第67話 傳次郎の歌とアマンダの弦楽器
歌い出した僕にアマンダの
「だれをよんでいるのー?きえたこいのすがーたー」
始めは僕の声に沿うように弾いていたアマンダの弦楽器の
「相手は自分の事を見ていない、そんな切ない恋の歌ね。相手はいる、でも心がいない…」
馬車の中、ルイルイさんの呟きが聞こえた。
「ただ、きみを、きみを、つよく、だいてたー」
さあ、サビが来る。視界の端に青い髪がちらり…。視線だけちょっと横に向けると隣に座ったライが真剣な表情で僕を見ていた。
「あーんばらんすなきーすをかわして…」
ここは他の音域にする事なくアマンダの
この歌は僕が生まれるよりも前の歌だ。教えてくれたのは小中高とずっと同じだった友達、その歌が含まれたアニメ作品を借してくれた事で耳にする機会を得た。
「サビの高音を伸ばすところがあるだろう?そこが出せれば比較的歌いやすい。それに結構聞き惚れさせられそうだとは思わないか?あまり異性と話す機会が多くないキミでも歌でなら自分の声を聞かせてやれるじゃないか」
「うるせえよ」
そんなやりとりをしたボサボサ頭に分厚い眼鏡をかけた友人の姿を思い出す、今頃何をしてるんだろうな…。
アマンダの
最初のサビを歌いきったら終わろうかなと思っていたんだけど結局フルで歌ってしまった。あまり長く歌うつもりはなかったのに…。だが、皆が妙に真面目に聞いてくれるのとアマンダの演奏が良かった事もあってついついやってしまった。もしかすると僕はカラオケとかで一度マイクを握ったら離さないタイプなのかも知れないな、そんな事を思いながら歌い切った充実感にひたっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます