第19話 コンビニでの遭遇者

 それからもしばらくやられてはやり返す日々が続いた。

 隆司と双子の攻防は日を追うごとに幼稚なものへとなっていく。


 隆司がピンクに染まった日の夜のことだった。

 生徒会で夜ご飯を食べた帰り、コンビニに寄ってお菓子を物色していると、「げ」という一言が聞こえた。


 サカキだった。


「お前本当に俺のこと好きだね、ストーカー?」

「いつか全部歯折ってまともに喋れなくしてやるから待ってて」


 怖、と笑うサカキ。

 カゴの中身が酒まみれなことに気がついて、私もニヤリと笑った。


「せっかくだし、未成年だってこと店員さんに伝えてあげようか」

「ここらへんは元々黒城のシマなんだから酒ぐらい買えるに決まってんだろ、相変わらず頭弱いな」

「ビール振り回してやろうか」

「残念これはハイボールって言いま〜す」


 どっちにしろ振りかぶれば凶器だろ、考えていると外に違和感を感じた。

 ちらりと確認すると、バイクが数台止まっている。

 敵意しかない表情を見るに、少なくとも黒城の連中ではなさそうだ。


「ここ君んとこのシマじゃなかったわけ?」

「え、あの弱っちそうなのお前の客なんじゃないの?」

「私あんなの知らない」


 どこかの暴走族が駐車場に集合し始めていた。

 うわぁと声を漏らすと、サカキは颯爽とレジに向かって行った。


「どうすんのアレ」


 お菓子を引っ掴んで尋ねると


「強行突破でしょあんなん」


 とサカキ。

 あの人数を?お手並み拝見したいもんだ。


 見守り隊の私は、サカキから少し遅れてコンビニを出た。

 サカキの前に男が3人、女が1人。幹部ってところだろうか。


 こっそり近づいてみると、サカキが文句を言われているのが聞こえてきた。



「迷惑なんだわ、女の最強は赤丸の生徒会長とか法螺吹かれんの」

「男女混合のチームはうちだけで十分なんだっての」



 なんだか見当違いのことで揉めている気がする。

 サカキは軽くため息をついてから、くるっと振り返って私を指差した。



「あれがうちと組みたいって言い出したからさ」



 おっと?

 一気にみんなと目が合って、とりあえず愛想笑いしておく。


「おかしいなぁそんなこと思ったことすらないのに」

「照れんなって」

「死にたいかサカキ」


「赤丸のナズナ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る