第38話 焦燥


(ポーションを作らないと!)


私は以前にましてポーション作りにせいを出している。

寝食を惜しんで……というほどではないのだけど、時間が許す限りやっている。


(なるべく沢山作るんだ!)


少しでもハンネさんの助けになるように。

手を動かしてないといろいろ考えてしまって不安に心が押しつぶされちゃいそうだ。


「あれ?」


材料が無くなってしまった。

いつもより沢山作っているのだから当たり前か。


「確か、ハンネさんは魔法使いギルドで売っているって言ってたな。」


ポーションの売上に関しても私が帳簿を付けて管理している。

そのため材料を購入しても十分売上が出るのは分かっていた。


「良し! 買ってこよう。」


追い立てられるように魔法使いギルドへ急ぐ。


(暇になるのが怖い。余計なことを考えちゃう。)


私は最近覚えた魔法”祝福”を使った。

この魔法は力や素早さとのステータスを全部3割も引き上げてくれる。

街に来る前の私と比較したらまさに飛ぶような速さで魔法使いギルドへ着いた。

受付のお姉さんにポーションの材料を注文する。


「ごめんなさいね。その素材は切らしているのよ。ポーション関係は軒並み素材不足でね。」


「……そうなんですか。わかりました。」


思わず「戦争で?」と聞きそうになってしまった。

そんなことを言ってもはぐらかされてしまうことだろう。


(どうしよう?)


家に帰っても材料が無いからやることがない。

あても無くぶらぶらと街を歩く。気がついたら街の入り口までやってきていた。

街の入口は広場となっており、人の行き来が盛んだ。

何と無しに設置されていたベンチに座り、行きかう人々を眺める。


(なんとなくだけど、兵隊さんが多い……かな?)


ボケっと眺めているだけで結構な人数の兵隊さんが行き来しているように見える。

多いような気がするけど、これが日常だと言われたらそうかもしれない。


(わかんないなぁ……。あ、また兵隊さん――じゃなくて冒険者さんか。)


年のころなら私と同じがやや上かな? 革の鎧を着て、腰に剣を刺していた。

認識阻害の指輪のおかげか私にはまったく気付かず、会話しながら近くを通り過ぎていく。


「いや~、ポーションの材料が高騰しているからウマウマだな。」


「だな! リスクを犯して魔物と戦う必要ないものな。」


「俺たちみたいな駆け出しでも入口付近で十分稼げる。今のうちに稼げるだけ稼いでおこうぜ!」


「よし! 今日も行くか!」


……それだ!!

素材が売ってないなら取りに行けばいいんだ!

幸い、全部の材料について群生地についてや加工の仕方も知っている。

私は善は急げとばかりに家に向かって走りだした。


家についた私は大急ぎで準備をする。

今からでも森の入口付近なら日が出ているうちに帰ってこれる。

夕ご飯も昨日作ったスープの残りがあるし今日はそれで済ませてしまおう!


(ハンネさんには……言わなくていっか。)


森の入り口付近でちょっと採取するだけだ。

日が暮れる前に帰ってこられる。忙しいハンネさんにわざわざ言うことでもないだろう。

買い物とかも声かけずに行っちゃってるし。


鉈よーし! 水筒よーし! 万が一にそなえての母乳よーし!

これだけ準備すれば大丈夫!


”祝福”を使い速度アープ! 森へ向けて走り出す。

森へ行くときは、いつもなら衛兵さんに一声かけてからいく。

ハンネさんの話だといざという時、捜索に出てもらえる可能性があると言っていた。

今回は本当に森の浅いところにしか行かない。

魔物が出ても十分倒せる。


(届け出なくていいか。それにハンネさんが一緒じゃないから引き止められてしまうかもしれないし。)


認識阻害の指輪を着けたまま、こっそり門を通り抜け森へ向かった。

森へ到着し、目的である薬草の群生地に向かう。


(あれ? 無い……。ほとんど採取されちゃっている。)


ここに生えているのは安いポーションの素材だ。

前来た時は私たち以外に採取した跡なんてなかったのに。


(あ! 昼間の冒険者さん!)


そう言えば薬草採取するようなことを言っていた。

仕方ない、もうちょっとだけ森の奥へ行ってみよう。


(ここもない……。)


次の群生地に向かっても薬草がない!

……こんなに材料不足が深刻だとは。

これは大人しく帰るしかないかな?

さらに奥に行くには日が暮れてしまう。夕飯になり姿が見えなければハンネさんは心配することだろう。

ハンネさんの助けになりたいのに心配をかけては本末転倒ってやつだ。


しょうがない、帰ろう。


そういって意識を森の出口側に向けようとした時 ポトっと頭に何かが降ってきた。


「うん? なんだろう?」


フードのうえにのっかったものを摘み上げ、目の前に持ってくる。

それは1mくらいの細長いもの。うん? うねうね動いてる? ……これは!


「へ、ヘビ~~!!!」


木の枝や蔦か何かだと思っていたらヘビだった。

私はヘビを放りなげ、びっくりした拍子に全力でその場から駆け出していた。


<あとがき>

エステルのステータス

Lv    18 up!

職業  聖女

HP   121/121 up!

MP   483/ 483 up!

力    45 up!

素早さ  43 up!

体力   36 up!

器用さ  61 up!

魔力   304 up!

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