第10話 衝突(3)

 サカキの横をすり抜けるとき、ちらりと表情を確認してみたけどもう私のことなんて見てすらなかった。


 女には全く興味ありませんよーってか。

 すかした野郎だまったく。


 心の中でヘラヘラしながら、誠の横もすり抜けようとしたときだった。



「危なッ」



 空を切った拳が、私の頬の周りの空気を唸らせる。私はグイッと体を捻ってそれをかわした。

 隆司には飛び蹴りぐらいかまされるかと思ってたけど、じっとしていた誠が動くとは。


 危うく頬が切れるところ。冷や汗かきながら前を向くと、廊下の男たちの空気が若干変わったことに気がついた。


 今のさえ避けれない私だと思われていたのか。

 流石に私、舐められすぎだな。


 私は口元に手を当てて、ニヤニヤ笑いながらサカキを振り返った。



「たかが女ごときに、おたくの誠くんのパンチは避けられちゃうのね」



 腹の中がどうなっているかはわからないが、サカキの表情は変わらなかった。


「ありがとう、男の子って意外と優しいのね」


 誠には渾身のウインクを贈呈しておく。

 ラコがクスリと笑った。


 教室から顔を覗かせている女の子たちが強気な表情を浮かべている。

 私はアハハっと声を出して笑った。

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