第5話 結論(ガードル視点)



 この世界は、大きく言って3つに分かれている。なにもなく、殺伐とした荒野が続いているグリート。そして鉱石、魔石などの資源が豊富なガードルが皇帝として治める国々。戦争を止め、世界の先導者とされているアル王国。

 実質的に言って、人間が生きることができるのは後者の2つなのだ。もともとアル王国は、小さな王国に過ぎなかったのでここまでの成長ぶりには戦争をしていた人物からすると驚きである。

 そんな驚きとは一切関係ないのだが、ここにも一人の男がある報告を受けて驚いていた。


「国境であり、鉱山資源の8割を占めているあの山がアル王国の四天王、魔法のミケによって破壊されただと……?」

「はい……。幸い、破壊されたとき山の中には作業をしている者はおらず全員無事でした。ですが……」

「何かアル王国から、連絡等はきているのか?」

「いえ。きていません。もともと、山が破壊されたの気がついたのは働いていた者でしたので……。謝罪などは一切ありません」


 ガードルは、畳み掛けるような部下からの衝撃の報告を聞いて、声が出なくなった。

 果物の輸入打ち止め。それならどうにかして誤魔化すことができていたのだが、山が破壊されたとなるとこの事実は世界中にアル王国が悪なのだと報道されてしまう。もし、そんなことになってしまったら英雄のようになっているアル王国が失墜しこの世界は一体どうなってしまうのだろうか……。


「はぁ〜……」


 これから先、起こりゆることを考えため息を禁じ得なかった。それを聞いて、ガードルが怒っているのだと勘違した部下はビクリと体を震わせた。

 そもそもなぜそんな、アル王国のことを陥れるようなことを四天王である、魔法のミケがしたのだろうか。まさか、力を持て余していて暴れて山を破壊したのだとでもいうのだろうか?


「いやいや、そんなまさかな……」


 考えを取っ払って、新たな何か別の理由を考える。

 もともと、まずはじめにガードルに向かって敵対するだとか言ってきたのは参謀であるクーバ。何も心当たりがないのだが、なぜか果物の輸入を打ち止められたりした。まさかこれは参謀、クーバが最悪の事態を予想して最悪しか見えなかったので暴走しているとでも言うのだろうか?


「さすがになぁ……」


 あの、世界的に見てトップクラスのジリル・クーバがそんなことをするはずがない。

 もとより、参謀というのは王に向かって何かを助言する立場。なのでそんな自分から、敵対するだとかそういうことを決めるはずもない。


「じゃあ、一体どういうことなんだよ」


 色々考えたガードルの考えは、振り出しに戻ってしまった。

 まず事実としてあるのは、アル王国がなぜかガードルに向かって敵対関係というのになろうとしていること。証拠に、果物の輸入を打ち止め、鉱石がたくさん取れる山を破壊してきた。ガードルには、なぜあのマークスのアル王国が敵対してきているのかわからない。だが、敵対は2度の打撃を受けて明確に事実として受け入れなければならないと考える。


「ガ、ガードル様……」

「なんだ?」

「あ、あの、私受け取った報告書のこと間違えて読んでいました」

「……どこが間違えていたんだ?」

「そ、その……私は先程鉱石の8割を締めている山を破壊されたのだと言いましたが正確には、鉱石収集量が8割締めている山脈が木っ端微塵に破壊されたそうです」

「木っ端微塵……」


 部下が焦っているのか、口早に説明したのだがガードルは至って冷静にかなり飛躍した事態を受け止めていた。

 なぜ、そんなことをしてしまったのか。ガードルとマークスは兄弟同然の仲だというのに、敵対関係になりつつある。ガードルには理由がわからない。だが、ある一つの予想ができた。この予想は、すべての事柄に対してそれ一つで解決するもの。


「おそらくマークスは、本物のを作っているな」

「……ドラマ、ですか?」

「あぁ……。だって、そういうことにしたら連日の謎の行動にもうなずけるだろ? まずそもそもあれだけ仲がいいマークスが、敵対するなんておかしいんだから」

「で、ですが、さすがにドラマを作りたいということだけで本当に世界中に打撃がある鉱石の山脈を破壊するなんて、正気の沙汰だとは思えません」

「……おそらく、リアリティを求めてのことなんだろう」


 ガードルは、納得がいっていない部下に向かって優しくマークスが考えているであろうことを言った。

 リアリティを求めたドラマ。なぜ、マークスがいきなりとっ拍子もなくそんなものを撮ろうとしたかなんてガードルにもなんかにわからない。だけどそういうことにしておこうと、そうしておかないと本当に敵対しないといけなくなると思うことにした。

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