第26話 時間は金で買えるもの
商業都市セキザンに入る為、門に通じる行列に並んだ僕達。商売が盛んな地域、モノとカネがあるならそれを動かすヒトも多く集まる。しかもそれが地球のように人間だけではなく色んな種族がいる。並んでいる僕達の前後にはこれまた色々な姿形をした人々がいる。
そんな門の入り口から文字通り長蛇の列を作る僕達の横をまるでお構いなしと言った感じで進む馬車5台の商隊、前後左右を騎馬が固めている。鎧や武器などは統一されておらず肌の色どころか種族さえもバラバラだ。
「どこかの商人とその護衛ね」
メイメイさんが呟く。
昨日の雨のおかげで砂埃こそ立たなかったがそばを通り過ぎていかれると音といい振動といいかなりの迫力だ。
その馬車の一団は列に並びもせずに門の方へ向かっていく。門番らしき者達がその一団を出迎え、何やら話し始めたかと思ったらすぐに離れた。
「通って良し!」
門番がそう言うと馬車の一団はセキザンの中に入っていった。
「えっ?こっちは行列に並んでいるのに…」
僕がそう呟くとルイルイさんが言った。
「デンジさん。このセキザンではお金が何よりモノを言うの。あの商隊はお金を払い最優先で門での調べを受け通行を許可された…。人数分、そして荷馬車の台数分の上乗せ料金を払ってね。言わば彼らは買ったのよ。並んでいたら失う時間を…ね」
「あ…」
日本でも似たような事があるじゃないか。例えば道路。車やバイクでどこかに行くとして一般道なら確かに利用料金はかからない。だけど高速道路をはじめとして有料の道を使えば信号もなく速度もより速く出して良い道を使える。
鉄道だってそうだ。普通列車で東京から京都に行こうとしたらいったいどれだけ時間を要するだろう。だけど新幹線ならものの数時間だ…。
新幹線などに乗れば確かにお金はより必要にはなる。だけどその代わりに早く目的地に着く。彼らはその権利を金で買った。時間もかからず、それに伴い疲労も減る。お金は何も物を買うだけじゃない、サービスも買えるんだ。僕は宿屋もやってみようかと思っていたが、宿泊業はサービス業だ。泊まった部屋の良し悪しや食事だけじゃない、利便性みたいなものも売りにできないかな…。
次第に小さくなっていく馬車の一団の後ろ姿を見ながら僕は漠然とそんな事を考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます