追い続けるほどに闇の中に消える真実

『三度目の殺人』是枝裕和・佐野晶(宝島社文庫)  


 本書はノベライズという形式をとっています。先に映画やドラマになったものを小説化することを言うのらしいですが、それが理由なのか背表紙には名前が二つあります。つまりは共著ということです。


 あまりこの手の本を読まなかったせいか、二つ名前があるのにはやや戸惑いも感じられましたね。どういうことなのかという単純なものですが。ノベライズということなので映画を見た後はまるでそれを再現するかに進んで行くのが良い点ではないでしょうか。


 台詞もほぼ忠実。まるでシーンが浮かんでくるかのようです。


 悪く言えば映画に出来なかった小説ならではの展開がないというところ。ただし、そうは言ってもさすがになぞっているだけではないので、小説ならではの部分もちゃんと描かれているのでそれを見比べるのも面白いのではないでしょうか。


 

 勤務先の山中食品の金庫から現金を盗んだことが社長にバレ三隅高司は会社を首になった。その社長を河川敷に呼び出し殺した挙句に財布を奪った疑いで逮捕されたのだが、三隅は過去にも殺人という犯罪歴があった。


 強盗殺人で無期懲役。その仮釈放中での犯行と言うことになる。死刑は免れない。接見した弁護士の重盛は無期に落とすべく奮闘するのだが、肝心の三隅の供述が二転三転する。


 何が本当で何が嘘なのか。この弁護士と犯人と思われる三隅との駆け引きが巧みに描かれていて、読み進めるほどに自分もその真実を探っていく感じがします。


 法廷サスペンスで有りながらも実は人間ドラマのようでもあり、謎と一緒に人間の奥深さを垣間見る気がしてなりませんでした。

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