《序章》世界転移。それは召喚でも転生でもなくこちらから行くものでした。…バカ兄貴のせいで。

第1話 はじまりはバカ兄貴のせいで

 

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 □



 PRRRRRRR…。


 PRRRRRRR…。


 家の電話が鳴っている。


「はい、加代田かよだ商店です」


「おっ!?傳次郎でんじろうか?オレだ、オレオレ!オレだよぉ!」


「今時そんな詐欺電話みたいの流行らないよ。で、どうしたの?兄さん」


 とある田舎の小さな集落にある商店、そこにかかってきた電話に出たのは僕…、加代田傳次郎かよだでんじろう十八歳。この家の次男坊だ。


 そんな僕が電話の相手は少し歳の離れた実の兄である加代田家の長男である征一郎せいいちろう初代ファーストガン◯ムにハマり『オレは将来ガン◯ムを作る』と言い残し東京のとある工業大学に行った。ちなみに一番好きなキャラクターは某『赤い人』である。今では家電メーカーに就職し、商品開発にいそしんでいるらしいのだが…。


「おうっ!実はな、良いプログラム組めたんだよ!んで、それをお前のパソコンに送信おくっといたからさ!ちっと実行はしらせてくんねえ?」


「兄さん、もう三十になるんだからさ。もう少し落ちつきなよ」


 そんな兄はマッドサイエンティスト的な言動をよくする。とんでもないものを作っては怒られ、しかしある時にはとんでもないヒット商品を生む事もある。とにかく紙一重、そんな存在である。


「良いから!とにかくやってくれよ!な?な?」


 こうなると兄さんはまるで子供が駄々をこねるように人の都合はお構いなしだ。こちらが『うん』と言うまで『やってくれ』『嫌だ』「やってくれ』…そんなエンドレスなやりとりが続く事だろう。


 仕方がないので兄さんの言う通りにする事にした。兄は年に一回か二回帰省する事があり、秋葉原電気街で何やらパーツを買ってきてはパソコンを自作している。帰省するたびにパワーアップと称して追加している状態だ。まあ、タダだから良いんだけど。


「添付ファイルをだな、そのまま開いてくれりゃ良いんだ。簡単だろ?」


「そりゃまあね…、じゃあ開くよ」


 カチカチッ、マウスを操作する。


「うわっ、気味悪い。魔法陣が画面いっぱいに広がった」


 パソコンのディスプレイが暗転し白い色の魔法陣が浮かぶ。その魔法陣はまるでアニメーションのように画面の中をゆっくりと回り始めた。


「それさあ、もうひとつ仕掛けがあってさあ」


「仕掛け?」


 そう返事をした時だった。俺の足元にパソコン画面と同じ模様が浮かび上がる。


「な、なんだ、コレ!?」


「それなー、パソコンとか電気を使うモンって電磁波を発するだろ?その発生した電磁波は人体が吸収すると熱を上げる。元々人間には微量の電気が流れてる。それが体を伝わって床に伝わって…」


「お、おい!?なんでそんなSFみたいな事言ってんだ!僕はどうなっちゃうんだ!?」


「ははは、SFだなんて!そりゃあ科学とは正反対のオカルトなモンだ。最近『異世界召喚』モノみたいなラノベが流行ってんだろ?ちょっとハマっちまって…。だけど実際に呼ばれるなんて事はない。だからこう思ったんだよ…、良いってさ」


「こ、こっちからだって!?」


 僕の焦る声に対して兄さんは冷静だ。


「幸いこうして魔法陣は画面と床の二つ存在している、いわゆる多層式魔法陣は無理でも下と横からお前を対象に…言わば多面的魔法陣だ。さらに魔法陣を回転させる事で…」


「う、うわ!魔法陣の回転が速くなってきたァ!?」


「お、成功かな?いやあまだ実験してなかったから上手くいくか分からんかったからさあ、実験台が欲しかったんだよ。ま、てなワケでこれから君には異世界転移をしてもらいます」


「な、なに君達には殺し合いをしてもらいますみたいに言ってんだよ!」


「ははは、傳次郎!君は良い弟であったが私の身内であるのがいけないのだよ!」


「こ、このバカ兄があ!!」


 そう叫んだ瞬間、僕の体を強い光が包み込んだ。







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