第6話 合併(2)

 ところが状況は一変した。

 体育館に入ってきた女の姿を見て、ハルが口をあんぐり開けている。


「これのどこが、お嬢様だよ」


 彼女たちのために細く開けられていた道は、不意打ち食らって後ずさる連中のせいで大きく幅広がっている。

 その道のド真ん中を、彼女たちは何の躊躇いもなく歩く。


 怖くて逃げ出すのでは、と笑っていたのに、むしろ威嚇や挑発で空気が充満している。

 なんの手違いがあったのかは知らないが、どっかそこらへんのお嬢様学校なんかではない。



 こいつらは、間違いなくあの赤丸だ。



 先頭の5人がそれを物語っている。



 両端のは、恐らく一ノ瀬姉妹。

 2人同時に倒さなければ、ゾンビのように片方ずつ起き上がるという噂のある双子だ。

 どちらも金色に輝く髪を肩まで流して、楽しそうに辺りを見回している。

 双子の見分け方は簡単。毛先が水色なのが夏、オレンジなのが秋だ。


 左から2番目には、小柄で清楚系の見た目の水上嬢。

 あの外見に惑わされて帰らぬ人のなった人間が何人いることか。


 その逆側には、赤髪が目立つ女、芹沢アカナ。

 あれは女だと思わない方が良いと聞く。




 そして、真ん中。

 各々好き勝手暴れていた4人をいとも簡単に手懐け、配下に置いたとんでも女。

 黒髪に化粧を載せない中性的で端正な顔つき。


 圧倒的な存在感。

 界隈で知らぬ人はいない。


 あれが、大宮ナズナ。




 そいつらは俺らの前まで来ると、足を止めた。

 ナズナがイチの真ん前に立って、にこりと笑う。



「ナズナです、赤丸で生徒会長してます」



 お嬢様学校だと知らされていた合併校。

 蓋を開けてみれば、長年黒城と睨み合ってきた全国トップの不良校、赤丸様のお出ましだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る