第15話 街歩き
「お嬢ちゃん、出稼ぎなのかい?」
うーん、叔母さんの家に住まわせてもらえたとしても、仕事は必要だ。
出稼ぎとは少し違うけど、仕事を探しているのは事実かな。
「まぁ、そんなようなものです」
「そうかぁ。良い仕事が見つかるといいね」
感じの良いお姉さんだなぁ。
やっぱりうちの村、ちょっとおかしかったのかなぁ。
どうしてあんなに敵だらけになってしまったのか……とほほ。
せっかくだからちょっと聞いてみよう。
「あの、人を探しているんですけど……」
「人探し?」
「はい、探しているのは叔母なんですけど、この街で魔法使いをやっている筈なんです」
「え、叔母さんが魔法使い? そんなコネがあるんだったら良いところに就職できるだろうね。就職できたらまた食べに来ておくれよ。」
「ぜひ!! あ、でも、それが手紙を出しても返事がなくて、居場所がはっきりしないんです。」
「あぁ~、魔法使いって確かに手紙とか返事を書かないイメージあるね。偏屈なのが多いからねぇ。」
「それでどうやって探したらいいかわからなくて……。」
「ふむふむ、それなら魔法使いギルドに行くと良いよ。」
「魔法使いギルド?」
「魔法使いを束ねている場所さ。国の魔法使いはみんな、ギルドに所属してなきゃいけない筈だよ。……たしか。」
お姉さんに魔法使いギルドまでの場所を尋ねると、丁寧に教えてくれた。
お礼を言って、さて行こうとしたところで、お姉さんに呼び止められる。
「お嬢ちゃんさ、そのローブ、フードついてるなら被っといた方がいいよ。お嬢ちゃんみたいな子だと変な奴に絡まれるよ。」
そういえば、衛兵さんの前で外して、そのままだった。
絡まれる……むむむ、やっぱり子供っぽいってことだろうか。
「え? あ、はい。分かりました」
「それじゃ、気を付けてね」
。
お姉さんに再度お礼を言って別れ、教えてもらった道を行く。
(いい人だったなぁ)
同性と何気ない会話を交わせたのは、随分と久しぶりだ。……楽しかったなあ。
(幸先がいい。この街ならやり直せる気がする。友達もできるかも!)
よし、と気合を入れて歩き出す。まずは叔母さんを探さないと!
「えーっと、この通りをまっすぐ行って、大きな白い建物を右に進んで……」
……それにしても人が多い。どこを見ても人がたくさん歩いていて、村人総出になる収穫祭のような風景だ。
気を付けて歩かないと前から来る人とぶつかってしまう。
目印の建物を見逃さないよう上を見たり、前からの人に注意を払ったりと忙しない。
(街の人って凄いなぁ、何であんなにスイスイ歩けるんだろう?)
本当に不思議だ。
特に注意を払っている様子がないのにぶつからない。
(おぉっと、目印を見逃さないようにしないと。)
見上げながら歩く。
(白くて大きな建物……、大きい……っていうか、見える建物が全部大きい……)
私の基準で言ったら、2階建てだって十分な大きさだ。
なのに、今歩いている通り沿いには普通に3階建て、4階建ての建物がある。
(……これはつまり、『大きな』というのは5階建てぐらいの建物ってことかな?)
しばらく進むと、5階建てのちょっと黄色みの掛かった白っぽい建物が見えた。
そこには少し細いが右に曲がる道がある。
(これかな? この建物は他より大き目だけど、うーん、色も完全な白じゃないし。)
この先にもっとそれっぽいのがあるのかな?
もし、ここが目印の場所だとしたら行き過ぎてしまう。
(もっとちゃんと聞いておけばよかった……。)
大きな建物っていうくらいだからもっとはっきりと大きいのかもしれない。
周囲を見ても、5階建てはそんなに見当たらない……いや、少しはある。
(やっぱり違うのかな? むむむ、分からない……)
次の目印は突き当たりと聞いている。突き当たりを左に曲がってしばらく進めば魔法使いギルドがあるらしい。
とりあえず、一回曲がってみようかな?
違ったら引き返せばいいし、なんなら誰かにもう一度聞けばいい。
よし! 曲がってみよう。
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