第14話 赤丸生徒会長
どうしてあれが、生徒会長に…。
ただぼんやり考え込んでいると、スズランがあっと叫んだ。
ハッと意識が引き戻されて、慌てて前に集中すると、パイプ椅子を振りかぶった男が1人。
アカナが事切れた人形のように崩れ落ちる。
一瞬の出来事だった。
男の顔はよく見知ったものだった。
黒城の一匹狼代表格、コウキだ。
まさかもう少年院から帰ってきていたとは。
ハルに相当な恨みを持っていたはず。
ハルの反応が少し遅れた。高笑いするコウキが、ハルの頭をパイプ椅子で殴り続ける。
これはまずいことになった。
ようやく動きだそうとしたときだった。
「なァにやってんの」
風鈴のような声。
大きくはないのに、静かに響き渡る声。
台風の中、外れる寸前まで激しく揺れる風鈴のような声。
ナズナがパイプ椅子を素手で掴んでいた。
ナズナは笑っているが、コウキを制する腕の血管は膨れ上がっている。
「ンだこの女ッ」
宙を舞うパイプ椅子をヒョイっと
残されたナズナは足をゆっくり下ろす。
その顔を見て身体中に戦慄が走った。
ナズナのいつもの笑顔ではない。あんなに恐ろしい笑顔は見たことがない。
たった一発の蹴りで、脳震盪を起こしているであろうコウキが上手く立てないでいる。
「ほら立ちなよ早く、ほら」
ほら、と語りかける度にコウキの頭が床に激しく打ち付けられる。
「2人が一生懸命頑張ってたのね今」
コウキの体が床を離れ
「なァんで邪魔するかな」
鈍い音を立てて床に戻る。
「しかも後ろから、しかもパイプ椅子」
ナズナはパイプ椅子の背もたれをコウキの足の方に向く形で組み立て、勢いよくぴょんっと飛び乗った。
コウキの苦しそうな声が聞こえる。
ナズナの楽しそうな笑い声が聞こえる。
ナズナは足をコウキの胸あたりに乗せ、グイッと捻らせた。
悲痛な声が体育館中に響く。
「折れた?どこの骨?教えてよ」
「…ッ!!!」
「なァに聞こえな〜い」
バキッという音。ナズナがしっかりコウキの顔を蹴り上げていた。
「えーっと、ハルくん」
呆然とその光景を見ていたハルの方を、ナズナがさっと捉える。
「見てあれ、セリ」
目を向ければアカナは頭から血を流し、虚な目のまま周りに助けられている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます