正義という教えを強烈に残す男の後姿

『シェーン』ジャックシェーファー(早川書房)   


 子供の視点ながら、読み始めると当然のことだが児童書とは違うことを痛感させられる。大人でもこれだけの表現をするだろうかという疑問を抱く人も多かったに違いない。原文を読んでいないので個人的な意見になるが、その当時の翻訳家の裁量もあるような気がする。


 目にも鮮やかな大自然の山々、その中で生活を営む開拓者。西部劇がお好きな人なら一度や二度は目にしただろう名作で、その主題歌名で邦画でもリメイクされている。特にラストシーンはあまりに有名だ。


 ある旅の男がスターレットの家にやってくる。時代は1889年の夏。名はシェーンと言った。ひょんな切っ掛けからスターレットに温かく迎えられたシェーンは腰から下げた銃を置いてその家で働くようになる。そんな彼をよそ者扱いする者も多かったが、スターレットや奥さん、そして特に本書の視線であるボッブは、日に日にシェーンに惹かれていく。


 一見穏やかな暮らしにも見える田舎にも悪は潜んでいるもので、フレッチャーと土地などを巡って争い事が起きる。そしてついにフレッチャーは力でねじ込めようと凄腕のガンマンを呼び寄せる。争い事をどう解決していくのかも本作の見せ場の一つだが、人と人との絆。男同士の友情などが時に心地よく、時に胸を打つ。


 発行されたのが昭和47年なので、現代とは異なる言い回しに戸惑いを覚えたりもするだろうが、映画しかご覧になってない方は、ラストシーンの後にも続く話があるので、アラン・ラッドが目に浮かぶような方は一読されてもいいのではないだろうか。

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