運命の人

NADA

出会いと別れ

ついに、出会ってしまった

こんなことがあるのだろうか

その瞬間から、目が離せなくなった

理想の人が、現実に存在するなんて

衝撃的な出会いだった

後光?光輝いて見えた

二重の切れ長の目

端正な顔立ち

筋肉質なのに、華奢な身体のライン

運命の人…


一目で恋に落ちたその日から、私の頭の中は、彼のことでいっぱいになった

寝ても覚めても、彼のことばかり想う

服を着るときは、彼の好みそうな服を選び、化粧をするのも彼のことを考えて可愛くなれるようにメイクした

彼のことを想うだけで、心が踊りだす


そんな日々を送っていた私が、友達の協力により、なんと彼と会えることになった!

彼の好きなタイプが細身の子だと聞いていたので、私はダイエットに励んだ

約束の日に向けて、精一杯可愛くなれるように

夜は早く寝て、睡眠不足にならないように

お肌のお手入れもしっかりして

新しいワンピースを買って

美容院を予約した

ネイルも丁寧に仕上げた


そして、その日はやって来た

朝からシャワーを浴びて、髪をばっちりセットした

メイクに時間をかけて、用意したワンピースを着て、アクセサリーと香水をつけて、全身鏡で念入りにチェックした

よし、完璧


高鳴る胸の鼓動を押さえて、約束の場所へ向かった

予定よりも早い時間に到着した

周りには、可愛い子がたくさんいる

私だって、今日の日のために頑張った

女の子は皆、好きな人に可愛く思われるように努力している

彼を待ちながら、同じ境遇の女の子たちを眺めた

皆、緊張して鏡を見たり、化粧を直したりしている

私も、ドキドキしてきた

もうすぐ、約束の時間になる


彼だ

少し離れた場所にいる

緊張はマックス

前髪を直して、彼の方を見た

恥ずかしくて、直視できない

彼が私の方を見た

目が合った

顔が熱くなるのを感じた

彼が近づく

近くで見る彼は、本当にカッコよくて、見とれてしまった


「今日はありがとう」

声もカッコいい

何も言えずに、照れ笑いをする私に向かって彼は微笑んだ

「かおりちゃん?」

私も、一番可愛い笑顔を作って彼を見た

彼が私の手をとり、軽く握る

ほんの少しだけ、見つめ合った

うっとりとする私に、横から何か声がした


「サイン受け取ったら順番に進んで下さい!」

ぶしつけなおじさんが、私の背中を押し退ける

サイン会の行列は部屋の外までずらりと続いている

一人当たり約30秒ずつで終了


やっと、出会えたのにもうお別れ

アイドルの彼は、次の女の子のサインをしている


〈かおりちゃんへ〉

彼の書いた文字のサインを大事にカバンにしまうと、私はスキップしながらイベント会場を出た

今日は、手を洗わないとこ~












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運命の人 NADA @monokaki

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