第31話 魔法


「魔法の発現に必要なのは呪文とイメージだ。」


「呪文……イメージ……」


「うん、まずは使って見せよう。”火よ 灯れ”」


ハンネさんがそう言うと手の平に小さな火の玉が現れた。


「うわぁぁぁ! 凄い! 何もないところから火が!」


魔法だ! 始めて見た!


「ではやってみよう。今見たものをそのまま再現するつもりで……」


ハンネさんから呪文を教えてもらい手に意識を集中する。


「ひ、”火よ 灯れ”」


ぼわっ


私の掌にハンネさんと同じような火の玉が現れた。


「で、出来た!! 出来ましたよ!!」


「こ、こら! 危ない! 落ち着いて。」


「え、あ、はい……。」


手に火を出したままはしゃぎ回ってしまった。


「まぁ興奮するのはよくわかる。私も初めて魔法を使ったときはそんな感じだった。でも魔法の行使は危険もある。冷静にな。」


ハンネさんは苦笑いをしながら言った。

そのあと、水、風、土と魔法の練習を続ける。

水は水球、風はそよ風、土は砂が生まれた。


「凄いな……。まさか全属性使えるとは。」


「え?」


「最初魔法を使う時、普通は自分の属性以外はあまり発動しないものなんだ。」


「え~っと?」


困惑気味に話すハンネさんに不安を感じる。


「いや、悪いことではない。良いことなんだが……、得意属性を中心に教えようと思っていたのだがどうしようかな?」


「属性は火、水、風、土の4つですか?」


「基本属性はな。……ふむ、他も試してみるか。少し待て。」


そう言うをハンネさんは母屋に戻り、一冊の本を持ってきた。


「これは神聖属性の魔法が載っている魔法書だ。私は使えないため手本は見せられないが……。一応試してみよう。」


ハンネさんは本を開き、数ページめくり内容を抜粋して読み上げてくれた。


「詠唱は……”穢れよ 退け 清浄”だな。初級の浄化魔法らしい。イメージとしては教会の中のような空間をイメージして使うとよいらしい。」


なるほど……。教会、教会ね。

確かに静寂と清らかなイメージがある。浄化というイメージにぴったりな場所だ。

住んでいた村の教会を強くイメージする。


「”穢れよ 退け 清浄”」


ピカ―――!!


そう唱えた瞬間、眩い光が当たり一面を照らした。


「「目がぁぁぁ!」」


私とハンネさんは二人して目が眩んだ。


しばらくしてようやく目が見えるようになってきた。


「どうやらエステルの属性は神聖のようだな。」


ハンネさんが目をごしごしこすりながら言った。

魔法の効果か、家の周り一体が教会のような雰囲気に変わっていた。


「神聖属性の攻撃魔法と防御魔法を中心に練習しよう。基本となるところは変わらない。私が他の属性の攻撃と防御魔法を見せるのでそれでイメージを掴んでみてくれ。」


そう言ってハンネさんは庭の一角にある魔法の練習場へ連れてきてくれた。

練習場には土嚢で壁が作ってあり、高さと厚みが各々2メートルくらいで幅が5メートルほどあった。

その前にいくつも金属製の的があった。


ハンネさんはそこで火属性の攻撃魔法と防御魔法を見せてくれた。

攻撃魔法は炎の弾が凄い勢いで的に当り、周囲に炎を散らしていた。

防御魔法はハンネさんの胴体ほどある炎の盾が現れた。


「ではやってみよう。神聖属性の初級攻撃魔法は”聖なる力よ 邪悪を撃ちぬけ 聖弾”……だね。」


神聖属性の魔法が載っている本を見ながらハンネさんが教えてくれる。

炎の攻撃魔法は火の弾が飛んで行った。

神聖属性……、光の弾でも飛んでいくのかな?


「え~っと、”聖なる力よ 邪悪を撃ちぬけ 聖弾”」


バシュッ! ドーーン!!


手を的に向け、魔力を集め詠唱した。その途端凄まじい速度で光の弾が飛んでいき、的を弾け飛ばした。

粉々になった的の金属片が魔法の勢いの余波で土嚢にガスガスと刺さっていく。


「……うん、エステルはもう少し魔力制御の練習が必要みたいだな。」


「……はい。」


「弱いよりは――良いことだよ。……たぶん。」


ハンネさんに言われ魔力制御とイメージを繰り返し練習した。

そのおかげか1週間ほどで丁度よい威力の魔法が出せるようになった。




<あとがき>

エステルのステータス

Lv    1

職業  聖女

HP   10/10

MP   166/166 up!

力    2

素早さ  2

体力   2

器用さ  11 up!

魔力   125 up!

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