第11話 猫と犬?
「フシャアアアッ!!」
「クァアアルルルッ!!」
茂みの向こうを覗いてみるとそこには二匹の動物がいた。片方はヒョウ柄の毛並の小さな猫だった。背中に一対の黒い大きなブチがあり、僕の両手のひらに乗せる事は簡単にできる大きさの猫が全身の毛を逆立たせ威嚇しているのだった。
もう片方は青をベースとした首輪…よりは大きい面積、肩や胸元までも覆うような物を巻いている小さな犬、きっと子犬なんだろう。威嚇してくる猫に対抗して唸り声を上げてこれまた威嚇しているのだが、大型犬のような『グルルル…』といった低く迫力あるものにはなっていない。まるで変声期前の子供のように細く高い鳴き声で唸り声を上げヒョウ柄の子猫と睨み合っていた。
二匹の対峙する真ん中には青い鳥が横たわっている。カラスを少し大きくしたようなサイズ…、すでに息絶えているようで地面に横たわりピクリとも動かない。
どうやら二匹はその青い鳥をめぐって争っているようだ。自分の獲物だぞ、そんな事を言っているかのように。
「あああ、ダメだよ!ホラホラ!」
僕はそんな二匹に声をかけ近づいていった。
「こんな所でケンカして、もしケガでもしたらどうするの!?」
僕の育った地域でとある野良猫がいたのだけれど、小さな頃にケンカでもしたのかケガで片目が潰れていた。他にもネットニュースなどで車か何かにぶつかったのか後ろ足が不自由な猫の記事を見た事もある。
もしこの二匹がケンカして大きなケガでもしたらこれからの生活に大きな支障をきたすかも知れない。あるいは動物病院とかだってないんだろうからそのケガが
洞窟の中にいたようなヤツら…、ルイルイさん達にしようとした事や女を渡せとか中に入れろと武器を振り回した事を考えるとどうなろうが知った事じゃないと思った僕だが、この二匹がケガしたり死んだりするのは嫌だと思った。別に何か悪さをされた訳でもないし、単純に姿形が可愛いと思ったのもある。
そんな二匹は突然現れた僕という存在に気付くとこちらを見た。当然、二匹の間の威嚇は一旦収まり一時休戦となったようだ。
「お腹が空いてる?だからこの鳥を巡って争っていたんだね。ケンカしないで待ってて。食べ物を持ってくるから、良いね」
そう言うと僕は急いで店に戻り商品を持ち出した。二匹は僕の言葉が分かったのかケンカはしないでそこにいた。レジャーの時などによく使う紙製の皿にカリカリのキャットフードとドッグフードをそれぞれに出してやった。
二匹はそんな僕の様子を怪しいものでも見るかのようにしていたが、差し出したペットフードの匂いが風に乗って届いたのか鼻をひくひくと動かすと皿に首を伸ばすようにして食べ始めた。
カリカリ、かつかつ…。
二匹の
「…ん?そうするとアレも気に入るのだろうか…」
ペットフードを食べている二匹を残し店にとある商品を取りに戻った。
「これはどう?」
そう言ってこれまた店から持ってきた『ちゅ◯る』と『わん◯ゅーる』をそれぞれに与えてみる事にした。
「「ッ!!?」」
新たに与えようとした物に二匹がたちどころに反応、それぞれが僕が両手にもつ物にその視線は釘づけだ。
「フシャッ!!」
「クゥ…!クォロロ…」
二匹があからさまに警戒している…、しかしその視線を外そうとはしない。なんて言うか食べたいんだけど素直に口にはしたくない、そんな野生の
ふわっ。
食べないのかな?そう思った時に柔らかい風が吹いた。
「「ッ!!?ぺろぺろぺろ…」」
ピクリと鼻が動くと二匹は夢中で舐めだした。二匹は僕の指まで舐め尽くすんじゃないかという勢いだ。野生の矜恃、どこ行った?
ともあれ二匹が食事に夢中になっているのを見てケンカは収まったようだと安心する。僕は『ちゅ◯る』と『わんちゅ◯る』を紙の皿に絞り出してやり一心不乱に舐め尽くす二匹の様子を見る。
…やっぱり異世界なんだなあ、猫も犬も地球とはちょっと違うんだ。
まず猫、背中にある一対の黒いブチなんだがこれは黒い毛並みではなく翼であった。ハロウィンの仮装に飼い主がペットの猫の背に着けてやるような黒いコウモリのような形の翼だ。時折、嬉しそうにパタパタと動かしている。
一方、子犬の方も首元や胸元に青色の首輪のような物を巻いていると思っていた。しかしそれは身につけていたものではなく自毛であった。青色をベースに黄、赤、その他の色で縁を飾ったかのような…、まるで飼い主が愛犬に着せた服やマフラーのような感じだ。
「さすが異世界、犬や猫も姿形が違うんだなあ…」
僕はよく食べる二匹の紙皿におかわりのペットフードを出してやりながら呟いた。しばらくすると二匹とも満足したようだ。
「おう、よしよし…」
そう言って僕は子猫を撫で始めた、姿はちょっと変わってるけど可愛いもんだ。お腹を撫で喉元を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らし気持ち良さそうにしていた。うーん、立派な前歯だ。いや、犬歯とか牙とかいうヤツかな。
「くぅん、くんくん」
何やら子犬が鳴いている。
「あっ、放っておいてごめんね。よし、お手!」
しゅたっ!!
子犬はその右前足を即座に僕の手に乗せた。
「ははは、可愛いなあ」
僕はそんな事を言いながら異世界で出会ったちょっと変わった姿形の小さな二匹と触れ合っていた。
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