あの頃、自分の子供に会っていたら
『時生』東野圭吾 講談社文庫
人生には必ず転機となる出会いがある。これはよく耳にする話です。しかしながら、それがもし自分の子供だったらどうでしょう。
無鉄砲で堕落した生活を送る宮本拓実の前に突然現れた一人の青年。見知らぬ顔なのになぜか自分のことをよく知っている。実際、こんな事態になったら誰もがこの主人公同様に戸惑うのではないでしょうか。率直に言って薄気味悪いですから。
この得体のしれない青年こそがタイトルにもなった「時生」で、それからしばらくの間、拓実と共に時間を過ごすようになる。
この寄らず離れずの距離感が時に心地よく、拓実のダメさ加減に失望しながらも、正しい道へ導かんと懸命になる時生にいじらしさも感じてしまう。仮にこれが自分の子供だったらどう接するであろうかと、読みながら何度も考えさせられた。
ただ、はたして素直にそれを聞くのかというのも答えに窮するところで、この主人公ほどではないにしても、似たような対応を取るのではないかと思わず苦笑が漏れてしまいます。
しかし、その一方で一度くらいなら体験してみたいと思ったりもするから不思議です。その時、どんな時を過ごし、何を助言してくれるのか。想像するだけでもちょっと楽しくなってくる。
自分を捨てた親への恨みを他人の身体を借りた実の子がどう癒していくのかも見どころで、進行と共にいろんな感情が湧き出て来て、時に怒り、そして時に胸を熱くさせてくれます。
出来れば一度ならずとも繰り返して読んでみることをお勧めしたい。実際、私も読み終えてから余韻に浸る間もなく、すぐに初めから読み始めましたから。
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