宇宙人による実験
この観念論的思索はとても仏教的でもあると感じた。そして、どこか神秘的な例えばシモーヌ・ヴェイユのような哲学的思考を感じた。犠牲というワードが気になる。Aはとても犠牲という言葉に敏感になっているようだ。そして時折現れる精神的な神、そして物質を与えた神、そのような思考回路が見られる。よもやすると、哲人としての才覚が世に知れ渡るようになるのかもしれない。非常に興味深いテクストであった。
ところが病態が急変し、Aは病弱になってしまった。チェスの大会にも出れず、引きこもり、年金で暮らしている。活発だった動きから、ひどく惰性的になった。そして、色のついた人たちが見える、とこぼしているようであった。
死。それは突如やってきた。
彼がかたくなに見せなかった箱の中には、ある手記が入っていた。
「僕は監視されていることを知っていた。僕は神の子だ。僕は天の使いでした」
私は畏敬の念に襲われた。宗教か。行く先は宗教か。
我々は驚嘆と悲しみに襲われた。そして五十年後、神の使いであるAが世に知れ渡ることになる。
ある宇宙人の研究者たち。
人間というのは奇跡を目の当たりにしないと、神を信じない傾向あり。我々は宇宙に取り残された生物である。地球人は愚かだ。その精神性はまだ発展途中だ。
Aにある周波数を送り出し、彼の脳髄をいじった。そして驚異的な頭脳を作った。我々はある星雲にある星の人間である。知的生命体は、宇宙に四十種類ほどいるが、地球人ほど文明が遅れた星はない。彼らの精神的営みがもっと向上するよう願うばかりである。我々のプロジェクトは我々の王者であるパペルによって実施された。地球人を威嚇するつもりはない。ただ見守っている。彼らが神を信じる時、我々の力が作用していることを知らないだろう。キリストも我々の技術によって生み出された生命体である。
Aの精神はここにある。彼の生きた軌跡を保管する。Aの実験はうまくいった。地球人の愚かさと、その幻想たる愛、我々の愛は確固たるものである。我々は銀河系を支配するほどの力を備えている。アインシュタインにも夢を通して相対性理論を生み出させ、ホーキングにも叡智を与えた。それはある周波数によって脳を操作できる。
地球人は目覚めた人間が少ない。これからも闇の中を生きるだろう。しかし、希望はある。それはAの犠牲によって、地球人全体が目覚めることにある。あらゆる奇跡は我々の王者パペルによって為される。彼は神ではない。宇宙の王者である。
シュメール文明の発展の時も介入した。見守っている。いつまでも見守っている。宇宙全体の生命体の精神が、唯一全能なる存在になるその日まで。
被験者A 原氷 @ryouyin
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