第2話 予想(クーバ視点)
アル王国参謀、ジリル・クーバ。
彼は26歳の若さにして一国の参謀という立場にたどり着いた優秀な男。なぜそんな若さで参謀になったのか。その一番の決め手となったのは、頭がきれるから。クーバはいつも最悪の事態を考え、助言する。なので彼がいる限り、最悪の事態というものは訪れないのだ。
だが、以前行われた会談。心配になり塔の上から望遠鏡を使って、見たものを思い出してクーバは床に大切な資料を手から落としてばら撒いてしまうほど焦りに焦りまくっていた。
一生口を利かない。その言葉は、皇帝が収めている国々と戦争をするとでもいうのか。
「国王!!」
最悪の事態が、最悪すぎるだけにクーバはもうこんなこと直接聞くしかないと思い国王がいる部屋の扉を勢いよく開た。
「なんだ?」
「あの……以前、ガードル様とした会談の件なのですが……」
「あぁ、そんなとか。あれなら滞りなく終わったけど、やっぱりせっかくだったからなにか追加で要求したほうが良かったかな?」
マークスは、資料に目を通して仕事をしながらクーバの言葉に答えた。
追加で要求。その言葉が、クーバの冷静であろうとしていた心が揺れてしまう。クーバは会談で二人が、いちごをめぐって言い争いをしていたのを見ていた。口を利かない。それだけでも、世界的に大きな事件なのだが一体それ以上に追加で何を要求するのか。クーバは思っている以上に、マークスがかなり怒っているのだと気づき僅かに戦慄した。
「いかがなさいましょうか……。私は参謀。いつもでも何かあれば、助言する立場にあるのですが今回ばかりは頭が追いつきません。なので、国王であるあなた様のことを信じてどこまでもついていきます!!」
「そ、そうかそうか。ならうぅ〜んと……果物とかどうかな? ガードル、会談のときに美味しそうにいちご食べてたからさ」
「果物!?」
クーバはあまりにも予想外の言葉だったので、声を裏返しながら聞き返した。それと同時にクーバの中で、マークスがどういうことを言いたいのかだいたい予想ができた。
それは、勝手にいちごを食べたガードルを許すことができず皇帝が治めている国々との貿易を打ち止めるということ。もし、そんなことをしてしまったら皇帝の受け止め方次第で確実に敵対関係になってしまう。クーバは新国王であるマークスが普段通りの姿なのだが、それほど怒っているのだとひしひしと言葉を受け入れて納得した。
「お願いできるかな?」
「はい! この、アル王国参謀ジリル・クーバにお任せください」
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