第17話 助け

「何をしている!」


その時、厳しく誰何する声が響いた。

男たちの動きが止まる。


声のする方を見ると3人の人影があった。

マントを羽織り、フードを目深に被っている。

男性だろうか? 皆背が高い。


「お前たち、その汚い手を可愛い子ちゃんから離しな。」


フードのうちの一人が、場にそぐわない緊張感の無い声でそんなことを言った。

その人がフードを外しながら前に出てきた。

明るい赤い髪の色、緑色の瞳。

ちょっとチャラそうなイケメンのお兄さんだ。

20歳くらいだろうか。振る舞いに余裕があり、大人びて見える。


「しゃしゃってんじゃねぇぞ! こら! すっこんでろ!」


私を掴んでいた男の人が声を上げる。


「もう一度だけ忠告してやろう。……さっさと離せ!」


ゆっくりとした動作で声を出した男を指刺しながら言った。


「けッ、カッコつけが。ケガしねぇとわからねぇみてぇだな。」


男は私を離し、赤い髪のお兄さんへ向かっていく。


「死ねや! こら!」


男がお兄さんに殴りかかる。


(危ない!)


私は思わず心の中で叫んでしまう。

お兄さんは一切慌てる風でもなく、落ち着いて男の攻撃を見ていた。

するどどうだ、お兄さんの手が素早く動いたと思ったら男が突然崩れ落ちたのだ!


「なんだ、ただのごろつきか。期待外れだな。」


何をしたかさっぱり分からないけど、どうやらお兄さんはあっと言う間に男を倒したみたいだ。


「やろう……! 調子に乗るなよ!」


もう一人の男がお兄さんへ向かっていく。

男の右手でナイフを抜きはなった。

それを見たお兄さんはさっと構えを取った。


「どりゃ!」


男が大振りでナイフを振り回す。

それに対してお兄さんはさっと腕を動かし、相手の腕を受け止めた。


それを見て男がにやりと笑う。

右手に握られていたはずのナイフが気が付くと左手に握られていた。

大振りの攻撃は相手の油断を誘う罠だったのだ。


「死ね!」


男は先程のような大振りではなく、コンパクトに鋭くナイフを突き出した。

しかし、お兄さんはそれを鮮やかに躱してみせた。

さらに男のナイフを持った手を掴んだ。


「ふふふ、なかなかやるじゃないか!」


お兄さんが獰猛に笑いながら、掴んだ手をひねり上げた。


「いたたた!」


男がたまらずナイフを落とすと、次にお兄さんは男を投げ飛ばした。


「ぐぇ!」


地面に叩きつけられた男の頭をとどめとばかりに蹴りを加え、意識を刈り取った。


「これがあるからストリートファイトはやめられないな。」


お兄さんはふっと笑い、前髪をかき上げた。


「遊びすぎだ。サム。」


フードを外し、黒い長い髪の男性がそう言った。

男性は眼鏡をしており、瞳の色も黒色だ。

顎が細く、鋭く鋭利な目をしている。どこか冷たそうな印象を受けるイケメンさんだ。


「じょ、ジョンがやられた!」


残りの男たちは見るからに浮足だっている。


「おめぇら!こんなことをしてただで済むと思っているのか!」

「そ、そうだ。俺はさる高貴な方に頼まれたツボをこっちのお嬢ちゃんに割られただけだ。被害者なんだぞ!」


「ツボ?」


男の言葉に黒髪のお兄さんが反応する。


「こ、これだ! このツボをこのお嬢ちゃんが割っちまったんだ。お前らには関係ない話だろうが!」


「ほう……、見せてみろ」


黒髪のお兄さんがすーっと男に近づく。


「あ、ちょ! やめ!」


男が何か言うのを無視し、ささっと箱をあけ、中身を確認してしまった。


「なんだこれは? ただの安い素焼きのツボにあとからゴテゴテと色を塗った食っただけじゃないか。塗料も安物……こんなものはせいぜい銀貨1枚が関の山だろう。」


「銀貨1枚!? えぇ! 金貨50枚はするって」


思わず私がそう言うと、黒髪の男の人は残った男たちに厳しい目を向けた。


「なるほど、そうやってこちらのお嬢さんをかどわかそうとしたわけか。」


男たちは慌てて言い募る。


「い、言いがかりだ!」

「お前たちには関係ないだろう! 衛兵を呼ぶぞ!」


「君たち、これが見えないのかい?」


フードをした最後の人が、マントの留め金を指で叩く。


「そ、それは騎士の紋章!!?」

「なんで騎士がこんなところに!」


(騎士様!?)


男たちと同じく私も驚いた。



<あとがき>


ジョン(チンピラ②)のステータス


Lv    13

職業   チンピラ

HP   40/40

MP   0/0

力    16

素早さ  25

体力   17

器用さ  30

魔力   0

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