入ったのかしら。私達も「クロエ」という名前を名乗るのだけど……何故かこの子の顔は曇り空になってしまった。まあそれは別にいいのだ。……でもこの子がタケル君に気があったとは意外だなぁ。クロエの話を聞いていると、「田中さんに好意を持っていた」とは思えなかったから。「勇者に命を助けられて、恋に堕ちる」とかあるかもと思ったけど……そんなことはなかったみたいだね。そしてこの子は「異世界」に来たのが初めてだそうで、かなり不安に思っていたみたいなので……クロエに「お姉ちゃん」をお願いしますと、挨拶しておきました。そしたら「リーゼのお姉さんにはなってあげても構わないけど、リーゼが「勇者に恋する乙女」になってもいいっていうのなら、協力してあげる!」とか言われちゃったんだけど……。もうっ!!何がなんだか分からないんだけどぉ!! うーん……。とりあえずこの子のことはあまり好きになれないんだけど、この子は本当に「勇者」ではないんだろうね。この子が持っているスキルも、ステータス数値も全て不明なままだそうだ。だから私は、タケル君との仲を引き裂こうとしないならば、タケル君と付き合ってもいいとクロエに許可を出す事にしたのであった。
この「リーシェ・レイン」ちゃんが、俺達の仲間に加わることが決まったわけだが、クロエさんは、この子とタケルの関係を知っているようで、そのあたりが関係しているのではないかと思っているようである。この子は嘘をついていて、何かを隠している可能性もあるので油断は出来ないとは思いながらも、タケルが信頼しているのなら大丈夫かもしれない。……俺はそう判断したので、「鑑定」を使うのを止めておくことにした。この「田中拓海君が、この女の子のことを「異世界転移してきた勇者じゃないか」と思っていたようだ」という情報を、他の人達に教えておくべきかクロエさんと話し合ったのだが、今のところは誰にも伝えずに内緒にしておいた方がいいだろうと言う事になったのだった……。……でもこの子は一体何者なんだろう……? 俺がこの「リーシェ・レイン」と名乗った少女を見たときの第一印象としては「ファンタジーRPGのキャラクターのような格好をしていて可愛い」というものになったんだ。ただ……「タケル君のことが好きなんじゃないか?」と思ったときには……なんとも言えない感情に襲われていた……。……俺と同じようなことを考えた人は多いと思うんだよ。俺が今まで読んだことのある「異世界転移モノ」の主人公たちってさ……大抵は美男子だったり可愛い美少女だったりするからね。俺がイメージとして持っている「勇者像」では、美少女だったりしたんだよ。この「リーシェ・レイン」と名乗る女の子を見ていると「あれ……なんか違う……」とか思ってしまっていたんだ……。だから「勇者じゃない」と分かってしまったとき……凄くホッとした……。「俺と同じ境遇でやってきた主人公」ではなく、別の人なのではないかと思えたからな……。それにこの子も、「勇者になりたい訳じゃない」と言っているし……。まあ、クロエさんの紹介もあることだし、「悪い人でないことは間違いないだろう」と今は思っているんだがね……。あと、この子が持っている能力や魔力についてなのだが……クロエさんも見た事が無いというので……「特殊な才能がある」という程度にしかわからないのだ。この子自身も、「私にどんなことが出来るのでしょうかね……私にはまだわかりませんが、出来るだけ努力して頑張りたいと思います!!」……って言ってたくらいなので、本人にも良く分かっていないみたいである。……ちなみに……「リーシェ」はクロエさんの友達という事もあり、これから「勇者仲間」となるので、クロエさんに呼び方を任せることにしたのである。
まあ「リーシェ」と呼ぶことに決まったから、今後はそれで呼び合うことになったのだ。
クロエさんから色々と話を聞くことが出来た俺は、「今日から早速、この世界での魔法を使った特訓を開始する」と言って、魔法の訓練を始めたのだった……。
まず最初に、俺が試したのは「体内のMP量を調べる」というものである。これはクロエさんから教わった方法で、俺の体内にある「生命力」の数値が、「HP」として表示されていたのは覚えているだろうか? それを確認するための方法の一つがこれだというのである。
そして、俺が「自分の体の中の生命力を確認出来るかな……と思いながら念じてみてくれ」と頼むと、タケルは言われた通りに念じ始めたのだ。すると「おぉ!!なんか体が光って……!?……あ……消えていったぞ……。これが僕の今の体力なの!?」と言い出したので……「どれ?見せてみてよ」と言ったところ、ステータスカードを見せてもらったら……本当に体力値が「100」になっているのだ。「え!?これってもしかして!!……本当にステータスが見えるようになってるのか!!?」という感じになっていたのだ。
そして俺は次に「レベルの確認が出来るかやってみてくれないかい」とお願いしたのである。
この方法は「鑑定のスキルを持っている者」が行えば簡単に分かるそうなのだが、「異世界からやってきた」という存在でしかない俺には出来ないことだったらしい。しかし、今となってはその方法を知ることが出来ていて、「鑑定」のスキルさえ使えば誰でも調べられるような情報なので、クロエさんにお願いする事にしたのだ。クロエさんはすぐにその方法がわかったらしくて、あっという間に確認が終わっていた。……そしてレベルが2だとわかると……俺は思わず嬉しくなって、「良かったじゃないか!!!これで君のレベルが20を超えた時、新たな力が手に入るはずだから、楽しみにしておいてくれたまえ」と興奮して言ったのである。クロエさんによると、普通はレベルが1の状態で「異世界」に来てしまうのだとか。そこでクロエさんの場合は、神様から「異世界生活に役立つチートスキルセット」が贈られて来たのだという。俺も、何か貰えるといいんだけどなぁ。
とりあえず俺は「鑑定」のやり方を教えてもらい「レベルの確認」を行ってみたのである。まず初めに自分の「体の状態を調べたいと願う」「生命力は存在するか」と考える。すると俺の頭の中で、ステータス画面に映し出されるようにイメージする。
『種族:人間』
名前:タケル・イズモ・ヤマト(神)
状態異常なし
職業:無職
Lv.6 性別:男(変更不可)
HP:1024
筋力:1540
敏捷性:2560
魔力:5080
運 :512 特殊スキル 創造の極意 魔道具作成 付与効果 聖銀の剣+30 ミスリルの槍+20 魔道具一覧
(詳細検索機能あり)
1 アイテムボックス・リスト・ステータス閲覧
・インベントリ 2 マジックバッグ 3 ステータスチェッカー 4 翻訳リング
※この「ステータスチェック」の「Lv.2」の能力によって表示される情報は「現在の俺」の情報であって、過去から現在までの全ての情報を表示できるわけではないようだ。過去の履歴に関しては……鑑定する対象を限定する必要があり、それが出来なければ情報が多すぎて見れなくなるということらしい。例えば……「この世界に来る前に、何をしていたか?」といった場合とか……そういったことを設定しておく必要はあるそうだ。
さっき説明した通りで「レベルが3以上になると次のステージに進むことが出来るので……頑張ってほしいとの事だ……」という話を聞いた俺は、改めてクロエさんのすごさを実感した。彼女はこの世界のことを知っているだけではないんだと……。
それから……ステータスについての説明も受けたので簡単にまとめておこうと思う……。
ステータスとは……この異世界に存在するすべてのものに設定されている「個人情報」のようなものであるようだ。そしてステータスを確認するための魔法は「鑑定」の呪文を使うのが基本であり、他には、一部の魔法使いたちが使っている「詠唱」の技を真似る事によって見ることが出来る場合もあるという。ただその場合は「他人の」ものを見ることになってしまうので、「自分の」ものを見られるようになるためには「修行」が必要であると言われているらしい。ちなみに「魔力の属性」の相性があるようで、水や土などの「地・水・風・火・空・木」などが得意な人は、「鑑定」を使いこなすことが出来るようになりやすいという。
クロエさんの話を聞いていたときに気になったのが、その「魔法属性」というのがどうなっているかということだ。その疑問を聞いてみたのだが……俺達の「勇者パーティ」の人たちは基本的に「聖魔法の攻撃が出来ない代わりに、治癒魔法の適性があり回復役になれる可能性が高いメンバーで構成されている」という事だった。
この世界には、「五つの大魔法系統」が存在し、そのどれもを扱える者は滅多に存在しないほど稀少なものなのだが、その魔法の系統は、基本的に「光・闇・火・土・水・空」の順番で強力だとされているそうだ。その中でも、さらに「神聖魔法の攻撃が出来ずに……」というのは珍しい存在になる。というのも、勇者以外の人たちは……「聖魔法は使う事が出来ないのだ!」と言われたときはびっくりしてしまった。……そう言われてみると確かに納得したのだ。俺はこの世界にやって来た瞬間に「神聖魔法だけは無理だ!使えない!」と言われていたんだが……その理由が……やっと理解出来たのだ……。
あと……ステータス画面を見て驚いたのが……なんで「年齢」の項目に数字が表示されていたんだ?と思ったが……それはこの世界の人間が「年を取っても外見が変化することはないため」なんだそうである。だから「何歳に見える?」なんて聞いているんだろうけど……「タケル君って何才なんだい?」って聞いたところ、17歳と答えられたんだ。見た目的には……中学生くらいにしか見えないので……本当に驚いてしまった。……俺は何度この子の事を見たら気が済むのだろうか……と思ってしまうくらい……何回見ても……やっぱり可愛い女の子にしか見えないのであった。
さて……これから「鑑定」の特訓をするんだから、しっかり集中しないといけないよな……。俺は気持ちを新たにし「鑑定」を発動させる。そして、この女の子のことをよく見てみる。……この女の子は可愛い。……この子は美少女である。でも「タケル君のことが好きなんじゃないかな……」と思っていた。……あれ?俺って何をしているんだっけ? えっと……この女の子の名前は「リーシェ」ちゃんというんだよね。年齢は15歳で……身長150センチくらい……体重は不明。スリーサイズは「上から……」あぁあああああ……なんか余計なこと考えちゃったじゃないか!!まあでも……そんな感じの子だってことだ。
それでこの子には「リーシェ」以外に、クロエさんが「レイン伯爵令嬢で、私の友達なのよ!!」と言っていたのだ。クロエさん曰く、このリーシェはレイン家の長女で、「次期伯爵夫人候補筆頭の天才娘で将来有望の期待のルーキーなんだよ!!」……という感じに紹介してくれたのだ。ちなみにクロエさんは、「レイン家に古くから使えている家の出身」らしく、伯爵家の執事も勤めているので、リーシェとは幼馴染みの関係だという事だった。この子、小さい頃から魔法が好きで、色々な知識に興味があったらしいのだ。それで「王立学校」では首席卒業の優等生で……しかも「光魔法の才能」がずば抜けて高くて、「光の巫女」として、この国の重要な任務を任されているのだという話だった。
さて、俺がステータスを見るためには「対象が視界に入っている状態で」「対象に対して意識的に魔力を流すイメージ」をして「鑑定」の呪文を唱えれば出来るとのことだった。早速やってみよう。そして「目の前にいるリーシェ」の全身をイメージして、体の中に流れているはずの「生命力」という存在を探し出してみることにした。
すると突然頭の中でステータス画面のようなものが現れて、そこに様々な文字が浮かび上がってきたのである。そこには、「種族」「名前」などが書かれていたのだが……俺は思わず目を大きく開いて驚いてしまう。……なぜなら「人間の子供」が表示されているからだ!!俺が驚きのあまり固まってしまったら……それを見ていたクロエさんが慌てていたのだ。
「タケル君!!大丈夫!?いきなりどうしたの!?何かあった!?……あっ!?もしかして鑑定出来なかった!?」と言われて、俺は思わずハッとしたのだ。俺が自分のステータス画面が表示されているように念じて「鑑定」と呟いてみたら「鑑定」と言葉に出たので、「鑑定」と念じて「鑑定」という言葉を出すことが出来たのだ。そのことを説明するとクロエさんは、少しだけ安心した顔をした。
「鑑定の呪文を唱えることが出来て、鑑定結果が表示されるようになったのね……。これであなたが本当に異世界からやって来た「異世界人」であることが証明されたわ……。まさか私達と同じことが出来るようになる日が来るなんて思ってもいなかったから……本当に嬉しい……」と言い出したのだ。
そしてクロエさんから「今のあなたのレベルが5になっている理由は、先ほどの「スキルセットアップボーナス」と「神の祝福」の影響によるものなの。この世界に来たばかりの頃のあなたにはレベルは5しかなかったんだけど、その時に貰った2つのスキルによって経験値の取得率が大幅に上昇したことによってレベル5になっていた。つまりこの世界で生きるために必要な経験を積んでレベルが上がったというわけね」ということを教えてもらった。
俺のステータスを見させてもらうと……クロエさんも驚くことになった。まず「レベルが1の時にステータスの数値が凄かったんだけど……今見ると……さらに上がっているじゃないの!?レベルが2になったら更に上がった……?レベル3になってまた数値があがった……!!もう意味がわかんないわ……。そして「状態異常なし」っていうのもありえないのに……ステータスがオール1000超えって何事よ!!スキルのレベルも高い……!!鑑定に関しては……私と同じくらいのレベルになっている……。この能力の「詳細」を確認させてちょうだい……。えぇえぇ!!「鑑定」の「Lv.2」を持っているじゃないの!?……「異世界から来た人間は鑑定が出来ないので諦めた方がいい」って言われたけど……本当だったのね。それにしてもこんなにも才能に恵まれていたなんて……本当に驚いたわ」という感想を漏らしていた。
俺自身も驚いたのだが……クロエさんよりも、俺の能力が高いことに驚かされた。クロエさんはこの世界でも「超が付くほど優秀な人間」であり、ステータスに関してもレベル3の時には既に、一般的な冒険者と比べて、圧倒的に上のランクに位置するほどの能力を持っていたそうなのだ。それがレベル5までいくと、レベル3の時とは比較にならないくらいの強さになるらしく、レベル6のクロエさんのステータスは「この世界の平均的な戦士と比べると10倍くらいの強さを持つことになるらしい」ということだった。
クロエさんが、なぜそこまで「レベル5の状態」でステータスが高かったのかというと……「神によって「勇者」として選ばれてしまったためだ」と言われたのである。その話をしたクロエさんの表情は曇っていて、どうやら「神に選ばれた」という事実はあまり良いものではないようだ……。
俺はその話を聞いた後で、気になったので……「クロエさんは神様の加護を受けているんですか?」と聞いてみると「私の場合で説明をするならば……私の持つ全ての能力は、元々の私に与えられていた能力に上乗せされて強化される形になっております。なので私がもともと持っている力に、他の神々の力が加わっているのです……。」ということを説明されたのだ。
どうやら神様には複数の種類が存在していて、「光の神・闇の神・火の女神・水の女女神・木の男女精霊」が主神であり、その下には、「地母神・海母神・冥王神・雷公・獣王・戦乙女・軍神・豊穣・月詠・天照大御神」などがいるという。この全ての種類の「主神」に気に入られると「神の加護」を受けることが出来るそうだ。俺の場合は「大地の神々」と呼ばれる「地の主神」に認められたらしく「アースガルド」に住む人々の中では……一番多くの神の加護を受けることに成功しているという話だった。……確かに俺の記憶の中に存在している神様の名前には……「地の神様」という記憶があるな……。そして……その「加護を受けた時」のことだが、クロエさんの話によると……「勇者が召喚された際には勇者と一緒に居ないと、私は勇者様の力になれないという神託がおりてきたので一緒に居ることにした。……でも……本当はこの役目は私ではないはずだったのよ……。だって……この「勇者召喚」に失敗は許されないから、絶対に失敗しないように、私たち神々も全力でサポートをしていたし、実際に何度も「勇者召喚の儀」を行っていたんだけど、結局成功させることが出来なかったんだもの。……だからこの役目は他の誰かに回っていたはずなの。だけど「私の加護を受けていたから」という理由で選ばれたのかもしれないけど……正直納得出来ないという気持ちもあったわ。この役目をやるなら……他の神々の方が良いと思っていたんだもん。だからこの話は断ろうと思っていたの……」
俺も神様から「お前の運命は、あの子を救う事で定まっているから、頑張って助けてやって欲しい」と言われていたのだ。
俺は、クロエさんに「俺は何をすればいいですか?」と聞いたところ、彼女は俺のことを抱きしめて泣いてしまったのだ。……「どうして私のことなんかを助けたいと思ってくれたの?……私はあなたが思うような……普通の女じゃなかった……。ずっと一人で生きて来たんだから……」と言って泣き出してしまったので、俺は……とりあえず落ち着くまで待つことにした。……それからしばらくして落ち着いたのか、彼女が俺の顔を見ながらこう言って来たのである。「私はあなたのことが好きになってしまいました。あなたのことが心配で仕方がないのです。あなたの力になりたいです……。そして、あなたのそばにいさせて下さい……。これからはあなたの「恋人」として生きていきたい……」
そんなことを言われてしまったので、俺はびっくりしてしまう……。でも……クロエさんは……真剣な顔で……とても可愛くて、そして美人さんで……そして魅力的なのだ……俺はつい彼女の事を可愛いなと思い、ドキドキしながら見てしまう。
「タケル君は可愛い女の子が好きだよね。私の胸が大きいことも魅力的だと思うんでしょ!?ほら見て触ってもいいんだよ」と言われて、思わず「ゴクリ!!」っと唾を飲み込む俺だった。そして、俺が「はい!!」と答えて手を伸ばすと……なぜか俺の体が動かない!?俺は金縛りにあっているのだろうか?と思ったらクロエさんが「私を鑑定してみて!!」とお願いされたのだ。
俺が「鑑定」を使うと、俺とクロエさんは光の粒子のようなもので包まれている状態で、「光の鎖」みたいなものがお互いの手から伸びている状態だった。クロエさんが「これってどういう状態なのか分かる?」と聞いてきたので……俺は鑑定結果を口にする。「これは……多分ですが、お互いに好意を持った異性同士が行うと出来るものです……。確か相手のステータスを見ようとする場合は、相手に自分のステータスを見せると成立できるんですよね?」と説明すると、クロエさんは少し恥ずかしそうな感じで、そして嬉しそうな雰囲気になり、そして俺に「キスしたい……」と言い出すので、俺は迷うことなく彼女に近づいて、彼女と口付けをした。
こうして、俺たちは、お互いに心と体の相性が最高だということが分かったのである。それで俺達は、正式に恋人同士となったのであった。俺もクロエさんもお互いに幸せそうな顔をしていたのが印象的だった。俺はクロエさんの事がもっと好きになってしまったのだ。そして……俺の「初めての恋」が始まったのである……。……俺の「初恋の人」になった。……この世界の人間というのは……寿命が長いため、年齢を重ねるごとに「年をとる速度が緩やかになる傾向にあり、見た目は若くても年齢は100歳を越えているというケースは普通に存在する。ちなみにエルフやダークエルフなどは500歳以上が当たり前のようだ……。そしてこの世界の人間はレベルが上がっていくにつれて身体能力がアップしたり、病気に対して抵抗力がつくという。しかし、レベルアップをすると経験値を取得する必要があり、取得する方法は2つ存在するらしいのだが、そのうち1つは戦闘行為を行い相手を倒す必要があるのだが、もう1つが性交を行うことで得られるらしいので、性行為はステータス値の上昇に繋がるらしいのだ。……俺の感覚ではセックスなんていうと、すごく不純な行為をイメージしていたので、「えぇぇ……まじで!!こっちの世界で性欲とかは、どうやって発散したらいいんだよ……」って思ってしまったほどである。俺って本当に異世界に来て良かったな!!と思える瞬間でもあった。
クロエさんによると……「異世界から来る人は全員特別な能力を身に着けた状態でこちらの世界に来る場合が多いんだけど、そういう人は大体、最初から高いステータス値になっているわね」とのことだったので……俺の場合は神様から貰えるボーナスのおかげでレベルが上がらなくても高水準のステ-タスになっていたようだ。俺のステータスが凄かった理由もこれで判明した。……ただ、神様はクロエさんに話していなかったことがあるみたいだ。
神様曰く……俺の場合で言えば「ボーナスポイントを全部使ってステータスを上げた場合……とんでもない能力になるはずだよ。……君の場合……「スキルをセットするためのスロット数が異常に多いからね」と教えてくれたのだった……。つまり……神様は、「全ての種類の『スキル』を覚えられる可能性があるし、『スキルのレベルを上げるためのポイントをたくさんゲットすることが出来るだろう。さらに全ての系統の魔法を習得することも可能だね。あと、君の持つ特殊能力の中には「スキルレベルの上がりやすいものが存在している」ということを教えてもらったのだが、俺としては、まずは「魔法を覚えるために努力をしてみようと思っている」と言った。クロエさんも賛成してくれたのだが、「私が使える魔法をタケル君のものに書き換えて、それを伝授しようか?」と提案された。俺はその提案を受け入れることにする。なぜならクロエさんの魔法は強力だし、覚えることが出来た魔法の数も圧倒的に多かったからだ。俺はこの異世界に来て初めてワクワクしてきた!!と本気で思ったのだった。
「ステータスのチェックは終わりましたでしょうか?」と俺達に声を掛けてきた人が居た。俺が振り返るとそこには「メイド服姿」の若い女性が立っていたのである。彼女は「お待たせしました」と言って深々と頭を下げていた。そして、その若い女性はクロエさんを見て「あなたはクロエ様ですね?」と質問した。クロエさんは「私はクロエですが、あなたはどちら様で?」という感じの返答をしていた。俺は神様との話に夢中になっていて、周りに居る女性に全く気が付かなかったようだ。その女性はクロエさんの反応を見るなり笑顔を見せて自己紹介を始める。
彼女の名前は……サーヤ・ヒナ・アイリスといい……どうやらこの国の姫様らしく……年齢は16歳で……「クロエルド」という名の国の中で一番の力を持つ領主の娘であり……次期女王でもあるそうだ。……ちなみにこの世界の通貨について説明をしておく。……「アースガルド王国」「アストルフォ王国」「グランニール帝国」の三国においては共通の通貨が存在する。
銅貨→10枚で銀貨となり、100枚で金貨になる。……この硬貨は特殊な素材を使用しているので、偽造することが非常に困難らしい。ちなみにお金の価値は日本円に換算した場合、以下のようになるそうだ。……小銭(銅製)→1~3円相当……大金=50~1000円前後
※「アースガルド王国」「アストルフォ王国」において……共通貨幣制度が採用されている理由は「同じ価値を有する」という理由からで……他の国から攻め入られたり、あるいは侵略された場合に両替する必要がないために、このように決まったという話なのだ。また、両替する場合も、どこの国に行っても同じ貨幣が使えて、しかも安いということから……両替をする人のほうが少ないぐらいなのだという。この話を聞いた時は……「確かに日本は紙幣に統一されていて、どこでも同じように使えるけど、海外では、ほとんど通用しないからなぁ……」と思ったのだった。……そして「アースガルズ大陸」には「3種類の通貨」があるそうなのだ。
「アースガルド王国の銅貨」「アストルフォ帝国の白貨」
「グラニル皇国が発行した白金貨」という通貨があり……それぞれの通貨には交換レートが設定されており……「1:0.0925」と設定されているらしい。ちなみに俺の持っていた財布に入っていた金はこの世界で使用することが出来なかった。どうも「俺が持っているお金を変換」して使用出来る金額に制限が掛けられているらしく……例えば金貨を持っていっても、それは「金貨の形をした紙」と認識されてしまい、換金は出来ないのだと教えられたのである。俺の所持金で買えるものと言えば、宿屋の代金として支払った宿泊料の支払いと、クロエさんから受け取った治療代だけだったので……俺は仕方なく金貨を全て引き出すことにして、代わりに自分の「財布」の中にあった現金を取り出したのだ。
クロエさんは……自分の「収納魔法」を使って取り出した自分のお金を見せてくれたのだが……なんと彼女の持つ「アイテムボックスの能力の容量の大きさに驚かされる……。「えっ!?そんな大きな物が入れられるの???」と思ってしまったほどだ。「クロエさんはどのくらいの物を収容出来るんですか?俺の知っている「アイテムバッグ」とは全然違うし……」と思って、俺は聞いてみると、どうやらクロエさんが使用している「アイテムバック」という魔法は……普通の人の魔法レベルでいうところの最高レベルの5段階中の……上から2番目に位置するような能力だそうで……一般的な人間が使うことのできる最大レベルの4段階の物と比べると、はるかに優れた性能を誇っているとのことだったのだ……。「私達、エルフの魔導士のレベルでいけば、この大きさでも1つ分が入るかどうかね」と言われたが、よくわからないので……俺は黙っていたのである。……「収納スペースの広さは使用者本人の力量次第だけど……でも私の使っているこの鞄の場合は……おそらく最大で「30キロ」まで入れることが可能よ」……とクロエさんは自慢気に教えてくれたのであった。
話を元に戻して、その女性の名前は……リリア・フォン・サニアという名前のようで……クロエさんの妹だということが判明した。彼女は俺とクロエさんの顔を見比べながら、クロエさんの方に視線を移すと俺に質問をしたのだ。そして、「お姉ちゃんにこんな可愛い男の子がいるなんて知らなかったな……」と言っていた。……どうやらクロエさんの容姿については、かなりの評判が高いみたいだった。
クロエさんから「リシアと呼んであげてくださいね」と紹介されて、「よろしくお願いします!!」と言い挨拶をしたのだが……「お嬢さんがあまりにも美しすぎて見惚れてしまったわ」と笑みを浮かべたのだった。……俺は思わずドキッとしてしまったが、なんとか平静を保った。「あの……実は僕も……お二人のことは……前から知っていました」と言うとクロエさんは驚いた表情をして……「どうして?」と質問した。
俺はこの世界で自分が体験したことを説明したのである。……すると二人は、なぜか嬉しそうな顔をしていた。
「そっか……あなたは、そういう人生を生きてきたんだ……。大変だったでしょうに……。ごめんなさいね……。私たち姉妹のせいで辛い思いをしてきたかもしれないけれど、私たちは本当に後悔していないからね……。あなたに出会えて……こうして家族になれたことは幸せなことだと思っているのよ」
クロエさんは笑顔で俺に話しかけてくる。……そして今度はサーヤさんも話を始めたのだ。
彼女の本名はサーニャという名前で……年齢はまだ18歳だそうで……「クロエルド王国」「第7皇女」の身分を持つ、現王の孫娘に当たる存在で、この国の中ではトップクラスの力を誇る「宮廷魔術師長の肩書きも持つほどの凄腕」で、【精霊術】と魔法を組み合わせた独自の魔術を使いこなし……さらに、その見た目の良さから、多くの男性からモテているのだという。ただ、彼女は誰とも付き合うつもりはないらしいのだ。
リシアさんの方は「サニアの双子の妹で……年齢は19歳の「宮廷騎士団所属の騎士」でもあり、「アスティルト公国の大公令嬢」「王位継承権ナンバー3位」の称号を持ち、次期女帝になる可能性があると言われている人物」だそうで……彼女も「アストルフォ帝国の皇帝候補の一人」で「勇者の力を受け継いでおり……レベルが40あるので……かなり強いのよ」と自慢するように言ってきたのである。ちなみに、俺に鑑定結果を教えてくれた時に、彼女の職業は「剣士」で……スキルに「聖剣」を持っているということだった クロエさんとクロエさんの妹のサーヤさんは、「お互いの立場が似ているのよ」と言っていたのだった。
ちなみにクロエさんとサーヤさんは俺のことをどう思っているのか気になったのだが……クロエさんは俺に対して「大切な仲間であり……弟であり……そして愛する息子でもあるの」と言ってきたので俺は驚いてしまう。サーヤさんは「クロエルドの次期国王と、グランニール帝国皇帝の座を受け継ぐことになる人ですもの……いずれ私の義理の息子になるのよね?」……と微笑みかけてきていたので俺は苦笑いしか出来なかった。……ちなみにサーヤさんのステータス画面を覗く機会があったので確認したところ、サーヤさんのレベルは38だった。
ステータス数値を詳しく説明してくれたので簡単に説明すると……俺の数値が異常過ぎるだけあって……普通なら一般人で20あれば良い方なのだが、彼女のステータスの総合能力は、平均的人間よりも高いレベルだったのである。特に体力に関しては「100前後」もあり高い数値なのだそうだ。これは平均的な人間の平均値と比較すると……10倍以上もあるという驚異的な能力の高さだった。そして「クロエルド王国のレベル50超えの猛者に匹敵するほど……」というとんでもない数値を叩き出しているというのだ。
「俺って……なんか……みんなに注目されまくりじゃないですか!?ちょっと恥ずかしいです!!それに……なんか緊張してしまうので……クロエルド城に入る前に一度深呼吸させて下さい」
俺は二人に頼み込んだのである。するとサーヤさんから意外な提案が飛び出たのである。
「それじゃあ深呼吸が済んだら……私があなたと手を繋いで、一緒に歩いて行きましょう。きっと落ち着くと思いますからね」……俺はクロエさんに「俺一人で歩けるので大丈夫ですよ」と言ったら「……クロエ……あなたが彼に抱いている気持ちはよくわかるけど……ここは私に譲ってくれてもいいんじゃないのかな??」と言われてクロエさんは黙ってしまったのであった。クロエさんは……クロエさんのことが大好きな妹のサーヤさんに譲ることになったらしい。……俺は二人のことを見ていると、姉妹愛が強く伝わってきて、すごく羨ましいなと思ったのであった。
そして俺はサーヤさんと手を繋ぐと歩き始めたのだ。するとクロエさんが慌てて後を追いかけて来ていたのであった。クロエさんは「あっ!ずるーいっ!!!」……と言っていたのだが、サーヤさんが「はいは~いwお姉ちゃんは大人しく見ててね。あと、リシアちゃんもwww」と言う言葉を聞いて渋々後ろの方に戻って行った。そしてクロエさんは……少し残念そうな顔をして俺を見つめると……何かを考えていたのであった。……俺はそんなクロエさんを見て「クロエさん……そんなに落ち込まないでくださいよ」と言ってみたのだが……何故か嬉しそうな顔になっていたので……俺はよくわからなくて戸惑っていた。クロエさんは俺にこう告げた。
「アースガルド大陸に来てからの初めての冒険であなたを危険な目に合わせてしまって……ずっと後悔してるの……。だからね……あなたには悪いと思うけど……もう絶対にあなたを危険には合わせたくないから、あなたのそばから離れないようにするわね」……俺はこのセリフをクロエさんに言われて……胸がキュンとなってしまったのである。俺はそんなクロエさんの言葉を聞いて、なんだか凄く照れ臭かったのであった。
そして俺とサーヤさんは、ついに「クロエルド城内」に入ることを許可されたのであった。
俺がクロエさんと一緒に、グランニール城に足を踏み入れたのだが……中に入ると……さすがは「世界最強国」と言われるだけはあり……俺が住んでいた「日本」とは、比較にならないほどの「圧倒的な広さ」を感じた。建物もとても立派で……まるで中世ヨーロッパ時代の王宮をそのまま残しているかのように、豪華な作りになっている。「クロエルド王」と呼ばれる人物は……「グランハルト・アスターマン=グランニール」という人で……見た目が「若いイケメンの男性」なので驚きだった。……ちなみに年齢は23歳で……なんと、俺より2歳上だ。クロエさん曰く「お父様が生きている間はほとんど会うことが出来なかったし、亡くなってからもあまり連絡を取っていないからわからないわ」とのことで、どうやらクロエさんのお兄さんではないようだった。
クロエさんによると「現在の王であるグランハルトさんは、私たち姉妹が幼い時から「勇者」として活躍していて、私や妹にとっては「ヒーロー」みたいな存在だった」という話をしてくれて、俺もその話を聞いたら……「クロエさん達を助けたくて、頑張ってくれていたのかもしれないね……」と、思わず思ったのだ。
ちなみにサーヤさんにも聞いてみると……「お父様に会ったことはないの。……でも私はクロエ姉さまよりもお母様に可愛がられていて、お会いしたことがあるんだけど……優しい感じでカッコイイ人だったよ」と、笑顔を浮かべながら答えてくれたのであった。
クロエさんの話だと「この城の王様の部屋に行くためには、いくつかの試練をクリアしなければならないらしい」……ということで、まず最初に……「グランニール王国最強の騎士と模擬戦をして勝利すること」が最初の関門となるようだ。ちなみに、クロエさんやサーヤさんのように王族が直々に相手を務めることはなく……「近衛騎士団団長の肩書きを持つ「副団長クラス」の強さ」を持った人間が相手を務めてくれるそうで……その人が相手に負けてしまうと……「国王への謁見が許されない」ということになるのだという。……俺はこの話を聞いたときに、「えっ!?それは厳しすぎませんかね?」……と思わず呟いたのだ。
しかし……「グランニル王国は、他国と比べても異常なくらい、レベルが高く、戦闘能力の高い人たちが多いんですよ」とクロエさんは教えてくれた。「だからこそ……私たち姉妹は、他の貴族たちと違って、特別な待遇を受けて育ったの。そのおかげで私たちは「勇者」になることができたのよ」……とクロエさんは話したのだ。クロエさんとサーヤさんのお父さんの「グランニール国王」が亡くなってしまった後に起こった、権力闘争によって多くの血が流れ、たくさんの命が失われ、国の体制も大きく変わっていったらしく、クロエさんとサーヤさんの姉妹の地位はかなり危うい立場になってしまったのだという。……俺はその話を聞いた時に、「俺の想像していた異世界ファンタジーとは違うんだな」と感じたのである。俺のイメージだと、国同士が争うとか……魔王が復活するなどの事態が起これば……国のために、戦う的な展開を勝手に思い描いていたのだ。だけど現実は違った。俺は今まで読んできた本の内容などを思い出してみても、だいたい「主人公とヒロイン」が結ばれるパターンが多くて……その度に国同士の争いなどが勃発することは殆どないと思っていた。まぁたまにあるパターンで、そういう展開もあったのだが……どちらかというと「勇者のパーティーの中に美少女がいるので、その美少女をハーレム要員にするべく主人公が動くパターン」が大半で……まさか自分がそうなるだなんて、思っていなかったのである。
そしてクロエさんが言っていたのだが、グランネル国王は亡くなる前に、サーヤさんとクロエさんに「俺の娘」として育てるように指示をしていたようで、二人は「親子関係がない状態のまま」で育てられることになったようなので、「家族愛」に飢えていたんだと思うんだよね。そして俺は……クロエさんとサーヤさんのことを……「本当に仲の良い姉と妹のようだな……」と、思っていたのであった。
それからクロエさんが、俺に「あなたは、自分の強さを隠す気はありませんよね?」と質問をしてきた。
俺が……なぜそんなことを聞くのかと不思議に思って「クロエさん……どうしてそんなことを俺に聞くんですか?」と聞いたのだ。
すると……「私の予想ですが……あなたのレベルを知られない方がいいかな?と思っています。私の勘なのですけどね。……そしてもし……私の父や妹たち……それに「私の夫」のグランニール3世にあなたの力を見せつけたらどうなると思いますか?……きっとグランニール王家の力を借りて「世界最強国に戦いを挑むのではないか?」と考えるでしょうね。それが、今の現状のグランニール王国が望んでいる形ですからね」
クロエさんが真剣に話す姿を見た俺は……クロエさんの言葉が事実だろうと思い、黙って聞いていたのだ。
サーヤさんもクロエさんの意見に賛成だったらしく「クロエルド王国って……今かなり微妙な立場に立っているの」と言っていた。
グランニール王国の王位継承順位1位の「第1王子」が「クロエルド城」で何者かに殺されたことで、継承問題が勃発してしまい、後継者選びの話し合いが行われて……結果的に「第1王女のクロエ」を女王にしようという動きがあったらしい。だが……ここでまたもや継承問題に発展し……結局……第2位のクロネさんを「女王にしたい」という声が強く……第2位の「第2王女」であるクロネさんの「結婚相手の候補」を探していたところで、クロエさんと出会い結婚したそうだ。
そしてクロネさんには娘さんが2人居て、長男の「アルヴィン君」と、双子の姉妹の女の子がいて、名前は……次女の「ミウ」ちゃんと三女の「リリアナ」ちゃんなのだそうだ。
長女であるクロネさんは現在妊娠していて、来年ぐらいに生まれる予定で、現在は産休を取っているとのことらしい。クロネさんには弟と妹が居たのであるが……長男である「アーニス・クエンティン=グランニール」くんは5歳で既に亡くなっており、三男で次男の「アビーニール・グランニール」も4歳で病気により亡くなっているようだ。そして次女のクロアさんがクロエさんの旦那さんと結婚している。このクロエさんの妹さんは「クロア」という名前で、グランニール王国は……クロエさんを「女系王族」として扱っているそうなので……俺は「このグランニール王国の人たちは、皆んな優しくて、とても素敵な人たちだったから……俺はこの国の人たちに恩返しが出来るなら……喜んでこの力を貸そうと決めているんだよ」とクロエさんに説明した。
クロエさんはそれを聞いて……嬉しそうな顔をしてくれたのであった。
クロエさんが「じゃあ、私と一緒に行きましょう」と言ってくれて、クロエさんは俺の手を握ってきた。……俺はそんなクロエさんに引っ張られる形で、クロエさんと一緒に部屋を出て「謁見の間」に向かったのだ。……俺が「謁見の間」の入口に近づくと、扉の前にいる門番の人が俺の方に近づいてきて、いきなり槍を構えてきたのである。俺もすぐに神剣を抜いて、いつでも攻撃できるように身構えたのだが……俺の顔を見るなり……なぜか俺の身体検査をされて「……こ、この方々が……勇者様御一行ですか!?」と驚く門番の人だった。俺はそんな反応を見て……「あれっ?もしかして勇者って、俺のことだったりするのか!?……勇者の職業を持っているのは、俺と、サーヤさんだけのはずなんだけどな……」と思っていたのだった。ちなみに俺は「鑑定スキル持ち」「神の使い」という設定になっていたのだ。
そして、クロエさんも俺の隣に立って、「はい。勇者であるアースと申します。」と丁寧に頭を下げていた。俺はその様子を見て……なんだかいつの間にか、勇者にされている自分に驚いていた。……俺は内心で、なんだこの茶番みたいな状況は!と思ったのだった……。
俺が謁見の間に入り、玉座に向かって歩き始めたら……クロエさんも一緒に歩いてきたのである。俺はそれを見て……「もしかしたら、クロエさんが何か言ってくれたからかもしれないな……」と感じていたのだ。……俺は「グランハルト国王」の前に到着すると、その場で片膝をついて……頭を深く下げて、礼をとったのである。
クロエさんが俺の横に来ると……同じように俺と同じようにして、頭を深々と下げて礼をとっていたのであった。俺とクロエさんの行動を見て、国王の横に控える「近衛騎士団長」らしき男が驚いた表情で俺を見ていたが……クロエさんの方を見て……クロエさんが俺と同じ行動をとっているのを確認して、慌てて「クロエ様に続け!」と大声で叫び、他の騎士たちも全員同じ行動を取ったので、俺は「あっ!?この流れはダメなやつか!?まずいんじゃないか!?」と冷や汗が止まらなかったのだ。
クロエさんが……俺たちを案内してくれて、王座まで進むように促されていたので、俺たちはゆっくりと進んで、国王と王妃と思われる女性の前にたどり着いたのだ。俺は……このタイミングしかチャンスがないと判断して、意を決して顔を上げて「クロルと申す者です。先ほどは、クロエ姫様をお守りできず申し訳ございませんでした」……と謝罪の言葉を述べた。クロエさんも国王と奥方の方を向いたままで俺の言葉に続く感じで……
「国王陛下ならびに王妃さま。勇者であるアース・ラガンにございます。」
俺とクロエさんの言葉に、一瞬静寂が支配したのだ。そして国王が口を開くと……「おお……クロルよ。クロエの無事を知らせてくれただけでなく、我らの危機も救ってくれるとは……感謝してもしきれぬ。そなたが、我が娘の夫になってくれること。……我は嬉しく思うぞ。これからも頼むな。さぁ立ち上がって席に着きなさい」と言ったのである。
俺は……この言葉を聞きながら……「えぇ〜!!!こんなセリフがあるなんて聞いてないぞぉ!!完全に想定外だぁ!!」と思っていたのであった。そして「俺ってば勇者にされちゃってない?もしかして……」と思ってしまうのだった。俺とクロエさんは立ち上がると……「お父上……いえ、国王陛下の仰せの通りです。私は勇者である、アース・ラガンと結婚し、生涯を共にすると約束しておりました。どうか勇者の証である聖剣「エクスカリバー」の譲渡をお願いいたします」
クロエさんが真剣に言うと、国王は立ち上がり、クロエさんの前まで移動してきて……右手を差し出して、こう言ったのだ。
「よくぞ、あの窮屈な王宮から逃げ出さずにここまで来た。そして、クロエの命を守ってくれたことを心から礼を言う。クロエよ。その覚悟に感服し……お前の望むままにしなさい」と、クロエさんの目をじっと見つめて言ったのである。
クロエさんは差し出された手を取ると……自分の手をかざし、クロエさんの聖具でもある「クロネさんの形見」でもある「エクスカリバー」が光の粒子に変わっていき……俺の【アイテムボックス】に収納されたのだ。そしてクロエさんは自分の腰にある剣に手をかけると「クロエ」と呟き……クロエさんは鞘から勢い良く抜いたのである。そしてその瞬間……眩い光が「クロネさんの形見」である「エクスカリバー」に集まっていき……それが収まると「聖剣」から、刀身が真っ白で柄の部分が赤い日本刀の様な武器に変わったのである。そして光輝くオーラがクロエさんを包み込んでいたのであった。
俺が「……凄い。……これは美しい……」と、つぶやくとクロエさんも「綺麗……まるでクロネ姉様そのものね」と言って涙を流して感動していたのだった。俺はこの時……クロエさんを「絶対に幸せにしてみせる」と心に誓ったのだった。そしてクロエさんは、再び「聖剣」に手を添えると……
「……アース君。私を……あなたのお嫁さんにしてください」と俺の目を見て言ったのである。俺はこの光景を見て……嬉しさのあまり泣いてしまった。……俺も……ずっと憧れていて夢見ていたことの一つが実現する日が来たからだ。俺はクロエさんの手を握ると……
「もちろん。俺がクロエさんを必ず幸せにするよ。」……そう答えたのであった。俺はこの時、「俺……異世界転移したけど、もう元の世界に戻らなくてもいいかな?」って思っていたのである。そして「元の世界に戻った時って、どんな扱いになるんだろう……?」とも考えていた。俺とクロエさんの様子を見て国王とクロネさんの奥さんも、とても優しい目をしていたのであった。……こうして俺とクロエさんの結婚が決まったのである。ちなみにクロエさんと結婚した後、クロネさんの弟で、俺がグランニール王国に滞在していた時に知り合った「アビーニール」君のところに俺とクロエさんは行く予定なのだ。そして、俺の仲間になっている「サーヤ・カラサワ」、「ユーフェミア・アークハート」、「クリス・クロスフォード」と「ミレアナ・クルサード」を連れて行こうと考えている。
俺とクロエさんのやり取りが終わったあと……国王が玉座に戻り座り直すと……俺とクロエさんが国王の前に並んで立っていたのだ。そしてクロエさんが自分の「エクスカリバー」を鞘に仕舞うと……国王は俺とクロエさんを見ながら話し始めたのだった。
「……勇者であり、聖女である、この国の王女であるクロエとその婿殿となったアースに命ずる。これより2週間の後に「暗黒の森」と呼ばれる魔獣が多く生息している場所で、魔物討伐を行ってもらう!勇者である、アースには、勇者のみが使うことが出来るというスキルをいくつか見せて貰ったが……他の仲間にも、そのスキルを習得して貰う為に、同行させる者達と、一緒に旅に出て欲しい」……俺が勇者であることや、クロエさんが聖女であることがばれてしまっていることに俺は内心で驚きながらも「はい」と返事をして、クロエさんも隣で大きく一度頭を下げて了承の意を示した。……俺は、クロエさんと結婚することになったので、グランハルト国王を、お父さんと呼んでもいいか許可をもらった。……そして俺が、クロエさんとの結婚を許してもらったことに対して、お礼を述べたのだ。そして……この国にいる間だけ俺のことを、「勇者アース・ラガン」と名乗ってもいいことになったのだ。(※本当はダメなのです。)
俺は「クロネさん……やっと……本当に会えるかもな……。俺、頑張って魔王も倒します。待っていてください」と心の声で呟いていた。俺のそんな様子を見ていたグランハルト国王は不思議そうな顔をしていたが、すぐに「……まぁ……よいだろう」と言っていたのである。
クロエさんは……俺の隣に立って、嬉しそうな笑顔を見せていた。そして、俺は改めてクロエさんに「クロエ……これからよろしく」と言うとクロエさんも「アース君……うん。私のほうこそ、どうぞ宜しくお願いいたします」と言ってくれて……なんだか気恥ずかしい感じになったのだが……俺の目の前でクロエさんは、俺の腕にしがみついてきたのだ。俺は驚いていると……クロエさんが耳打ちしてきたのだ。
「……えへっ。これからは夫婦として、もっと仲良くなれると思うから……甘えても良い?」と言われて俺は、胸キュンしてしまい、思わず抱き締めてしまったのである。俺は「……もちろんだよ」と言いながらクロエさんを抱き寄せていた。……すると国王も「おぉー!」とか言いながら拍手してくれていたので、ちょっと恥ずかしくなって俺とクロエさんが離れるのだった。
「お兄さん……良かったですね」とクロエさんは笑顔を見せてくれていた。
俺も「ありがとうな。……なんかクロエさんのおかげで、クロネさんとの約束も果たせそうだ」
俺は素直にお礼を言ったのだった。俺とクロエさんが見つめ合って微笑み合っていたのである。そして……国王も「クロネ……クロネの愛しい人がついに結婚してくれるのか。……よかったな」と小声で言っていて涙を浮かべている様子であった。俺は「クロネさんのお母さんはクロネさんが死んだと思っているようだけど、クロネさんは生きている。でも、今はどこに居るかわからないので探しに行きたい」と国王に伝えたのだ。そして、その方法の一つとして「聖剣エクスカリバー」と、クロネさんの形見でもあるクロネさんの武器の「エクスカリバー」とクロネさんの装備の防具である「天衣無縫シリーズ」を譲り受けたので「これを、使って捜索して欲しい」と言って渡すのであった。俺はクロエさんと結婚して、これからはクロネさんの分まで、幸せにしてあげることを決意していた。……俺達は今……「王都の城下町」の広場に居たのだ。俺はクロエさんから「お母様とクロネ姉様に早く顔を見せてあげて」と言われたのだ。俺の【神速】なら1時間ほどで「聖剣エクスカリバー」の力を借りて【テレポテーション】で行けるはずだと思ったから「それじゃぁ、俺の【転移魔法】で、早速行ってくるよ」と言うとクロエさんが、「私達の為に時間を割いてくれただけで嬉しいから、ここから先は大丈夫です。お兄さん……行ってらっしゃい」と笑顔で言ってくれて俺の手を握りしめたのだ。
俺は、自分の「ステータス」を表示させて確認すると……MPも魔力量も全然余裕があったので、「……分かった。それじゃあ……少しの間留守にしてくるからね。皆も頼んだよ」と言うと仲間たちが「はい」と応えてくれたのだ。俺は仲間たちに、この城に残るか俺と一緒に行くかを尋ねてみたら全員、一緒に行きたいとの希望だったので、クロネさんの形見である「天上天下唯我独尊」を「クロネさんの形見」を【アイテムボックス】に入れて、腰につけて「いざ、クロネさんの所に行くために【転移】!!」と、俺が叫ぶと足元が一瞬光り輝き、俺は次の瞬間に、「暗黒の森」の入口の近くの街道に立っていたのである。……とりあえず……まずは情報収集と、クロネさんの情報を集めないといけないからな。それからクロネさんの装備品を取りに行って「天上天下唯我独尊」を使えるようにしようと考えていた。俺の仲間になった人たちは俺のスキルである「転移門」(ゲート)が開けるようにしたから問題なく付いてこれるとのことだ。……それに、俺の仲間になる前に俺のスキルを、全て取得してくれたおかげで……仲間になると「俺の持っているスキル」を全部覚えることができるのである。仲間になった時点で、仲間全員が俺の所持している全てのスキルを取得することができるようになっていたので、仲間になってから取得したスキルは全て俺のスキルリストに追加されることになっていたので、クロネさんの「固有ユニークスキル」を使うことができるはずなのだ。ちなみに、クロネさんの「固有スキル」は「神刀 ムラマサ 」だ。「魔刀 ツヴァイ・ソード」の下位互換みたいなものだと思ってもらって構わない。この「固有スキル」を使うとクロエさんが持っていた「聖剣 エクスカリバー」と同等の力を出せるらしいので「暗黒の森」を攻略するには最適のスキルのはずである。俺がクロネさんを探している間に、サーヤとユーフェミアとクリスが合流して一緒にクロネさんを探して見つけ次第連れて来てくれる手筈になっているのだ。
俺は仲間になってくれたメンバーを紹介する為に、「念話機能」を発動させた。サーヤとは事前に通信が取れるようになってはいたが……他のメンバーは初めてだったからだ。……そして俺は「皆!集まってくれ!」と声を出すと俺の周りに集まった。集まった時に俺は自己紹介をしてもらったのだが……なんとも凄いメンバーが揃っていたのである。……ユーフェミアとサーヤもそうだったが……レベル100超えは当たり前で……なんとも濃いメンバーであるのだ。
「アース様……先ほどから私達に話しかけてきている女性の方は何方なのでしょう?アース様と同じ波動を感じますが……」と言ったリリスに対して俺が、「え!?……あっそっか、こっちの世界では念話は使えないんだな。彼女は『鑑定』スキル持ちで「神様」だよ」というとリリスが慌てて「……失礼いたしました」と言って平伏してしまったのである。
俺は「いやいや、そんなことしないでいいって!彼女はクロネさんを救ってくれた女神だから……そんな畏まらないでほしいんだ。あと……クロネさんを探すのも協力してくれるそうだから、俺が戻るまで、ここでクロネさんが来るのを待っていてほしい」と言うと、仲間になったメンバー全員が一斉に「分かりました。クロネ様を宜しくお願いいたします」と言って俺に頭を深々と下げたのだ。
俺は、仲間たちの見送りを受け……クロエさんと約束をした場所に【転移】で移動するのだった。……俺が、クロエさんと別れてから10分程して俺が待ち合わせをしていたクロエさんと合流したのだが……何故か、そこにいるクロエさんが「クロエさんではない」ことに俺は気づいていたのだ。そして俺は、その女性をじっと見つめていて違和感の正体がわかった。……その女性は、「クロエさんが成長した姿」であったのだ。俺がその事実に気づいていることに気づいた女性は微笑んで言ったのだ。
「ふっ……気がついたみたいですね。……アースさん。私のことを覚えていますか?」
俺は「はいっ。クロネさん……ですか?」と尋ねると、「はいその通りです。私とアースさんは一心同体なので……記憶や経験も繋がっているんです。私はこの世界にアースさんの魂の一部を使って存在していて、アースさんに宿っているクロエさんの魂の中に私が住んでいましたが……今のクロエさんの魂と一つになったので……本来の肉体に戻って来れたのです。……この度は助けに来ていただき有難うございました。……そしてアースさんに私の本体の「天衣無縫」を渡し忘れて申し訳ありません」と言うとクロネさんが謝ったのである。
俺はクロネさんから謝罪されたのだが、気にせず俺は「俺とクロネさんが……夫婦だってことは、知っているのか?」と言うとクロネさんは笑顔で「はい。アースさんの記憶と、私の意識は繋げられるんですよ。だから知っていますよ」と答えて俺の腕にしがみついて甘えていた。
俺はその光景を、クロネさんの「固有スキル」の「無限収納」から取り出した装備を付け直していたクロネさんを見ていて複雑な気持ちになってしまったのである。
俺とクロネさんはお互いに抱き締め合いながら話をしていた。「えっと、これからは、俺と一緒に暮らしてくれればいいから、よろしくね」「はい。私を妻として可愛がって下さいね。……それと、あの時は……キスしなくて……ゴメンなさい」と言われて……俺はドキッとしたけど、俺はクロネさんの唇を奪ったのであった。……そして俺達はキスを終えると「俺の【転移魔法】を使えばクロネさんの故郷に行くこともできるし、俺の仲間たちなら……今すぐに行けるんだけど、どうする?まずはクロネさんが無事だったことを伝えた方が良いと思うし、その方がクロネさんにとって、家族も会いやすくなると思うんだよ」と俺が言うと、クロネさんは「私としては、すぐに会えた方がいいかなぁ……。早くお兄ちゃんに会いたいから。でも……いきなり行っても迷惑じゃないのか心配で」と俯き加減で俺を見つめる。俺は「俺から伝えておくから、大丈夫だと思うよ。でも……急いだ方がいいかもね」と伝えるとクロネさんは俺の言葉を聞いて嬉しそうに「それじゃぁ……早速……お願いできますか」と言ってきたのだ。……それからクロネさんに俺の背中に乗るように指示を出して俺はクロネさんをお姫様抱っこをして【転移魔法】を使ったのである。
そして俺は、クロネさんの生まれ育った「暗黒の森」の近くに、クロネさんを下ろした。クロナさんは自分の生まれ故郷が目の前にあって、感慨深いものがあるようだ。俺はクロエさんのところに行き、【交信】で仲間にした経緯を話してからクロエさんの現状について伝えた。それからクロナさんを、クロネさんに紹介したら2人とも驚いていたが……俺はクロネさんに、俺の仲間たちと会わせたりして交流を深めて欲しい旨を伝えるとクロナさんは、仲間と楽しそうにしている姿を見て満足したようだった。クロネさんが、俺の仲間になったことに少し嫉妬している様子もあったのだけど、俺がクロネさんのことを「俺の妻」と言ったら機嫌が一気に良くなって、俺と仲良くなろうと積極的に会話をしていた。そんな時だった……突然「ズシーン」という大きな音が響き渡り地面が大きく揺れたので俺達がいる場所から少し離れたところを見ると……「魔牛巨人」の集団が現れていたのである。その数は数百にも及んだのだった。俺は「クロネさん、クロナはここに居てくれ。他の仲間を呼びに行ってくれ!ユーフェミアやサーヤ達がクロネさんが戻ってくるのを待っているはずだ」と指示を出した。するとクロコさんは「はい。すぐに戻って来ます」とクロネさんに言って駆け出して行ったのである。俺は「さてと……俺達の出番だな。クロナ、危ないからここから離れた所に避難しておいてくれ!」と言って、俺はクロガミを鞘から抜き放ち、「【結界】」を使い防御態勢に入ったのである。それから「【転移】!」と言ってクロネさんと一緒にその場から消えた。
俺が「魔牛巨人の群れが攻めてきた。俺がやるからみんなは手出ししないように!」と念話を全員に送った。すると仲間になった人たちも「分かりました!」とか「承知致しました」といった返答が続々と来たのだ。仲間に加わったばかりのユーフェミアが、クロエとクロネが心配そうにしていたのだが……俺は「二人は、俺の奥さんなんだ。だから大丈夫だよ。それより今はクロガミの力を試させてもらうぞ!」と言うとクロエも納得したようで、「わかりました。アキト殿を信じます」とだけ答えたのであった。
俺は魔剣・神刀・黒竜シリーズを手に持ち構えたのであった。
俺はクロネさんと一緒に【転移】で別の場所に移動すると、俺を出迎えたのは数百の巨大な黒い影だった。その影は「漆黒のミノタウロスロード」「真祖吸血鬼 ユーフェミア」「不死鳥 リリス」と、「闇人狼」と、「悪魔公」と呼ばれる上級悪魔の5人が待ち構えていたのだ。
「……アース、遅かったな。俺達はずっと待っていたんだぞ?まあ、いい。クロネ、お前を迎えに来た!……帰る準備をしろ。俺様と一緒にな」と言ったのである。
クロネさんは震えながら俺の背中に隠れると「あなたたち誰ですか?」と言い、俺に助けを求めるように腕を掴んだ。
「……何者なのかと聞かれたら、答えるしかねぇだろうがよ!!俺様は魔王サタン様の第一子にして、最強の力を持つ、究極の破壊兵器……『破滅の魔神 ルキ』とは、この俺様のことよぉ!!!!」
と言って高笑いをしているのは……なんとも醜悪な顔で、身長は4メートルを超えるほどの大男だった。そんな男が、「……アース。この小娘は貴様にはもったいない。俺の女になれ。俺と組めば、この世界は、この世に生まれたことを後悔するほどに……徹底的に破壊し尽くしてやろう。だが断るというのならば……今からこの世界を滅ぼすことになる。どうする?……ん?貴様は……人間か……ふむ……そうだ!俺様と一戦交えて、貴様の力がどれほどのものか試してみることにしようか」と言うのである。
「俺は、君と戦う気は無いんだ。クロネさんが望むように、このまま帰ってほしいんだ。俺は君が思っているほど強く無いから……」
と言うと……
「……俺の強さは、こんなもんではない!……俺はもっと強くなるために、強い奴と戦って強さを求める!……クロネよ……残念だ……。もういい、死ねっ!!!」と言って、手に持った「極雷槌 ゼクスティン」を天に向かってかざすと、上空に大きな「紫色の稲妻」が発生して……その紫の稲光が「ゼクティーン 」に落ちると同時に……凄まじい「魔力爆発」が起こり、その爆風と衝撃で……俺は吹き飛ばされてしまった。俺は咄嵯に、「絶対守護防壁」を自分とクロネさんの前に展開させたのだが……衝撃波を防ぎきれずに……後方に押し戻されたのである。
俺は体勢を整えるとクロネさんも起き上がっていて、自分の身を守ることが出来たようである。俺は「……クロネさん……無事か?……」と言うと「はい。なんとか。でも……アースさんは大丈夫ですか?」と俺を心配してくれるので、「俺には問題無い。しかし……あの攻撃を耐えるか……。あれを受けて生きていたのは貴様が初めてかも知れぬ。面白いやつではないか!ますます興味を持ったぞ!俺と戦いたいなら戦うといい……。全力を出して相手をしてくれ。そうでないなら、今すぐに立ち去れ!俺はお前などどうでもいい。だがクロネは連れて行くぞ。……それが嫌なら、俺を倒すことだ」と言うと
「くっくっく……。俺を……倒せば……だと?ふっ……笑わせる。誰が……お前ごときに負けるものか!……だが……確かに俺の技を喰らっても生き残っているということは、俺の想像以上の力があるということか……。よかろう。では見せてやろう。俺の真の力を……『我求めるは全能の力 全能力向上 肉体強化MAX』『我が魂 ここに封印されし 全てを解き放つものなり 出でよ 超覚醒』……これで全ての力は解放した。さぁ勝負を始めようか!!!!」
と自信たっぷりな感じで、そう言ったのであった。俺はその言葉を聞いて内心……(やっぱ、そういう事を言うと思ったぜ)と呆れてはいたけど……相手の気持ちに水を差す必要も無いと思い黙っていた。すると俺の心を読み取ったのか俺を見てニヤッとしてから、クロネさんに向き直って……「行くぞ!」と一言告げた後に一瞬でクロネさんに詰め寄り……クロネさんに「極雷鎚 ゼクティン」を振りかぶる。俺は瞬時に【身体操作】を使って、その場から離れようとしたけど「極雷撃 ライトニング・ボルト」を繰り出してきて……クロネさんを抱え回避することが出来なかったのだ。そして俺が回避した瞬間……クロネさんに目掛けて、「ゼクティン 」を振るってきたので、クロネさんに当たらなければいいと考え「障壁」を展開した。「ゼクス・ウォール」は俺とクロネさんの目の前に展開し、ゼクスの攻撃を見事にガードしたのである。俺は、すぐに【神速】を使い後ろに回り込むと、背中に一撃を加えようと試みるが……
「ふん……今のは……まぐれ当たりだろう。だが、そんなもので俺は止まらん。今度はこっちの番だ!食らえっ!!……これが本当の攻撃だ!!!」と言って……ゼクスが振り下ろした「超絶破壊槌 スーパーノヴァ」を受け止めようとしたが、「神眼」により攻撃の軌道が見えていたのでギリギリで避けることが出来……「超高速斬撃」をお見舞いしたのであった。しかし、それをゼクは紙一重でかわして反撃してきた。俺も、それを受け流すことに専念するのだった。俺はクロネさんが心配になり後ろを確認すると、少し離れた所でユーフェミア達が戦いを見ていたが、「クロネさんはまだ大丈夫です」という声を聞いたのである。
俺とゼクスの激しい攻防が続いていた時である。突如俺の体に異変が起こった。それは体から徐々に血が流れ出す現象だった。その出血量はかなり多く、俺は思わず膝をついて「くそっ……」と毒づき、「超回復」をフルに使い傷を治していく その様子を見つめていたゼクトはニヤリとすると
「ほぅ……中々良いスキルを持っているようだな。だが……そんなものは……無駄なことなのだ!俺はこの「極雷槌 ゼクスティン」を使って「完全復活 デストピア パーフェクトボディ」を使っているのだ。だから、俺に「回復」も「超加速」も「絶対防御」も「究極無敵状態」も「超高速思考」も……全てが無効なのだよ!」と言って……再び俺の方に突っ込んできた。
俺はクロネさんが近くに居るため、あまり手の内は見せたくないと思っていたのだけど……俺はこの場を収めるために、「神速」を発動し【神龍武装】で神龍の武器を全て呼び出した。するとゼクスは、その武器を見て驚いた顔をしていたが、俺の姿を見て納得したような表情になると「ふむ。なるほど……貴様は、その力をまだ完全に使えるわけではないのだな。その証拠が、貴様から発せられるオーラから感じられるぞ。俺様の予想より遥かに強かったのだな……。ならば貴様は、この場で殺すわけにはいかなくなった。クロネは諦めて立ち去るのだ。今ならば見逃してやる」と言い、 俺とクロネさんを交互に見たのである。
俺は……その言葉を聞きながら……クロネさんを見た。その視線に気づいたクロネさんは俺の方を見ると、「私はアースとずっと一緒に居たいんです。お願いします。私の願いを聞いてください。」と言ったのだ。俺とゼスの間に流れる微妙な雰囲気を察知して、俺を必死になって説得しようとしている様子だった。俺が迷っていると、ゼスが「さぁ、早く決めるが良い。今決めれば命だけは取らないでおこう。もしここで逃げると言うなら容赦しないがな」と言うと、クロネさんは再び俺に訴えてきた。俺はそんなクロネさんの言葉を聞きながら……ゼクスを改めて見ると、何か余裕を感じる表情をしていて俺の隙を伺っているように思えたのである。ゼスは恐らく本気で俺を殺そうとしている。そう感じたので、俺は戦うことを決めたのである。
「俺は戦うことにしたよ。だから君とは戦わない。俺の答えはこれだよ」と言うと俺は【全属性耐性 結界】を張りながら【魔闘技】を使うのをやめたのである。俺は無防備な姿を晒しながら「超光速移動 ハイパームーブ ハイパードライブ 極雷 サンダーストーム 雷神剣!!」と【神龍刀】の技を使った。これは「超高速斬撃」を放つ剣のスキルで、俺が持つ剣の中でも最強スキルの一つでもあった。俺が【超剣】のスキルを使うと【時が止まり世界がモノクロームになる。だが俺は、その中で動ける唯一存在であり動くことができるのである。そんな状態の中……ゼクスは俺の攻撃を避けきることなど出来ず、「ゼクス・バリア」で防ごうとしたが、あっさりと破られてしまった。しかし俺の神龍刀の攻撃を耐えた者は今まで誰もいなかったので……俺は勝利を確信しゼクスに攻撃を仕掛けると、突然俺の体が動かなくなり俺の意思とは無関係に勝手に動きだしたのだ。そしてゼクティスの動きは俺と同じ速さになった。そんな状況の中で俺が目にしたのは、ゼクティアスがゼクティスに向かってゼクティスと全く同じスピードで攻撃していたのであった。その衝撃的な光景に驚き固まっていると……俺は自分の体の中に吸い込まれていく感じで気を失っていったのである。俺が完全に気を失う直前に聞こえたのは……
「お前は強くなる必要があるみたいだ。強くなれよ。……それからクロネには礼を伝えてくれ。俺を倒せる人間に成長させてくれたからな……。それと、また会うときまで強くなるんだ。その時は全力で殺し合うとしよう。じゃあな」と聞こえたが、その言葉の意味を理解しないうちに……俺は深い眠りに落ちるように意識を失ったのであった…… 目を覚ますと目の前に俺の事を覗き込んでいるクロネさんの顔があったのである。俺は、一瞬何が起きたのか分からず戸惑ったが、すぐに状況を把握した。
俺は……神様に異世界へ連れて行かれて……その後……俺とゼクスは戦闘になり、ゼクスの攻撃を受け止めようとして「ゼクス・ガード」を使われたけど簡単に破ってしまった。そして……俺は神刀を使い「超光速斬 スーパー・スラッシュ スーパーソニック」を放った。すると……ゼクスの体が光だし「我求めるは全能の力 全てを解き放つものなり 出でよ究極覚醒」とかいう訳分からないことを言い始めた。ゼクスが攻撃する気配がなかったので俺も警戒は解かずそのまま放置すると…… 俺の目の前から姿が消えていたのである。慌てて振り返りクロネさんを見るもクロネさんは、俺を指差して俺の後ろにゼクスがいると言うし……。意味不明なことばかりで頭が混乱してきた時に「我求めるは全能の力 全てを解き放つものなり 出でよ 超覚醒 スーパー・エンペラァースラッシュ!!」とか言って振り向いたら……ゼクスがいたのであった。俺は、すぐにゼクスを倒そうとゼクスに「ゼクスウォール」で攻撃をするが、「ゼクティオールフォース」を発動しており全く効いていなかったのであった……。その後は、「ゼクスティン」、「ゼクティン」で反撃された後に、「デストピア パーフェクトボディ」で完全復活?パーフェクト・ボディー?……まぁなんでもいいけど……を発動されて「パーフェクトパワー」にパワーアップされ……ゼクスに攻撃が通じなくなったのである。……というか、なんだったんだろうあの力は……。俺が必死になっているとクロネさんがいきなり現れて「もうやめて下さい!アースは十分強くなりました。それに貴方はまだ本気を出していないじゃないですか!」とゼクスに言うと、ゼクスは少し驚いたような表情をして
「……そうだな。少し遊んでいただけなのにここまで出来る奴は初めて見たぜ。いいだろう。……今日はこのくらいで終わりにしてやろう。また会おうじゃないか。俺を殺せるほどの力をつけておくといいぞ!」と笑いながら消えたのだった。そして俺も……元の場所に戻ることが出来て……今にいたる……というわけなのですよ…… そして……今俺達はギルドに戻り……受付嬢に事情を説明し終えると……何故か、俺達の話を聞きつけた冒険者が集まって来て俺を囲み質問責めにし始めたのである。
まず、この世界に来たばかりの時の俺は、ゼクスと戦って負けたということになっていて……しかも、その相手の名前を覚えておらず「名前を忘れてしまっていてごめんなさい……」という謝罪から始まったのだった。
「いやいやいや、俺の名前は……覚えていて当たり前だっての。まぁ俺達と初めて会ったときは記憶がなかったのだから仕方ないってのは分かるけどよぉ。ゼクスを倒したアースにそんな謝られて、なんか俺の方が申し訳なくなってくるぜ」と最初に俺に絡んできた……確か「ガド」という名前の剣士風の冒険者が俺に言ったのである。俺は……その言葉に少し安心しつつ……この場に集まって来た人たちを鑑定すると、殆どがA級からS級の人達だったのである。そんな実力者たちが何故こんなところに来ているのだろうと不思議には思っていたのだが…… 俺が「皆さんどうしてここにいるんですか?」と質問したら……みんな一斉に話し始めようとした時である。クロネさんと俺のステータスプレートが突然鳴り響き「ピピーッ」となった。俺は「何だこれ」と疑問を感じながらも……自分のステータスを確認する。すると「職業」の部分に……【神龍戦士 マスターオブドラゴンナイト 】……【神竜の勇者 マスター・オブドラゴンヒーロー】……【龍騎士 龍神】……と表示されていて、【超武人 オーバーロード・キング】というのが追加されており、【全魔法適性】の「超強化 エクスターミネイション」の効果もあって、この世界の常識を完全に覆す結果になった。その証拠に「なっなんだそれは!!」と叫んだのが、クロネさんの知り合いで【剣聖】の称号を持っている冒険者の人で、この世界最強の存在と呼ばれている人である。そんな【剣聖】は、「私と勝負しろ」と言い出したのである。
俺が断ろうとする前に、周りにいた他のA級からS級の人達までが、自分もやりたいと言い出し、クロネさんも俺と手合わせしたいとお願いされてしまったのである。俺は、断る事が出来ない雰囲気だったので仕方なく、全員と戦うことになったのである。俺は【魔闘技】を使うと、それを見た【剣聖】の人は、「【剣王】」に進化していて、「私の奥義を見せてやるわ」と言うと【絶刀一閃・極大刃!!】と叫んで俺に切りかかってきた。
俺はその攻撃を余裕で避けることが出来た。そして、次の人が攻撃を仕掛けてきたときに……俺はカウンターで攻撃しようと思ったが、あまりにも速いスピードで攻撃を仕掛けてくるのでカウンターをするタイミングを見失ったのであった。俺は【神速思考(超高速並列処理)】を使い【瞬歩 ハイパームーブ】【神眼】【超超高速演算】などのスキルを使うとなんとか相手の攻撃を受け止めた。
しかし……その人の剣技は凄まじく【超剣】とスキルを使った【限界突破】でようやく受け止められる程の強さであった。
「流石に【超剣】を使っていても俺では受け止めきれないようだな」と冷静に分析している場合ではなかった。俺の攻撃を【魔闘気】で受け流されたのだ。その攻撃に【超闘気 ハイパーオーラ パワーモード】を使っているにも関わらず、あまりの速さで体が追い付かず……ダメージを受けてしまうのである。
その後も俺は、【超剣】とスキルを駆使して攻撃をしていくが全ての攻撃が防がれてしまった。【超剣】で【超剣豪】に進化した俺と互角に渡り合う程の剣術を持つ相手に俺はどうやって勝つかを考え始めていた。だが考えていても、答えが出ないのが分かったので【超剣】とスキルを使わないと決めることにした。俺のそんな様子を見て相手は
「やっとやる気になってくれたみたいね。そうこなくっちゃ楽しくないしね」と楽しそうな顔をして言ったのだった。そして、俺は相手が攻撃する瞬間に、カウンターを仕掛けてみる事にしたのであった。そして……戦いが始まり俺と相手の戦いは熾烈を極めていたが、途中から徐々にだが、相手の攻撃を読み切れるようになり俺は確実に相手の攻撃を受け流すことに成功していたのである。そのせいで俺は無傷なのだが……相手は俺にダメージを与えることが出来ないでいた。その状況に焦りを感じ始めた相手を俺は追い詰めていく。俺は【神龍眼】を使い、動きを先読みすると隙を突いて攻撃を叩き込むとついに、俺は、攻撃を当てることに成功する。
俺はそのチャンスを逃さずに全力で攻撃を繰り出す。その猛攻に相手の動きは徐々に鈍り、遂には倒れて気絶したのである。俺は、これ以上戦っても面白くなさそうだと判断して
「もういいですか?」と聞くと……相手は「まだだ!俺はお前に勝ちたいんだ!!」と言って立ち上がり再度攻撃を仕掛けてきたのである。俺は……これ以上戦ったらまた同じことになりそうだと感じたので……その言葉を無視して全力で叩きのめし勝利した。その後、俺は【武王】に進化した【拳帝】や【賢帝】の【魔術師 マジシャン・ウィザード】の人などと戦い続け、何とか倒す事に成功したのである。俺の体力は既に0に近い状態で意識が薄れかけていたので俺はその場を去ろうとしたのだが……それを見逃してくれず、クロネさんが俺に襲い掛かってきたのである。「ちょっと……クロネさん!俺の話聞いてました!?」
「いやーだって、あの人たちとは本気でやったんでしょ。なら私ともやって欲しいじゃない!」と俺の言葉に反論する。確かに俺はこの世界の人間から見れば化け物みたいなものだから……普通とは違うのかもしれないけど、俺は今から家に帰ろうとしていたので
「分かりましたよ……。でも疲れてるから本当に少しだけですよ」と返事をして俺は戦う事になった。
俺が本気を出さないからといってクロネさんの攻撃をまともに受けた時点で俺の負けになるので……俺は防御に徹底することにした。
俺は、クロネの攻撃を防ぎつつ、俺はクロネの動きを観察した。その結果……俺はクロネの攻撃を完璧に見切っていたが……クロネも俺の攻撃を完全回避し、俺に傷を付けることすら出来なかったのであった。それから1分ぐらい経つと、クロネの体に変化が訪れた。
「……はぁはぁ……どうして私はあなたに攻撃を当てられないのかしら?それに何だか体に力が入らないのよね……」と困惑顔で言うクロネ。俺はクロネに「俺のスキルのせいです。俺と本気の手合わせをした人は俺に対して実力以上の能力を発揮してしまいます。そのおかげで、今のクロネさんには力の制御が出来ていないのです。俺もかなりきついのですよ」と説明したのである。
俺は「だから俺はこの世界に来たばかりの時のように、魔力と体力を殆ど使っていないんですよ。まぁ、俺も自分のステータスを確認してなかったので、こんなことになっているとは全く思っていなかったですけど」と付け加えた。
「へぇ~。私と同じ状態ってことね。じゃあ私にも同じことができるかしら?」とクロネは笑顔で言った。俺もそれが出来ると思い、「出来ますよ。やってみてください」と俺は返事をしたのだった。すると、クロネもクロネの仲間たちも……何故か全員で俺に挑んできたのである。俺は……全員を相手にすることになった。俺はまだ体力は大丈夫だったが、流石に【神眼】で見切っていて【魔闘気】で身体強化をしているので、全員一撃も喰らうことはなく全て倒してしまう。クロネはそんな俺を見て……何か納得のいかなそうな表情をしていた。そんなクロネに「まぁ俺も【剣聖】と戦った時は【剣豪】や【剣豪 エクスターミネイション マスター・オブソードマスター】になっていたのにギリギリだったからな。俺がこの世界に来る前に会った人たちの中でも【剣王】とか、【剣豪】ってレベルだったし、みんな強くなっていたんだろ。俺は【超剣】やスキルを一切使ってなかったのに、全員を倒すことが出来たからな。だから、俺がこの世界で一番強いわけでは無いから、そんなに悔しがることはないと思うけどな」と言ったのである。すると、クロネは少し悲しそうにしながら
「うん。それは分かるけど……なんか自分が弱いままだと嫌だから」と言う。クロネが言うことも理解できるけど……実際……ステータスを確認出来ないから……どれだけ強くなったかもわからないし、自分の感覚でしか強さを測ることができない。そんな状況では……自分の成長度合いが理解出来ないのだろう。俺の場合はステータスを見ることが出来るし、スキルも使えるようになっているからある程度だが成長する前の強さを把握することが出来るのだ。しかし……この世界の住人は自分の力しか見ることが出来ない。そのため自分で把握できる上限を超えるほどの成長を遂げている場合にはどうすれば良いのかわからなくなってしまうのである。これは俺の世界での話で、俺自身は、その経験が無いため本当のところよくわかない。
クロネは少し考えた後、「分かった。なら私のステータスプレート貸すから私との決闘の時には見てもいい」と言ってきたので、「了解しました。ありがとうございます」と礼を言うと、「あと私にも敬語使わない方がいいわ」と言う。俺は一瞬迷ったが素直に了承した。「分かった。クロネさんありがとう」
クロネと会話していると、俺の周りにいる人たちが羨ましそうに俺とクロネを見ていたのである。そんな俺達の元に「リリィさん」が近づいてきて「ねぇ?そろそろ私の相手もしてくれるかしら? さっきから見てたんだけど、あなたは【超速加速 ハイパーアクセル スピードモード】を使っているようね。でもあれではあなたの体力はすぐに無くなるでしょう。なら私が【限界超超加速】を使って手加減してあげるから、それで戦いま しょう」と言われた。俺は「はい!よろしくお願いします!」と答えて、手合わせを始めるのであった。俺とリリィが対峙すると周りの人達はその勝負を食い入るように見てリリィの【超加速】に対抗できるように訓練を開始した。そのおかげもあり俺とリリィの戦いに付いてこれそうな人が出始めていて、俺は少し嬉しい気持ちになった。俺達は互いに【武闘気】を発動させて戦い始めると……やはり俺の思った通り俺の方が少し不利な状況に陥ってしまったのである。【超高速思考】が使えれば、【超加速】を使っている相手の攻撃を全て先読みすることが出来るので、俺は何とか戦えると思っていたのだが……相手は俺より【超速加速】が上手なので、攻撃が全て先読みされているはずなのに、俺にダメージを与えてきているのである。
「うぅ……まさかここまで差がついているなんて……思ってませんでした」と俺は思わず呟くと、
「あなたにダメージを与えるために色々研究して編み出した技なんだもの!当然じゃない!!」
「そうですよね。俺が間違ってました」
俺達がそんなやり取りをしていると、クロネが
「ちょっと!!私の存在を忘れてイチャイチャしないでよ!!!!」
「えっ!?いや……俺はただ自分の現状を言っただけだけど……」
「そうなのよ……私とユウトの戦いを真剣に観察していて……いつの間にか戦いに集中していたみたいなのよ」
俺は苦笑いをしながら……リリィを見ると、確かに俺との戦いを楽しんでいる感じだったので「戦いながら考える余裕が有ったみたいですね」というと、
「まぁ、その通りなのよね。この世界に転生して、こんな楽しい思いをしたことなかったから……楽しくてしょうがないのよ」
「それは良かったです。俺は正直疲れてきたので……少しの間休憩してもいいですか?」
「いいけど……もう戦わないの?」
「これ以上戦っても無駄だと思いますし……そもそも、クロネさんとは全力を出して戦っていたので、俺はもう戦えないんですよね。それにクロネさんの実力もわかりましたし……これ以上やる必要はないですからね。あっ!でもクロネさんは、まだやりたりなければやっていいですよ。まだ俺に攻撃が当たった訳でもないしね。全力を出しきれていませんよね?」
「……確かにまだ戦ってすらいないから不完全燃焼なのはあるけど……まぁ仕方ないかな……」
俺はクロネと話していると周りにいた人たちは
「俺もやらせて下さい!!」「是非とも私も!!」
など言いだしたので、俺はその申し出を受け入れて順番に相手をしていった。俺が全員を相手にしている間、クロネはその様子を黙って見ているのであった。それから俺は体力回復の為とクロネに頼まれた「ステータスの確認」をするために家へと帰ったのである。そして家に帰ってからすぐにステータスを確認すると……俺の体はボロボロだった。まず、魔力がほぼ空で、体力も殆ど無かったので、クロネに魔力を分けてもらい、体力も魔力も回復することが出来たのである。その後、クロネと手合わせをすることになり、今度はお互いに全開の状態で戦うことになった。クロネの動きも最初の頃と比べると段違いに早くなっていたが……俺は【神速再生】があるので、直ぐに回復しクロネの攻撃にも対応出来るようになったのである。俺はそんな風に1時間ほど戦ったところで俺の体が突然動かなくなった。どうやら「身体超化 」や「限界突破」の発動の限界を迎えたようだ。
俺はその場で意識を失い倒れたらしいのだが……何故か目が覚めるとその部屋の中にベッドで寝ており誰かに抱き抱えられている状態であった。俺を抱きかかえた人物はクロネだったらしく
「ごめんね。クロネさん。ありがとう」
「いいんだよ!私が無理に付き合わせたんだから……」
クロネさんは、少し暗い表情になりつつ俺から離れるとクロネさんもそのまま倒れるように倒れそうになったので俺はクロネを支えたのである。それから俺はクロネさんに魔力を少しだけ分けてもらい、クロネを背負うことでクロネをベッドまで運んだのである。それからクロネを看病するためクロネの家に泊まりクロネが目を覚ますのを待っていた。クロネさんが起きたら俺がここに居ることを言わない方が良いと思ってクロネが起きる前にクロネの家を出て街に戻ったのであった。それからクロネが目覚めるまで俺はクロネに会っていない。俺はその事をリリィに伝えた。
リリィは「ふーん」と興味がなさそうにしていた。俺は「リリィもクロネと会うか?」と聞くとリリィは嬉しそうに
「うん。行きたい。案内して」と言う。俺はクロネの家へ【瞬間移動】で向かうと、俺はリリィを連れてクロネの部屋に急いだ。すると、クロネの部屋の扉の前でサーラが立っており、「ユウトは今、中で寝てるから、入る時はノックしてからだよ」と言われた。俺が返事をしてリリィが返事をしなかったが、気にせずクロネに話かけたのである。するとクロネが眠い目をこすりながら俺達に挨拶してきた。俺がクロネに俺の家で休んでからどうしたのかを聞いたところ
「ユウトの家は快適だから、あのままずっと居たかったんだけど、私はユウトと違うギルドに所属しているからユウトが帰ってくるまでは行かない事に決めたの」と言う。するとクロネが「そうなんですね……残念です。じゃあそろそろ私達と行動しましょう。今からだとギリギリなのですが、一緒にクエスト受けに行きませんか?リリィとクロネとなら安心して依頼をこなすことが出来そうですから」と言い出したのである。俺がそれを止める理由もないので俺は賛成すると、リリィもクロネとならいいと言って、3人で冒険者ギルドへ向かう事になったのである。
俺達が冒険者ギルドに行くと、受付嬢が「あれ!?あなたたちは……」と言うとクロネが
「久しぶりです」と返す。どうやら、クロネは、俺と出会う前に、この冒険者の宿に来ていたことがあるみたいだ。俺は何のことなのかよくわからないので首を傾げていると、受付嬢が「この方、最近有名なんですよ。【剣聖】様が弟子にした人物がいるって噂が広まっていて……それで私達の間でも話題になってたんですよ。」と言われ、俺は驚いていたのである。
「えっと、【勇者 ブレイブ・ソード】と【拳姫 ベアトリーチェ】に勝った人が、この街に居るという噂があるんです。それで私達は、どんな人なんだろうね?という話をしていたところなんですよ。それがまさか【超絶賢者】でその上……あの伝説の神様の知り合いとは……」と感心しながら言ってきたのである。そんなやり取りの後、クロネは俺とクロエを登録してもらい依頼を受ける事にしたが、 俺とリリィとサーラと俺とリリィが別々のパーティーなので、別々に受けることが出来るのである。なので、俺とリリィとサーラの分の依頼を受けようとした時、受付に立っていた女性が慌ててこちらにやってきたのであった。俺達が依頼書を見ようとカウンターの方へ移動しようとした時、その女性はクロネの前に立ち、
「ちょっと!!私を無視して先に行かないでもらえますか!! 」
と大きな声で怒鳴り始めたのであった。
「ちょっと!!私を無視するって酷くありませんか!! 」とクロネが言うと、 その人はクロネに指を指して、こう叫んだ。
「あんたこそ私の事を馬鹿にしてんじゃねぇぞ!!!」
俺は、いきなり喧嘩が始まったので止めようと思ったが、クロネと相手の口論を聞いて、俺は思わず呆然としてしまったのである。
クロネと相手の口論は、俺には意味不明な言葉だらけだったからだ。
「私達は、これから仕事なんです。そこどいてもらえませんかね」
「はぁ!!何を言っているんだ。私が先に来たんだよ!!お前らは後だ」
などと口論がしばらく続き、最終的に、その女の方がクロネを突き飛ばして去って行ったのである。クロネは地面に膝をつくも、すぐに起き上がり、クロネが文句を言うために女の背中に追いかけようとしたが、俺はクロネに静止した。
俺は少し考えてクロネに「少し待っててくれないか?」と言った。クロネは「別に良いけど……」と俺が何をしようとしているのかわからなかったようだ。俺はクロネを置いて1人で依頼掲示板の所に向かい依頼書を眺めてみる。
(これなら、クロネの分も受けれるんじゃないか?)と俺は思ったのである。
俺はそう思いながらクロネ達のいる受付へと向かい、俺はリリィに
「俺と一緒に依頼を受ける?」とリリィに聞いた。
「うん。クロネとユウトの邪魔をするのはダメだと思って黙ってたけど……本当はユウトに付いていきたくなってきた」と返された。
俺はサーラに「リリィを連れて行くけどいい?」
「もちろん。僕もその方がいいと思うし、僕はここで、ゆっくりするよ」とサーラは俺達を応援してくれた。
俺はサーラにお礼を言い、クロネに声をかけてから、俺とクロネはギルドを出ることにしたのである。
「とりあえず今日はこれで終わりですね。後は家に戻って明日に備えて休みましょう」とクロネは言ったのであった。
「わかりました。俺は、この後、家に帰って休むつもりですけど、クロネさんとクロエも一緒についてきてもらってもいいですか?」
俺がそう頼むと、二人は了承してくれたのである。俺は家に帰っている途中に、あることを思い出す。俺はクロネに、さっき俺の所にやって来た女性の話をした。
するとクロネが
「それはきっと、私がギルドに登録する前にいたギルドです。その人の事は覚えていますが……名前は忘れてしまいました。その人も、私の後にギルドに入って来たんですが……その人に絡まれまして……その人と仲良くしようと思って話したのですが……どうやら、私の存在が許せなかったらしく、ずっと罵倒されて……私は、もうその人からの絡みを受けたくないと思い、それ以来会っていません」
と、クロネは少し嫌そうな顔をしていたので、それ以上、深くは聞かなかったのである。
俺はクロネに俺の家の前まで【瞬間移動】で行くからついて来て欲しいと言うと、クロネは「いいですよ。お願いします」と了承したので、俺はクロネとクロネを連れて【転移の門】を開き俺の家に戻ってきたのである。
俺は俺の家に戻ってくると、リリィとクロエを呼びクロネを紹介する。クロナさんは、クロネの顔を見るなり驚きの声を上げていた。そしてクロネは、俺とクロカに頭を下げてきた。
「クロエ、久しぶり。それとユウト、あなたが私の命を救ってくれたみたいね。本当に感謝してるわ。私は今更あなたたちの仲間になりたいなんて都合のいいことは言えません。それにあなたたちに迷惑をかけてしまったから……。だから私はあなたたちと行動を共にしなくても良いんです。だから気にしないで下さい」
俺はクロネの言葉を聞き「いや、クロネも俺達の仲間になるんだ。気にしなくていい」と言う。
すると、リリィが
「私も、クロネは私たちの仲間だよ。だから遠慮しなくていい」と俺に続きそう言ってくれたのである。
クロネは、リリィに「ありがとう」と言い、嬉しそうに微笑んでいた。
俺はリリィに「俺は今から【限界超速 超絶成長】の修行を始めるから、リリィはどうしたい?」と聞くと
「私はユウトの戦い方を観察させてもらいたい」と返事をする。俺は「わかった。それじゃ、一緒に行こうか」と言い俺は【瞬間移動】で外に出たのである。それから【魔眼創造】を発動し、「限界超絶加速」と「限界超絶超絶加速」を【神眼】でコピーしてから、「限界超越」を発動したのである。
そして俺のステータスがとんでもない事になっていたのである。
【名 前】
草凪 悠斗 【年 齢】
15 【体 力】
9900/9999(+10000)
【魔 力】
88000000(+10200000)
【攻撃力】
EXP2000
☆100★ 988000 【耐久力】
EFEXP2800EXP15000 999000 【素早さ】
DEMGP6000EMP43000 530 500 0 【知 力】
INTXC8300HP7600 750 325 720 1040 【幸 運】
HEPATITH3200CHR570 455 270 1 【経験値】
JPY1 50/100*39 【スキルポイント】
1931000 このステータスを俺のステータスを見ている3人が固まっていたのである。ちなみに俺はこの世界での最大値で、元の世界でも最強だ。まぁ俺は自分のレベルを確認していなかったので今の自分よりも強いのかわからない。しかし【鑑定の指輪】の効果で数値はわかるので俺が強いということはわかっているので大丈夫だろうと思っているのであった。そしてクロネとクロエが固まりながら「すごい」と言っていたが、俺は特に反応せずに【魔眼創造】を使って俺に合った剣を創り出そうと考えていた。まず「限界超絶超高速移動」を【完全耐性】で無効化できるように【魔剣・改】を造り出した。その次に「魔剣・瞬迅刀 」という剣を創ったのである。
その剣は「神剣・絶空」の見た目は似ている。違いは大きさだけだ。絶空には鞘がないが、この「絶空」に鞘はないものの鍔はあり柄の部分もあるのだ。俺が【アイテムボックス】に剣を収納すると絶空も自動的に入った。俺が自分の剣に触り「絶空、出てこい」と言ってしまうと出て来たのである。俺はそれを見ていたクロネとクロエは目を丸くして驚嘆していた。
俺が【魔力感知 ERROR】を使い、クロネとクロエとクロナさんがいるところまで戻ると、俺の【瞬間転移】で俺が消えたことで驚いていたが、俺の姿が現れるとほっとしていた。
俺とクロネとクロエが俺のステータスを覗き込んでくるので俺が【超再生能力 ERROR】を使う。俺は「これは後で説明します。クロネ、とりあえず俺は【魔闘錬気】の熟練度を上げようと思ってる。俺と一緒に修行するか?」とクロネに声をかけると、クロネは「はい」と返事をしたのだった。俺は「俺の技も見せるよ。ただ、クロネの実力を見てからじゃないと、危なすぎるから、ちょっとだけ見せます。あとは俺と手合わせをしましょう」とクロネに言った。
クロネは「はい。よろしくお願いいたします。私は、もう逃げません。強くなります。もう、あんな惨めなことには絶対にならないように……お願いいたします。私の全てを懸けて頑張りたいと思います」と真剣な顔つきで言うのであった。俺がクロネに、これからの修行について話そうとした時にリリィとクロエは俺達の間に入ってきたのである。
「私も一緒に戦う!」と二人は言う。俺達は一旦話し合いを中断し、これから行う予定を話した。俺は二人とも俺の全力の相手になってもらうため【状態変化 魔装召喚】の魔石を【創造者】と《万物創生》で作った武器に埋め込んだものである。二人の武器にも同じように【超回復能力】を埋め込んだものを付けておいた。
二人は自分が強くなるのが嬉しかったようで、俺と一緒に訓練することを喜んでくれた。そして、クロネが俺に「クロナ様も、一緒にやりませんか?」と誘っていたので俺は、クロナさんと俺でやるつもりだったのにと思ったのである。
クロナは俺と一緒に戦いたいとお願いしてきたので俺としては断る理由がなく了承し、クロネの師匠はクロネと言うことに決まった。その後クロナとクロネと俺の三人とクロアの五人で手合わせすることになったのであった。リリィは一人置いてきぼりだったので不満そうだったがリリスに説得され諦めていた。それから俺たちは訓練を始めることにしたのである。俺はリリィに、まず【魔導纏衣 魔拳闘士】を使って欲しいと頼むとリリィがすぐに使い、俺も使う。俺は【身体強化 Lv10 極 武神の型 】をコピーし【全身体能力向上 極 神人】のLv10を発動させたのであった。クロネはその光景を見て「……ありえない……私の時より明らかに強くなっている……なんで……」と驚きながらも興奮気味にそう呟いていた。俺は「それでは始めましょう。クロカさん、合図をおねがいしていいですか?」と言うとクロエが「私からでよろしいですか? 」と言うので俺は了承する。
俺はリリィに、「リリィ、本気でやっていいからな。お前も【魔導纏衣】で戦ってみてくれ」と言うとリリィは「わかった」と言う。そして、リリィが「クロナさんもいいですか?」と言うとクロナは「えぇ」と了承してくれたのである。俺は「俺から行きますね」とリリィとクロネとクロカに言い、俺はクロネに近付き蹴り飛ばすと、クロネは受け身を上手く取り反撃してくるので、俺もそれに対応する形で攻撃をする。リリィはリリアの槍を取り出しクロネ
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