第19話 指輪
「それなら我々で送って「エド、この犯人を引き渡さなくては。」……、えっと、サムに送「護衛がエドから離れるわけには行きません。」……。」
フードの人の提案を、黒髪の男性が地図を書きながら潰していく。
「うーん、では、そうだ。これを君にあげよう」
そう言ってフードの人は指輪を取り出した。
「エド、それは――」
「いや、ダン、このお嬢ちゃんには必要な品だと思うぞ」
今度は赤髪のお兄さんが言葉を遮った。「……まぁ、そうだな」と黒髪の男性が頷く。
フードの人がニコニコしながら指輪を差し出してくる。
「えっと、これは?」
「これはね、認識阻害の魔術がかかっている魔道具だよ」
「ま、魔道具!? そんな高価なもの頂けません!」
それこそ金貨50枚はしそうだ! ……魔道具の正確な価値なんてわからないけど。
「まぁまぁ。僕たちは君を送っていけない。だけど、このまま君を一人で行かせるのも騎士の沽券に関わる。折衷案ってわけさ。僕のためにも受け取ってくれないかい?」
「は、はぁ」
騎士様の沽券に関わる、とまで言わせちゃったら拒否するわけにもいかない。
おずおずと手を出し、指輪を受け取った。
「その指輪はね、身に着けると周囲から認識されにくくなるんだよ。」
「認識されにくく?」
むむむ、よく分からない。
「例えば……街を歩いていれば、道で多くの人とすれ違う。でも、すれ違った一人一人がどんな背格好や服装だったかまで、いちいち覚えていないだろう? そんな感じで、君という『人がいる』ということは認識できても、君がどんな特徴をした人だったか、周りの意識にのぼらなくなるのさ」
「ふむふむ?」
丁寧に説明して頂いて、何となく効果は把握できたけれど、それを私に渡す理由がピンと来ない……アホな子ですみません……。
フードの人はくすりと笑った。
「簡単に言うと、悪い奴らに絡まれなくなるってこと」
「成る程!!!」
そういうことか! 確かにそれがあればとても安心だ!
「では指に着けてみて」
「はい」
指にはめてみる。
「……うん。いい感じだね。これなら大丈夫だ」
私的には何が変わったかさっぱり分からない。
「これが地図だ」
黒髪の男性が地図を差し出してくる。私に視線が向いているのはわかるけど何となく視点が定まっていないように感じる。
「今いる場所が、ここ……他に、分からないところはあるか?」
貰った地図には目印となる建物の特徴がはっきりと書かれていた。
店名や、何の建物かまで記されているので、間違えようがない。
うん……、やっぱり曲がる場所を間違えていたっぽいね……。
「はい。大丈夫です」
「そうか。では、気をつけて」
「本当に、どうもありがとうございました」
私は何度もお礼を言って、親切な騎士様達と別れた。
(やっぱりこの街に来てからついてるなぁ)
当たり屋に絡まれるトラブルはあったけど、通りすがりの騎士様に助けてもらえるなんて。
村でロブに絡まれた時は、助けられた村長にそのあと襲われるようなあり様だったのに。
しかも、3人ともとても紳士でイケメンだった!
あんなキラキラした人達は村で見たことがない。
それも併せてラッキーだった!
騎士様かぁ、話には聞いていたけどカッコいいなぁ。
やっぱりお貴族様なのかな?
カッコいい立ち姿を思いだし、思わずにやにやしてしまう。
(騎士様に助けられるなんて、まるで物語の主人公みたい!)
赤髪のお兄さん、サムと呼ばれていた人は気障っぽいのにどこかユーモアがあって素敵だった。
黒髪の男性、ダンと呼ばれていた人はちょっと冷たそうだったけど知的で、丁寧に地図を書いてくれた。見た目の印象よりも優しい人なのかもしれない。
フードをしていたエドと呼ばれていた人……あの優しそうな、緩やかな金髪の、お父さんみたいな眼差しをした人は、そういえば……
(あの人だけ、一度も私の胸を見なかった)
路地を振り返る。騎士様たちの姿は、もう見えない。
(また、会えるかな)
足取り軽く、そんなことを思いながら魔術師ギルドを目指した。
<あとがき>
騎士② ダン(ダンフォース・ジュラール・マリタン)のステータス
Lv 24
職業 宮廷魔法使い
HP 134/134
MP 211/211
力 45
素早さ 77
体力 51
器用さ 77
魔力 195
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