第16話 やりすぎ二匹(ざまあ回)
「き、君達は…?」
「みゃー」
「くぅん」
羽の生えた子猫がゆっくりと床に着地し僕の足にじゃれつく。そして首から胸元に模様のある子犬は僕をまっすぐに見つめ呼びかけた声に応じた。
「おいおい、
併設された酒場でこの様子を見ていた他の冒険者がはやしたてる。
「テ、テメー…ッ!!」
ダンと呼ばれた男が立ち上がった。
「お、俺様を突き飛ばしやがって。そのクソ猫とクソ犬、蹴飛ばしてやらあ!」
「あ、危ない!」
僕は思わず声を上げた。しかし二匹は蹴り飛ばそうとしたダンの足を足を華麗にかわしてみせる。おまけにかわし終えた二匹は余裕たっぷりの様子。子猫は退屈だと言わんばかりに
「ナメやがって、テメーの飼い犬と飼い猫なら責任とってもらおうか!お前ら、ヤツをやれ!」
「「へ〜い」」
ダンの仲間二人がこちらに向かってくる。すると素早く僕の元に戻った二匹が突進して体当たりを仕掛けた。二人はあっさりと吹っ飛びダンを巻き込み床を転げた。
「クソがっ!もう許さねえ、お前らやるぞ!」
そう言うとダンが腰の短剣を抜いた。つられて残る二人も短剣を抜いた。
「ここで
ぺろり、ダンが手に持つ短剣の刀身を舐めた。
「死ねや、クソガキィィ!!」
ダンが短剣を振り上げ迫ってくる。
「フシィッ!!」
「クォルルルルッ!!」
ぼとっ!!ぼとぼとっ!!
ばたばたっ!!
「ぐぎゃああ!?」
「ぐふ!う、腕が、腕があ!」
「い、痛えよ!痛えよ!」
なんと三人の腕が凶器を持ったままギルドの床に落ちた。何も見えなかったがまるで切れ味鋭い刃物でスッパリいったように綺麗な切断だ。さらに強烈な振動というか波動のようなものが三人にぶつかったのが見えた。服や髪、皮膚までも揺らしたコップの中の水のように揺らいだからだ。あんな衝撃が体を駆け巡ったら脳震盪でも起こすか、内臓にダメージを受けてしばらくは満足に動けやしないだろう。
「た、助けてくれ!」
「ち、治療師か神官を呼んでくれえ!」
「し、死にたくねえ!死にたくねえよ!」
ダン達が口々に叫ぶ。
「黙らぬか、
だ、誰?急に女の子みたいな声がしたぞ?
「武器まで抜いて殺しにかかり、いざ自分がやられたら命乞いか?」
「そこな野良猫の言う通りだ。まあ、腕を飛ばすのはどうかと思うがな。…それより貴様興味深い事を言っていたな?地獄に行けと…、似たような所ならすぐにでも送ってやそう、冥界にな」
こ、子犬も喋った!!?
「ふん、気は進まぬが妾なら魔界に送ってやれるぞ。…どうだ
「「「ヒイィィッ!ま、魔族か!?」」」
ダン達が震え上がる。
「おやおや…、どうした先程までの勢いは?妾達を殺したいのであろ?向かってこぬか、まだ腕は一本残っておるじゃろう」
「ふむ、我は冥府と物資界を行き来し生死を司る。時と場合によってはその腕治してやっても良いぞ」
床に倒れた三人の目前で二匹が言葉を続けた。
「む、無理だ!か、勘弁してくれ…おらあっ!クソ猫ッ」
ダンが失った右手からではなく隠し持っていたであろう短剣を残った左手で抜いて子猫に襲いかかった。
「ふんっ!!」
「ぐぎゃあ!!」
ダンの左腕も落ちた。
「気づかぬとでも思うたか?だが、妾は人の悪意に敏感でな…」
「どうやら冥府に送る価値もないようだ、審判を待つまでもない。
ダン達が転がる足元に黒い
「う、うおわああっ!!」
三人が渦が飲まれていく。
「い、嫌だ!や、やめてくれ!」
「嫌た?やめてくれ?ならば自分がされて嫌な事を他人にしておいてか?確信した、生かす価値はないと。そのまま地獄に落ちるがよい、
そのまま三人は渦の中に飲まれていった。
「あ、ああ…」
僕は思わず声を洩らした。
「き、君達…、子猫と子犬じゃなかったの?」
おそるおそる二匹に尋ねると子猫と子犬はこちらを振り向いて口を開いた。
「違うぞ、豹の体じゃ!」
「我は狼の体に
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