第15話 赤丸生徒会長(2)

「コレ、隆司のお客さんね?」


 ハッとナズナを見たころにはもう遅い。


「迷惑かけちゃダメでしょ」


 ハルも同じように蹴り上げられ、よろめいたところを殴り飛ばされる。

 ナズナは倒れ込んだハルの首あたりに片足を乗せた。


「どこがいい?セリの痛い分は骨何本分かなァ」


 ハルも必死にナズナの足を退けようとするが、ナズナは片足にしっかり体重を乗せ高らかに笑う。


「手っ取り早く腕とかいってみる?」


 首はさすがに私も、とケタケタ笑うナズナ。

 ここまできたら、もうどうにかして一旦収集つけなければならない。


「ナズナ、部外者が入った、一旦やめよう」


 思わず止めようとすると、ナズナの目が俺を捉えた。


「私、卑怯は嫌いって一回教えてあげたよね」


 ハルから足を離すと、一気にハルが反撃に出た。

 頬を殴られたナズナはゆらりとよろめく。


 やめろハル、止めようとした矢先。



「痛いなァ、もう」



 顔をあげたナズナの目はひたすらに冷たく、目以外で笑うその姿がおぞましい。

 これでもかと言わんばかりに殴り続けるナズナ。

 ハルが倒れ込みそうになれば無理やり立たせ、そして殴る。


「私と喧嘩したかったんでしょ、よかったね」


 願いが叶ったじゃん、と笑うナズナと、防御に徹し始めるハル。

 どこかの骨が折れる音とともに、今度こそハルが崩れ落ちた。



「…つまんないね、ハルくん」



 まるで子どもが壊れたおもちゃを見るような眼差しで、じっとハルを見つめている。

 ふとその視線はハルから離れ、ぐるっと周りを見回した。



「次は、誠くんかな」



 俺のことをまっすぐに見て笑うナズナ。

 俺とナズナの前に飛び出してきたのは一ノ瀬姉妹だった。


「ナズナさん、ナズナさんの手がボロボロになっちゃいます」

「ナズナさんお願いします、このままじゃみんな死んじゃう」

「でもあれ私のだから」


 退いて、とナズナ。

 引き下がらない双子。


「お願いしますナズナさん、玩具役なら私たちが」


 普段おちゃらけている双子の必死さが、事態の深刻さを物語っている。


「夏と秋は私の友達。守らなきゃいけない。悪いこともしてない」


 ナズナが話しているはずなのに、ナズナの言葉に感じない。

 さっきからずっと違和感がある。


「ナズナさんっ」


 しつこい、とナズナが一瞥すると、双子はすぐにナズナから距離をとった。

 2人で目を合わせて、真剣な表情で頷き合う。どこかのタイミングで入るつもりだろうか。


 終わりの見えないこの事態。腹を括ったときだった。





「俺がお前の玩具になってやろうか」




 酷く冷たく、この場を収めるに相応しい声が響いた。




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