第20話 コンビニでの遭遇者(2)

 私とサカキが言い争っているのを遮って、女の子が進み出てきた。


「あたしはフウカ。連合の特攻隊長」

「はぁ」

「そろそろここらへんの女子のトップは赤丸ってやつ、終わらせようと思って」

「はぁ…」


 どうにかしてくれよとサカキを見上げても、彼はただ面白がっているだけだった。

 どっちに賭けようかななんて笑っている。せめて私に賭けてほしい。


「ここで決着つけよう」


 初めて会った子と決着なんておかしな話だが、相手が乗り気すぎる。

 私はしょうがなしにレジ袋をサカキに押し付けた。


「わかった、いいよ」


 言い終わるや否やポコッと一発頬を殴られる。周りがワッと沸いた。


 なるほど。最近本当によく舐められる。


「いけいけナズナ〜」

「黙らっしゃい」


 私はフウカちゃんに向き合って、一発もらったから、私も一発、と構えた。


 そしてノックダウン。

 まさかここまで弱いとは。そこらへんのレディースの方がまだマシだ。


 ノックダウン後の周りの白い目と言ったら。フウカちゃんを支える幹部たちの顔が怖い。


「なに、私が悪いわけ?」


 思わず愚痴がこぼれる程だ。

 私はそんな風に可愛がってもらった記憶は一ミリもない。


 やるせない気持ちを近くにいた男に発散しておく。

 さらに白い目で見られた。納得がいかない。


「お前女じゃねぇよ」

「加減とか分かんねぇのかよ」


 ナンデェ?もう3人くらい蹴り飛ばせってこと??


 持て、と今度は私がレジ袋を押し付けられ、サカキはツカツカと前に進み出た。


「お前ら調子いいね、限度っていうのはさ」


 サカキがど真ん中の男の胸を蹴って、追い討ちで脇を殴る。

 あの痛がり方は肋が折れている。


 サカキはもう一本、と楽しそうに笑う。

 3本目で殴るのをやめて、蹲る男を見下ろした。


「ここからさらに一方的に攻撃し続けることでしょ」


 試してみる?と周りに問いかけるサカキ。

 そして可愛い顔を苦しそうに歪めるフウカちゃんを指差した。


「ナズナは手加減してそれだから、そんなに弱いの当てがわないでくれる」


 薄く笑うサカキの耳元で組紐が揺れている。

 ちょっと気分が良くなった。


「こいつゴリラだからさ」


 サカキが私の頭に手を置き、ハハっと笑った。

 私もハハっと笑ってサカキの首を狙った。


「危な」


 特攻隊長ダウンの今、刃向かってくるものはいなかった。

 サカキとの関係性がほんの少し変化した夜の話。

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