親しかった恋人から得るこの上ない幸せと苦悩
『世界の中心で、愛をさけぶ』片山恭一(小学館文庫)
若いときほど死との距離は遠い気がします。それでも不慮の事故や病で身近な人の死を目の当たりにすることも少なからずあるでしょう。テレビのニュースなどを見ればほぼ毎日で、新聞の御悔み欄も記載の無い日はありません。
つまりは毎日誰かしら亡くなっているということになります。いつかは死ぬ。そう理解はしていても、突然に近い状況で、さらにはそれが恋人だったなら心に受けるダメージは如何ほどのものなのか想像したところで遠く及ばないでしょう。
そんな思いが綴られているのが本書で淡い恋の思い出や互いの苦悩などがページに綴られています。僅か十七歳。青春真っ只中という時に訪れた不幸にどう向き合っていくのか。
中学二年の時に朔太郎と亜紀は出会った。同じクラスになった二人は過不足のない距離で学級委員をしていた。可愛くて性格も良く勉強もできる亜紀のファンは多かったが、自然の成り行きのように二人は距離を縮めていく。
ファーストキス。そして、ふたりきりで無人島での一泊とすべては二人にとって順調にも見えた。しかし、その後、亜紀は白血病を発病し入院を余儀なくされる。当初は再生不良性貧血と病名を偽っていたが、その後、朔太郎は亜紀の母親から真実を知らされる。
この時の彼の心境は如何ほどだったのか。
とりとめもない彼の言動からしても行き場のない思いは十分に伝わって来ます。その死とどう向き合い乗り越えていくのか。そこが本書の伝えるべき事項であり、心を打たれる部分でもあります。
残された人はそれからどうに生きていくのかも問われているような気がします。
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