第33話 初戦闘
今は7月初旬。
季節はすっかり夏になった。
この肌を一切出さないズボンとローブ姿で動きまわるにはかなりキツイ時期に思われるがそれほどでもない。
ハンネさんに魔法をかけてもらっているのでローブの中は外気よりだいぶ涼しい。
「”生命感知”……”生命感知”……」
ハンネさんの後ろを歩きながら敵がいないか魔法で確認する。
敵に気が付かなかったらどうしよう?
突然魔物が襲ってきたらきちんと対応できる自信がない。
「そんなに細かく使わなくてもいいぞ。それより一度に広い範囲を見るような意識にしてくれ。」
「はい。」
なるべく広い範囲に魔法がいきわたるよう意識して発動する。
すると今度はあちこちに命の気配が見つかった!
事前に虫とか小さな生き物の気配は除外するよう魔法を調整しておいたからこれらは……魔物!?
「は、ハンネさん! 気配が!」
て、敵が来る! そう考えると緊張してきた!
「うん、一番近いのでどらくらい離れている?」
ハンネさんが落ち着いた声で聞いてくる。
「えっと……300mくらいですかね?」
「100mくらいまで近づいたら教えてくれ。あと気配だけじゃなく、敵意を感知したらすぐに教えて。」
そっか、森の中なんだからそりゃ魔物以外の生き物は沢山いるよね。
危険なのは敵意を持って近づいてくるものを見逃さないことだね。
小さな生き物でも敵意を持っているものは見逃さないように調整しないと……。
調整といっても「こんな感じ」とイメージするだけでだいたい何とかなる。
「分かりました。」
言われた通り魔法を使い続ける。
う~ん……、同じ言葉を何度も言っているうちに”生命感知”という言葉がゲシュタルト崩壊してきた……。
あ、そうだ! 一回使ったあとは持続して気配を探知できるようにならないかな?
とりあえずやってみよう。
「”生命感知”」
杖に魔力を集め、魔法を一度発動させる。
そのあと持続して気配が追えるようイメージを持って魔力を杖に注ぎ続ける。
おぉ、出来た!
しかもMPの消費も連続で使うより少なくすんでいるような気がする。
この程度の魔力操作なら歩きながらでも十分できる。
「最初の薬草群生地はここからちょっと分け入った場所にある。」
ハンネさんは道からはずれ、進んでいく。
「えっと、すいません、ちょっと待ってください。」
場所をメモするため慌てて荷物からメモ帳を取り出そうとするとハンネさんに止められた。
「今日は森歩きに慣れてもらえれば十分だ。細かくはまた別の機会に説明するとしよう。」
確かに1度に何でもかんでも詰め込んでも私じゃ覚えきれない。
大人しく森に慣れることだけを考えよう。
「はい、わかりました。」
薬草の群生地では薬草の種類とどのような場所に生えるかを教わった。
空気の湿り具合や温度、風の通りなどは実地でしか体験できない。
感覚的なものは場数が大事とのこと。
いくつかの薬草群生地を経て、魔物は現れない。
気配はあるもののこちらが近づくと逃げていく。
「逃げていくのは動物だろう。魔物はこちらに気が付けば積極的に襲ってくる。森の入口近くは頻繁に冒険者が出入りするから魔物数は少ない。もう少しすれば増えてくるので油断しないように。」
成る程!
魔物は出ないし、慣れもあってちょっと気が抜け始めていた。
しばらく進むと4つの生命反応が近づいてきていることに気が付いた。
「ハンネさん、何かが近づいてきています。数は4です。」
「うん、そのまま見ていて。敵意を感じたらすぐに防御魔法ね。」
「わかりました。」
その反応に意識を向けていると急に敵意の反応に変化し、真っすぐこちらへ向かって動きだした。
「ハンネさん!」
「分かった。防御魔法を。」
「”聖壁”」
私とハンネさんを覆うように球状の光の壁が現れる。
”生命探知”の効果はしばらく続いているのでまだ敵意を追えている。
4つの敵意は別れて私たちを囲うような動きを見せていた。
(防御だけ! そう防御だけに集中! 魔法を切らさないように!)
「”風槍”」
ハンネさんが近づいてきた敵意の一つに対し、魔法を放つ。
ギャン!
その魔法に貫かれ、悲鳴のような鳴き声を上げて敵意が消えた。
残り3つ。
1つの敵意が私に向かってとびかかってきた。
がぁぁぁ!
現れたのは狼だ。大きさは私くらいある。
凄い速さだ! 藪から現れたと思ったらもう目の前にいる。
牙をむき出しにし、吠えながら噛みつこうと迫ってくる。
魔法で感じている敵意とは別に肌に刺すような怖さがあった。
「わ!」
その迫力に驚き、思わず尻もちをついてしまった。
その反動で防御魔法の集中が乱れる。光の壁が消えかかってしまう!
「集中! 魔力を杖に!」
ハンネさんの言葉に反射的に従う。
ガッ!
魔物は持ち直した光の壁に阻まれはじかれていた。それでもすぐに体制を立て直しすぐに飛びかかってこようとする。
魔物と一瞬目が合ったうな気がした。
その目は私を獲物として捕らえており、殺そうとしている意思がありありと読み取れた。
「きゃ!」
思わず悲鳴を上げ、また集中力が乱れそうになる。
「”風乱槍”」
その時、ハンネさんの魔法が放たれた。
どのような魔法かわからないけど目の前にいた魔物の頭がはじけ飛んだ。
残りの魔物もその魔法で打ち払らわれていた。
<あとがき>
エステルのステータス
Lv 7 up!
職業 聖女
HP 42/42 up!
MP 96/314 up!
力 19 up!
素早さ 18 up!
体力 15 up!
器用さ 31 up!
魔力 195 up!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます